「企業は人なり」という言葉のように、人材戦略とは経営で最も大切と言っても過言ではない要素です。人事制度は人材戦略を具現化した仕組みですが、そもそもその目的とはなんでしょうか。ニュアンスは千差万別ですが、「意欲ある社員が成長でき、組織の生産性を最大化していくため」と言えるでしょう。また、社員に対してキャリアビジョンを描くための基準を示すという意味でも重要な役割を果たしています。この目的達成を追求してきた長い歴史がありますが、それは「マネジメント」の歴史そのものです。人事制度をより深く理解するための参考として、少しだけ紐解いてみましょう。
追求され続けてきた「人」というテーマ
人事制度やマネジメントの歴史を学ぶ上での重要なトピックが、1924年〜1932年に行われた「ホーソン実験」です。工場の生産性を最大化するうえで、作業室の照明の明るさを変えて、それがどれくらい工員の作業効率に影響をするのかを調べた実験ですが、この実験が行われるまでは、生産性は作業のしやすさに左右されると思われていました。しかし、実験の結果、それだけではないことがわかったのです。実験では不思議なことに、照明の明るさに比例して上がっていった生産性が、照明を再び暗くしても上がり続けていったのです。ホーソン実験を通して導かれた結論、それは「労働者の生産性は、職場の外的環境よりも主観的な職場における個人の人間関係や目標意識に左右される」ということだったのです。これ以降、生産性を上げるための「人」に焦点をあてた「人材マネジメント」が注目されるようになっていきました。
そして、自己実現ややりがいなどといったソフトの面から組織効率の最大化を目指す時代に入り(マズローやハーズバーグ等の研究)、その後に戦略的な視点から人的資源を最大限に活用する仕組みというハードの面に焦点があたった時代に入っていったのです。そして現在は、ソフト(人)とハード(事・仕組み)の双方から、組織効率の最大化を目指す取り組みが主流な時代となったのです。本格的な人材マネジメントの歴史は意外にもまだ浅く、今もなおより良い形を追い求めて発展を遂げている最中と言ってもいいのかもしれません。