主力メニューの販売中止で加速させた店舗成長

株式会社アールキューブ 代表取締役 坂田健

中華料理や点心料理という飲食店のジャンルから想像されるメニューといえば、まずは焼き餃子ではないだろうか。様々な調理法で工夫がされ、幅広く人気を集める、売上の生命線と言っても過言ではない。しかし、顧客の9割が注文する「焼き餃子」をあえて廃止し、店舗売上を大きく伸ばした飲食店がある。それが「六本木 餃包」だ。その成長の裏にはどんな型破りな発想があったのだろうか。創業者の坂田氏に話を伺った。

戦略だけでは突破できない壁

父からハンバーガー屋を受け継いだのは今から10年前。
毎月300万の赤字で、倒産までに残された猶予は僅か3カ月でした。

最初の仕事は社員のリストラです。

次に売上を作るべく、昼夜問わず働きました。
炎天下でのビラ配りや呼びこみ、なんでもやりました。
また、看板の出し方やスタッフの配置、商品ラインナップなど、他店舗を見習っては、さまざま実践しました。

そうして行きついた売上上昇秘策が、メディア戦略だったのです。
話題集めから逆算した商品開発や店舗展開に取り組み、2年間で100以上のメディアに取りあげられました。

努力が形になり始め、ようやく黒字化したところで、突如として新たな試練が訪れました。
東日本大震災です。

来客数が激減し、売上は下がる一方。
メディアの力をもってしても戻りませんでした。
月に500時間働いて、過去に効果があったことは全部やりました。
しかし、一時的な成果しか出ず、すべてが中途半端に終わってしまい、歯が立ちませんでした。

案の定、家族との時間も取れず、「寂しい」と嘆く子どもの姿に、自分の不甲斐なさを痛感しました。
何かを変えなければと切実に思ったのです。

今振り返れば、「やり方」だけで突き進もうとしても限界がくることを理解できた大切な経験だったように思います。

親孝行を土台にした店舗経営

何をやればよいのかと、何度考えても、私が成長しない限り変わらないという結論にいたりました。
高めるべき能力は挙げたらきりがありません。

しかし目先のスキルや売上を追っても、長期的な繁栄が手に入らないことは、すでに痛いほど現場が教えてくれました。

目先の目標達成ばかり追っていたけれど、『頂点への道』講座で学び続けてきた目的の重要性が改めて腑に落ちたのです。

すぐに店舗理念の見直しを図りました。
事業形態の妥当性を一から考えると、これまで一心不乱に前に進む経営をしてきましたが、ハンバーガーという商品や事業がそもそも好きではない自分がいました。

「これはきっとチャンスだ。ゼロから出直そう」

そう思い、恐る恐る社員に伝えると、意外にもみんな納得してくれたのです。
それを境に、全店舗を閉店しました。

「代わりに何をやるか」

自問自答の末に行きついたのは、両親への思い。
台湾出身の父と熊本出身の母が創意工夫して作ってくれた餃子を食べて私は育ちました。
この餃子が心から大好きだったのです。

私の届けたいのはこれだと腑に落ち、経営の目的を、親孝行と定めました。
それはお世話になった方への恩返しの意味も込めています。

つまり社員とその家族、取引先やお客様に喜んでもらうことです。

店舗理念を掲げ直し、今の業態に変更をしたのです。
前の失敗をすべて活かそうと、やらないことリストも作りました。

第一にテレビ出演。
そのための商品開発や売り方は、店舗理念からずれた行動だからです。

また、ホームページなど必要なこと以外の宣伝活動は一切しないなど、多くの項目をあげて実践しました。

その分、サービスの質を追求するようにしました。
徐々にリピーター数が増え、売上が回復。

しかし、まだ私の中にはモヤモヤした感情が残っていました。
当時メイン商品として、顧客の9割が注文する焼き餃子です。

親孝行のコンセプトから考えると、父のルーツである台湾の主流は、焼き餃子ではなく水餃子です。
さらに母の熊本郷土料理である〝だご汁〟この2つをかけ合わせた「スープ餃子」こそが私にとっての家庭の味なのです。

散々葛藤しましたが、長期的なビジョンや目的から判断し、焼き餃子の販売をやめ、メイン商品をスープ餃子にしました。
そして、同時に社員の健康を考え、全席を禁煙にしました。
両方とも六本木に構える飲食店としてはタブーと言われていた内容です。

当然のごとく現場の社員からは「社長が狂った」と言わんばかりの反感を買いました。

そこで、一人ひとりと面談し、決断の背景と期待することを丁寧に伝えました。
さらには、接客トークをロールプレイングでトレーニングしながら、店舗理念から一貫した判断基準を現場に落とし込んでいったのです。

ランチとディナーの間はスタッフ同士でロールプレイの時間
ランチとディナーの間はスタッフ同士でロールプレイの時間

社員に芽生えた主体性で向上し続ける実績

一時期は、売上も士気も低迷しましたが、絶対に上手くいくと信じていました。

それでも埋まらない私の思いと現場のギャップに、力不足を感じ、数え切れないほど涙しました。
頭から火が出るほど考えましたが、自分一人ではもうどうしようもないと思ったのです。

全社員の前で「僕一人ではもう無理だ、力を貸してほしい」と伝えました。

内容はよく覚えていませんが、店舗や社員に対する思いを、心の内にある本音をさらけ出しました。
するとそれまでの反論が嘘のようになくなり「やろう」と社員たちが決意してくれたのです。

「私がこの店舗をよくするんだ」と言わんばかりに、少しずつ社員が主体性を発揮してくれるようになっていったのです。
きっと、売上を追っていたころでは成し得なかったことだと思います。

社員に本当の意味で「目的」が伝わった瞬間でした。

以降、4年が経ちますが、成果はずっと右肩上がりです。
受け継いだ当初200万だった月商は、今では1100万に達しています。
さらに、店舗運営をすべてスタッフに一任しており、みんなが主体的に2000万を見据えて改善・改革を実践してくれています。
タブーと言われたことを行い、私自身が直接店舗マネジメントに携わらなくとも、順調に業績が伸びています。
これらは、目的が共有され、浸透している組織は無限の可能性を秘めていることの証です。

我が社はこれからも、思い込みにとらわれず、さらなる高みを目指し、挑戦を続けていきます。

採用プロジェクトに全員で取り組み団結を図る
採用プロジェクトに全員で取り組み団結を図る

 

取り組んだこと
◦目先の売上を追ったメディア戦略の廃止
◦顧客の9割が注文する焼き餃子の廃止
◦店内の全席を禁煙席に
◦理念から一貫した業態変更
◦浮いた時間とお金を接客強化に投資
⬇︎
得られたこと
◦200万から1100万円へと成長した月商
◦顧客層と満足度の大幅な向上
◦主体性に溢れる組織の実現

 

坂田 健(さかた たけし)
1982年、熊本生まれ。台湾出身の父と日本人の母の元に育ち、25歳のときに倒産寸前だった飲食経営の会社を継ぎ、再建する。社内の良好な人間関係の醸成と、主体性の高い社員育成を実現しており、接客サービスの質が高く評価されている。飲食店経営の他にも、講師として企業研修や公開研修に年間100日以上登壇しており、高い満足度を作りだしている。