内発的動機づけにもとづいたマネジメントを実践し組織をメンバーの「自己実現」の舞台にする

ここまで、人のモチベーションの源とは何か、選択理論をベースに紐解きました。ここからは、どうすればメンバーの上質世界に仕事が入る状態をつくることができるのか?働きがいを創り出す『選択理論心理学にもとづいたマネジメント』の実践のポイントについて、アチーブメント株式会社取締役営業本部長であり、120名を超える組織をマネジメントしている橋本拓也が具体的にお伝えします。

[ポイント1]メンバーが目標達成のプロセスで成長する支援をする

成長したい・達成したいというのは誰もがもっている欲求です。成長実感を得ることなく、働きがいや仕事の楽しさを感じることはありません。
しかし、「成長」だけに焦点をあて、結果として未達成ということは本質的ではありません。そして、どうすれば目標達成できるのかを考え、逆算するメンバーは多くいますが、目標達成はあくまでも「結果」であり、結果には必ずその結果を創り出した原因があります。ですからマネジャーは、メンバーが目標達成のプロセスで成長している状態をつくる必要があります。
成長とは、マインド・ナレッジ・スキルが向上することです。ですから、まず、観察・情報収集をしながらメンバーの成長テーマを特定します。どんな思考をもち、どの程度のスキルをもっているのか。現在地を確認したうえで、メンバーとどのような成長が必要かをすり合わせます。そして、目標設定し、成長するためにやるべきことを明確にしています。
達成に向かうプロセスで成長が遂げられるので、成長することと目標達成は一対として、どちらかだけに偏ることのないようにします。

[ポイント2]キャリアステップをともに描く

組織は、個人の自己実現の舞台です。ですが、特に若手であればあるほど、どうなりたいかを直接聞いたとしても、経験や知識不足からメンバー自身が明確な答えをもっていない可能性があります。ですから、どうすれば自己実現できるのか、ぜひこんな成長をしてほしいと期待を伝えることが大切です。
厚生労働省は、キャリアの概念について「時間的持続性ないしは継続性をもった概念」と定義しています。キャリアとは、単に何歳でどのような役職に就くということではなく、成長を積み重ねていくプロセスそのものであるともいえます。ですから、人事制度を練り上げることはもちろん、何年でどのくらいの経験をし、どのようなスキルを得てほしいのか、具体的に伝えてください。さらに、ロールモデルを提示することも効果的です。
その後経験を積んでもらうなかで、キャリアを描くサポートをしていきます。

[ポイント3]5つの基本的欲求を満たす支援をする

人は誰もが、5つの基本的欲求をもっており、欲求を満たそうとして行動をしています。ついマネジャーは、メンバーと自分が同じ欲求バランスをもっていると錯覚しがちですが、欲求のバランスは人によって全く違います。ですから、それぞれの欲求バランスにあわせた関わりをデザインし、職場で欲求が満たされる支援をすることが大切です。例えば、生存の欲求が強いメンバーがいたとしたら、突然仕事を丸投げするのではなく、仕事の手順・方法・内容を整えて任せる。逆に自由の欲求が強いメンバーがいるとしたら、細かく口を出すのではなく、ゴールを伝えやり方は任せる。というように、欲求にあわせた関わりをしたり、チームの組み合わせを変えたりします。
また、メンバーにとっては「認められている」「労われている」と感じる関わりは、精神的報酬が得られ、働きがいになります。メンバーと接するとき、不足感をもつのではなく、感謝を土台におく。そして、お互いに承認し合う組織文化をつくる。そのためにはリーダー・マネジャーが「徳」と「才」を磨くことです。ぜひ、マネジャーとして、人間力を開発し続けてください。

 

働きがいを生み出すマネジメントの秘訣
組織をメンバーの自己実現の舞台とするために

ポイント1
メンバーが目標達成のプロセスで成長する支援をする
メンバーの現在地を把握する
成長テーマにあわせ目標設定する
ポイント2
キャリアステップをともに描く
期待するキャリアを伝える
ロールモデルを提示する
ポイント3
5つの基本的欲求を満たす支援をする
欲求バランスにあわせて関わる
承認の組織文化をつくる

 

橋本 拓也
アチーブメント株式会社 取締役営業本部長/トレーナー
1984年富山県生まれ。2006年アチーブメント株式会社に入社し、大学生キャリア支援事業の責任者に抜擢。家庭教師派遣事業を新規事業として立ち上げ、選択理論心理学をベースにした子ども教育事業を展開。その後、個人向けコンサルタントとして、医師・弁護士・会計士などの専門職業人、経営者やセールスパーソンをはじめとする500名以上のプロビジネスパーソンに目的・目標達成のサポートを行う。2017年パーソナルコンサルティング部の東日本エリア担当マネジャー、2021年執行役員、2022年取締役営業本部長に就任、120名以上のメンバーのマネジメントに携わる。トレーナーとしても活動しておりアチーブメント認定講師としてダイナミックコース講師も務めている。

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村田泉 アチーブメント株式会社 執行役員/西日本エリア担当営業部長/トレーナー