追求した事業の本質手にした過去最高の成長

コンビニよりも店舗数が多い鍼灸・整骨院業界は、コロナショックを受け、経営が二極化していると言われています。突如の倒産や売上の低迷に悩む声をよく耳にする一方で、埼玉に本拠地を構え17店舗を運営する株式会社くまのみでは、2019年10月~2020年9月の売上は、前年対比120%、利益率130%、そして3店舗の新規出店と、過去最大の採用人数を達成しています。コロナ禍で、いかにその成長をつくり出せたのか、代表の池田氏にお話を伺いました。

「今こそ 我々の出番だ」


4月に政府から発令された緊急事態宣言で、多くの業界が打撃を受けたように、私たちもその例外ではありませんでした。もちろん、私たちの業界は自粛要請の対象ではなかったので、最も苦しい戦いを強いられていたわけではありませんが、お客様にお越しいただくビジネススタイルである以上、影響は決して小さくありませんでした。4月5月は、業界平均売上33%減という調査報告があります。一般的な鍼灸・整骨院の利益率は4~5%前後のため、どれほど大きな影響なのかは、容易に想像がつくことでしょう。弊社もこの2か月は、売上14%減でした。
そんな最中で、取り組んだのが、「事業を続ける理由」を幹部中心に伝え続けたことです。私たちのミッションは、「予防」を通して、お客様の健康と美をサポートするということです。感染症対策で注目されているのが、「感染リスクを下げること」であり、そのために外出自粛が叫ばれていましたが、もっと本質的な感染症対策は、「健康」すなわち「高い免疫」をつくることなのではないかと、私は思っています。なぜならば、他人と接する以上、リスクにさらされる可能性は消えることはありません。それならば、リスクを避けることより、リスクに強い体をつくることが必要だからです。私たちの事業は、まさにお客様の体の不調を整え、健康をサポートする活動です。それは免疫力の向上に直結するのです。まして、政府から自粛要請も出ていないということは、社会に必要とされていることである。今こそ、私たちが一肌脱いで、お客様に貢献していく番だ。オンライン会議やリアルでの会議、日々のメッセージのやりとりの場などで、何度も何度も伝え続けました。
混乱が生じたときほど、社員の心には必ず迷いが生じます。ましてや、今回はこれまでにない新しいウイルスとの闘いで、情報が不足している中、メディアの過剰な報道や噂話を聞いて、本人はもとより、友人やご家族からの心配の声で不安になる社員も少なくありませんでした。実際に自粛ムードのなかで営業を続けることを、社外の方から非難された場面もたくさんありましたし、出勤することが怖い、家族から心配されているので休みにしてほしいと声を上げた社員もいました。強制はしなかったので、出勤することが難しい事情があれば休んでもらっていました。その一方で、事実を正しく知ってもらうことを心がけました。新型コロナ感染症が重症化する確率や死亡率といった事実に目を向ければ、少なくとも日本においては過去最悪のパンデミックではありません。多くの恐れは「よくわからない」故の思い込みから生まれ、私たちが危惧しているほど深刻な病気ではないことがわかります。もちろん、軽く扱ってはいけませんが、万全な感染症対策ができていれば、必要以上に怖がる必要はないのです。そうした環境の整備は、しっかりと会社が行うので、お客様に向き合い、お客様に貢献する仕事に集中してほしいと、伝え続けたのです。
ピンチのときほど、組織としてどこに向かうのか、この苦難をどう乗り越えていくのかという道を示し、必ずやり遂げると決め、信念を持って組織を引っ張っていくことこそが、経営者の役割だと私は思います。

