多くの国と地域、そして領域で注目が集まり、活用が広がっている選択理論心理学。その代表的な活用実績をここでは改めてご紹介してまいります。まずは選択理論の基礎概念をおさらいしてみましょう。日本での選択理論の普及の立役者である「ロン・カールトン」氏と、選択理論研究の第一人者である「ロバート・ウォボルディング」氏の講演から紐解いていきます。
全ての動機づけは内側から起こる
選択理論とは、ウイリアム・グラッサー博士が提唱をした心理学です。人の行動のメカニズムを解明しており、すべての行動は自分自身の選択であり、他人の行動をコントロールすることは出来ない(図1)と考えています。誰しもが持つ『5つの基本的欲求(図2)』があり、それを満たす『上質世界(図2)』を手に入れようと、私たちは日々行動していると考えます。精神疾患を有する方に対して、薬ではなくカウンセリングで治療をする『リアリティセラピー』が選択理論の原型です。コントロールできる自分の思考と行為に焦点を当て、悩みを解消するスタンスを大切にしており、特に人間関係という角度から、自分自身が改善できることを見つけ、悩みを解消するアプローチです。
世界的に認められる心理学へと成長
1965年に発刊されたグラッサー博士の著書『リアリティセラピー(図3)』が全米で大ヒットし、その高い効果性が認知されていきました。米国の大学や大学院で心理学やカウンセリングを学ぶテキストの中では、『アドラー心理学』や『認知行動療法』と並んで、代表的な9つの心理療法としてリアリティセラピーが紹介されています。これらの実績をもとに、グラッサー博士がまとめ上げてきた理論を、この当時は『コントロール理論』と呼んでいました。私たちが慣れ親しんでいる『選択理論』という名称は、「選択する」ということを強調するために1996年に改名され、1999年の書籍発刊(図4)とともに知られるようになっていったのです。
▼ 選択理論の詳細はこちら ▼
https://www.choicetheory.jp/about/
4つの分野で広がる選択理論の活用
選択理論の活用はカウンセリングにとどまらず、ビジネスや学校教育、地域社会などと様々あります。そんな選択理論の最たる特徴と言えば、「人が自ら変わる力を引き出せること」でしょう。2022年の夏に開催された、選択理論研究における世界最大のカンファレンス『WGI国際大会2022Tokyo』の講演から、その特徴がどのように活かされているのかを分野別に見ていきましょう。
▼ ビジネス
良好な人間関係と高いパフォーマンスの両立をする選択理論の活用をアチーブメント代表・青木が解説します。
▼ 地域社会
地域社会は、家族でも仕事でもない特別な空間。関係者全員の欲求が満たされる環境をどう創り出すのか。岐阜市の取り組み事例を元に考えていきます。
▼ 学校教育
主体的で自己肯定感の高い子どもを育てることは、世界各国がテーマとしています。『クオリティ・スクール』の取り組みを交えて、教育での活用を見てみましょう。
▼ カウンセリング
選択理論を基盤としたカウンセリング。今回は夫婦関係に特化した事例から、選択理論の本質と効果性を考えていきましょう。
ロン・カールトン
ロバート・ウォボルディング