終身雇用制度が崩壊するとはどういうことなのか?

人事制度においてよく対比されるのが、欧米的経営と日本的経営です。近年では、「副業ができる」「転職活動が簡単で多くの経験を積める」「ワークライフバランスがとれる」と、自由と自分らしさを求めて、欧米的経営に憧れる声が若い世代から上がってきています。結果として、終身雇用制度が崩壊しつつあると言われていますが、果たしてそれはどういうことなのか。2つの経営スタイルの違いから、見ていきましょう。
欧米的経営と日本的経営の一番の違いは、「職務主義」か「職能主義」かという一言に集約されると言っても過言ではありません。職務主義は「仕事」を軸にしており、職能主義は「人」を軸にしています。例えばですが、営業と事務両方の経験があるAさんと、事務の経験しかないBさんが、同じタイミングで同じ事務の仕事で雇われたとします。日本であれば、Aさんのほうが給与が高いのが一般的ですが、欧米であれば給与は同じです。欧米的な職務主義の考え方では、「仕事(ポスト)」に給与を支払っているのであって、そのポストと直接関係のない能力は評価されないからです。これ以外にも、思いの外知られていない違いがあります。詳しくは表1をご覧ください。

■[表1]欧米的経営と日本的経営の違い

※参照:海老原 嗣生『人事の組み立て~脱日本型雇用のトリセツ~欧米のモノマネをしようとして全く違うものになり続けた日本の人事制度』(日経BP、2021年)

確かに欧米的経営には良いところも数多くあり、時代の潮流の後押しもあって、注目を集めています。しかし、それが一概に日本企業にマッチするとは限らないのです。潮流に左右されるのではなく、欧米的経営と日本的経営双方のメリット・デメリットをしっかり認識した上で、自社が目指す理想に対して効果的な人事制度を考えていくことが大切なのです。次のページでは、人事制度を作る上での、組織のトップである経営者の役割を弊社代表青木が解説いたします。

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