等身大の貢献を継続することがチャンスを呼び寄せる


そんな背景もあり、覚悟を決め、非難があろうと私たちは営業すると宣言し続けました。実際に、緊急事態宣言中であっても、求めてくださったお客様はたくさんいらっしゃいました。「営業されているんですか?」というお問い合わせや、運動不足で体の調子が悪いというご相談もたくさんいただいていました。きっとお客様も外出をすることに対して不安があり、かといってどうしていいかわからずに困惑されていた方が多かったと思います。そこで、そんなお悩みを解消する力になれればと、自宅でも取り組める運動指導の手紙に、当時不足していたマスクを5枚ずつ、そしてご家族でも使える無料施術券をいつもお越しいただいているお客様にお届けしました。健康のサポートというミッションを果たすために、私たちにできる等身大の貢献として取り組んだことでしたが、それがきっかけでご連絡をいただけたり、施術にお越しくださった方もたくさんいらっしゃいました。そして、緊急事態宣言が明けると同時に、一気にお客様の数が増えていったのです。
どれだけ売上を上げるのかではなく、どれだけ「地域の健康寿命向上により、笑顔溢れる幸せな未来の創造に貢献する」や「お客様の潜在美を引き出し、内側から溢れる笑顔を、そして幸せへと導きます」といった事業目的を本気で追いかける仕事ができるかがすべてだと、社員とともに学べたとてもよい経験でした。
どれだけ売上を上げるのかではなく、どれだけ「地域の健康寿命向上により、笑顔溢れる幸せな未来の創造に貢献する」や「お客様の潜在美を引き出し、内側から溢れる笑顔を、そして幸せへと導きます」といった事業目的を本気で追いかける仕事ができるかがすべてだと、社員とともに学べたとてもよい経験でした。

事業目的から一貫した行動を続ければ、必ず成長する

とはいえ、お客様は減っていたので、売上が伸びない時期もありました。違う角度から考えると、お客様への貢献がまだ足りていないという見方もできます。そこで、お客様の声をヒントに、施術メニューを見直し、取捨選択して免疫力向上を果たせる新商品を開発しました。世の中は不況だから、事業規模を縮小するという考え方も確かにありますが、お客様の求めるものにフォーカスをすると、もっと役に立てる組織でありたいという思いが湧き上がってきます。トライアンドエラーを繰り返しながらも、全社員でこの感覚を共有できているおかげで、新商品が徐々に軌道に乗り始め、更なる売上をもたらしてくれました。そして、売上が上がった分、未来へ投資するという意思決定もできたのです。新たに3店舗の出店を達成できただけでなく、コロナに見舞われたこの1年間は、過去最大25名の新卒社員採用を実現したのです。おかげさまで、組織として過去にない成長を遂げ、9月の決算では、前年対比で売上120%、利益率130%の結果を残すことができました。期がスタートした当初は、まさかこれだけの天変地異が起こるとは想像もしておりませんでしたが、そんななかでも闘い抜いてくれた社員の一人ひとりに感謝の気持ちでいっぱいです。

事業目的を果たすことをどこまでも追い求める

振り返ると、「今こそ、私たちは求められている。お客様に貢献しよう」と発信し続けてきたことは大切な取り組みでしたが、社員がそのメッセージを受け取り、自分ごととして毎日真剣に仕事をしてくれていなければ、この結果を出すことはできなかったと思います。なぜ私たちの事業が存在しているのか。この事業がどれだけの価値を持っているのか。今後どこを目指し、何を成し遂げるのか。事業の目的を、全社員が理解し、その実現に向けて動機付けされているかどうかで、逆境をチャンスにできるかかが決まると思います。そのために何より私が学び続け、成長し続けること。そして、目的を落とし込むために朝礼で確認をしたり、組織全体で滞りなく価値観を統一するための幹部育成研修・一般社員研修を実施したりして、自分の理想と組織の理想を考える機会を設けてきました。また、全社員がどんな状態なのかを事細かに把握できるよう、幹部社員とは綿密なコミュニケーションを取っています。加えて食事や休憩中などの日々のさりげない場面で、社員の思いや考えを聞き、その実現を支援できる関係性づくりに力を入れてきた結果だと感じています。
この会社で働けることが幸せですと言ってもらえる社員を一人でも多く増やしていくこと、健康と美のサポートを通して、お越しいただくすべてのお客様に貢献し、よい人生を生きていただくこと。これらが自社の発展につながり、お客様への貢献につながり、日本の国力の向上につながると信じています。この「志」をどこまでも追求し、全社員とともに、成長をし続けてまいります。

池田 秀一(いけだ しゅういち)
33歳から働きながら専門学校に通い、柔道整復師を志す。その後、37歳で柔道整復師になり鍼灸学校に通いながら独立開業を果たす。立ち上げた株式会社くまのみは、整骨院とエステサロンを併設しており、健康と美の両方を支援するサービスを展開している。社員思いの経営と、患者思いの丁寧な施術が評判を集め、全国から人材の応募が集まる組織に成長。また、埼玉県内約3,000店ある整骨院の中で、口コミNo.1の実績を誇っている。

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