STEP2-2.マネジャーとしての基本スタンスを身につける

Q.どうしたら押し付けにならずに部下の成長プランを描けるのですか?

A.部下の自己実現に向けた魅力的な情報提供をし
ともに成長プランを創りましょう。

上司の正解ではなく部下の自己実現を考える

部下の成長を描くということは、育成をしていく上で必要なことの一つです。上司の方がその仕事において経験を積んでいるわけですから、もちろん部下よりも上司の方が「どうしたらうまくいくのか?」がわかります。より成長をしていってもらうために必要なことを整理しそれをプランに落として実行してもらえたら、きっと成長は早いことでしょう。しかし、それでは部下の納得感が得られず、押し付けになってしまうことも考えられます。この疑問を解消するために持つべき大切な考え方とは、「会社は社員の自己実現の舞台であり、自己実現とは部下が物心両面の豊かさを手にすることである」という前提です。部下の成長プランとは、この前提に則って描かれるものです。上司の達成や、会社の達成とは結果得られるものであって、出発点はあくまでも部下の自己実現のためのプランです。
物心両面の豊かさとは何か。それは一言で言えば、願望実現に向かいながらも責任範囲を拡張していってもらうことです。もっと分かりやすく言えば、昇進昇格をしてもらうことです。そのための効果的なプランを、部下の話を聴きながら、ともに作り上げていくことが上司の役割なのです。
ここでは、若い社員であればあるほど、願望はそう簡単には明確にならないということを心に留めておきましょう。なぜならば、願望を描くには、経験と情報が必要だからです。年次が浅い社員は願望が思うように描けなくて当然です。部下が願望が描けなかったり、不明確であることに翻弄される必要はありません。たとえ具体的でなかったとしても自己実現して豊かな人生を生きていきたいことは必ず望んでいるのです。部下の自己実現のために何ができるのか、上司であるあなたが持つ経験と情報をもとに、親身になって一緒に考えてあげましょう。

より魅力的な情報提供に努める

ではどうしたら描いたプランを納得感を持って受け取ってもらえるのか。それには、「この通りやりなさい」という伝え方ではうまくいきません。選択理論を土台にしたマネジメントでは、相手はコントロールできないと考えます。つまり、部下に無理矢理なにかをさせることはできないのです。私たちにできるのは、部下にとってより魅力的な情報を提供することだけです。部下が自身の自己実現への見通しを持てたとしたら、魅力的なプランと言えるでしょう。そうすると受け取ってもらい実行してもらえる可能性が高まるのです。さらに言えば、部下にとって上司という存在そのものが魅力的かどうかです。信頼できる存在、いつでも自分の味方でいてくれるという確信、高い専門能力を持っており頼れる存在、自分の成長のために全力を尽くしてくれる。魅力的な上司の要素は、挙げればきりがありませんが、自分自身がそれらの条件に当てはまっているかどうか、当てはまろうと努力をしているかどうかです。部下がどんな行動を選ぶかは、私たちには変えることはできませんが、より魅力的な自分になることはいくらでもできます。コントロールできることに集中してぜひ魅力度を高めていきましょう。

組織とは常に円卓会議である

とはいえ、マネジメントはそう簡単ではありません。人と人とのコミュニケーションなので、相性はもちろんあるでしょう。時には自分ではなくて別の人が関わった方が効果的という場合もあります。ぜひ部下を持つ一人の上司として大切にしてほしいのは、組織とは円卓会議であるということです。全員の力を結集して、組織は動いています。私の力は組織の力であり、仲間の力も組織の力です。組織の目的目標の達成のために、全員の力を結集しているのですから、力を借りることにはなんの遠慮も要りません。「この部下を私が育てなければ」という責任感は大事ですが、「組織の力を総動員して必ずこの部下を育てていく」というもう一歩高い視座を持って、部下育成に携わっていきましょう。そうすると、解決できる問題の幅が一気に広がっていくはずです。ぜひ組織全体の力を活用して、部下の自己実現を成し遂げていく支援をしてみてください。

アチーブメント株式会社
執行役員/東日本エリア担当営業部長/トレーナー 橋本 拓也

2006年アチーブメント株式会社に新卒入社し、大学生キャリア支援事業の責任者に抜擢。家庭教師派遣事業を新規事業として立ち上げ、選択理論心理学をベースにした子ども教育事業を展開。その後、個人向けコンサルタントとして、医師・弁護士・会計士などの専門職業人、経営者やセールスパーソンをはじめとする500名以上のプロビジネスパーソンに目的・目標達成のサポートを行う。現在は約40名のメンバーのマネジメントに携わっており、東日本営業部門の責任者を務めている。

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