フィードバックはマネジャーの責任である

アチーブメント株式会社 代表取締役会長 兼 社長 青木仁志

フィードバックに関する誤解

たとえば、ミサイルが目標を目指しているとしましょう。
しかし、そのミサイルが、このまま進んでもターゲットから500メートル離れた所に落ちてしまうとしたら、500メートル分を「軌道修正」する必要があります。
そうした、現在地を把握し、ゴールに対して、軌道修正をすることがフィードバックなのです。

マネジメントにおいては、「このままではこうしたゴールに着地する。したがってこうした改善をして欲しい」と明確に伝え、軌道修正の支援をすることがフィードバックです。

選択理論を学び始めた方の中には、「フィードバック=外的コントロール」だと誤解し、伝えるべきことを伝えられない人が多くいらっしゃいます。
もちろん「自分の好みや正しさ」を押し付けることは外的コントロールになり得ますが、長期の目的・目標に即したものであれば、それは外的コントロールではないのです。

フィードバックのための最低条件

フィードバックをするうえでも条件があります。
その要素は多々ありますが、「ゴールが明確であること」が最低条件です。

ゴールとは、向かうべきもの、理想、目的・目標、と表現方法はさまざまあるでしょう。
いずれにしろ「本人が望むものが不明確」な状態では、いくらフィードバックをしても、改善は期待できないですし、中には「できていない自分を指摘された」と感じて終わってしまう人もいるかもしれません。

それは願望が不明確、もしくはフィードバックする側とされる側のすり合わせが不十分なことが問題なのです。

したがって、フィードバックを効果的にするためにも、普段からお互いの願望を共有することが重要なのです。
企業でいえば、「相手の目指すもの」と「組織の目指すもの」すなわち、個人と組織の願望が一致していることがフィードバックが効果を発揮する条件だと言えるでしょう。

アチーブメントのコアバリュー「組織人としての誓い」の中には、「企業組織は経済活動を基本とした人間集団」という一節があります。
すなわち、企業が行っているのはあくまでビジネス。
もちろん経営の目的は「縁ある人々を幸せにすること」ですが、その為のプロセスである経済活動や成果に対して妥協することは、その目的へのこだわりがないことと同じになってしまいます。

特に選択理論を学び、言うべきことを言えなくなってしまった方ほど、「縁ある人々を幸せにするためにも成果を求めることは重要だ」と改めて認識をしていただくことをお勧めします。
「人間関係が壊れることを恐れてフィードバックできない」のは、「人間関係を壊さず、仲良く過ごすこと」が最大の目的でない限りは、そもそものフィードバックの意味から逸れていると言っても過言ではありません。

ただし、選択理論では脳の外側はあくまで情報。
軌道修正をさせることではなく、本人が軌道修正を内発的にできるような情報を与え、支援することが外的コントロールとの違いです。

フィードバックはマネジャーの責任である

リードマネジメントでは、結果ではなくプロセスにフォーカスを当てます。
フィードバックは現在地の把握と軌道修正のために成されるのですから、すなわちフィードバックをしていくことは目的・目標に対するプロセスの改善に繋がります。
プロセスを管理するためにも、メンバーに対するフィードバックは必須です。

そのとき、たしかにプロセスの頑張りを評価することもメンバーの自己概念を下げないために重要ですが、そこに満足して終わってしまうと、必ず未達成が作られます。

真の人間尊重とは、メンバーが本当に求める高い成果を、自ら出させること。
達成の中に人間尊重があり、未達成の中には存在しません。特に管理職はプロセスに自己満足させてはいけません。

成果や結果を出すためにフォーカスすべきはプロセスですから、プロセス改善の情報を与えるフィードバックは管理職にとって、義務・責任と捉えてもよいと思います。