自粛生活によって夫婦でともに過ごす時間が増えたこの期間。もともと感じていた性格の不一致が、表面化しているようです。結果、家庭内暴力や離婚を招く夫婦も現れています。しかし、反対に円満になったという夫婦も少なくありません。自粛生活が夫婦仲を深める機会にするにはどうすべきか。佐藤英郎が男性の皆様にメッセージいたします。
明治大学法学部卒業後、同大学法制研究所を経て、研修コンサルタント事業に35年携わる。年商40億の研修会社に育て上げた後にコンサルタントとして独立し、2003年10月にアチーブメント株式会社の取締役に就任。コーチングの世界では最高タイトルである、国際コーチ連盟「マスター認定コーチ」の一人であり、33年間で延べ約21万名の経営者・管理職・営業職の研修を担当。子ども教育も25年前から実施し、高い評価を得ている。
外出自粛の影響で、関係性が悪化していると感じる夫婦が増えているそうですが、選択理論を適応できたら、必ず円満な家庭を築けると佐藤は断言します。今回は、男性の皆様に4つの質問をとおして、夫婦円満の秘訣をお伝えいたします。
①居心地や相性の悪さを否定的に捉えていませんか?
ステイホームによって、夫婦で過ごす時間が増えました。私もこれまでの生涯にないくらい、朝から晩まで妻と一緒にいましたが、うれしくて仕方ありませんでした。ところが、なかには「居心地が悪い」「どうも相性が悪い」と感じる方もいたようで、離婚とまではいかなくても、「夫婦の危機を迎えるかも」と思った方は、少なくないようです。しかし、これは危機ではなく、チャンスなのです。
選択理論では、愛には「のぼせ愛」と「真実の愛」があると提唱しています。のぼせ愛とは性的な衝動にかき立てられた愛です。恋が芽生えたころ、相手のどんな姿を見ても愛おしく思っていませんでしたか?四六時中会いたくて、好きでたまらないその感情こそが「のぼせ愛」と言われており、どんな違いも魅力に感じます。しかし、その感情は時間とともに薄れていき、4〜5年で終わりがきます。そして何気ない言動が気にかかってイラッとしてしまうのです。対して「真実の愛」とは、思いやりを持って育む愛で、違いを受け入れ、尊重する関係のなかに生まれます。努力が必要ですが、日に日に深い関係性を築いて行くことが可能です。
すれ違いが起きるのは、「のぼせ愛」が終わったタイミングであることが多く、「真実の愛」を育む時期がやってきただけなのです。そもそも結婚とは、まったく別の環境で育った者同士が一緒になること。相性が合わなくて、むしろ当然なのです。だからこそ、生涯円満な夫婦でい続けたいのであれば、「真実の愛」を育む必要があります。そしてその第一歩は、他の誰でもない自分自身が行動を変えることに他なりません。自分には何ができるのか、ぜひ考えてみましょう。
②パートナーとの「違い」はどこにありますか?
関係性を見直すときに考えてほしいのが、選択理論にある「5つの基本的欲求」です。生存、愛・所属、力、自由、楽しみです。この欲求は人によって違い、夫と妻とでも異なります。私は、愛・所属の欲求が強いのですが、妻は自由の欲求が強いです。大切な人といつも一緒にいたい私とは違い、妻は自分の時間を大切にします。その点で、欲求が食い違っています。だからといって、この違いを正そうとは思いません。先天的なもので変えられないからです。もし無理に変えようしたら、嫌われます。愛し合っていたはずが、顔も見たくない相手になってしまいます。大切なのは、「違い」を受け入れることです。相手と自分は、違っていて当然。違っているから面白い。それを「自分が正しくて、相手が間違っている」と考えるから関係性が悪くなってしまうのです。
③その行動は二人の関係を良くするのもですか?
「仲良くしたい」と思うあまり、自分の趣味に相手を引き込もうとしたり、生活パターンを合わせてもらおうとすると、相手は苦痛を感じ、あなたから離れていきます。大切なのは、自分の欲求を満たすことではなく、二人にとって心地よい関係性を築き上げることです。グラッサー博士が言う、「解決のサークル」を意識してみてください。大きな輪の内側に、自分たち夫婦と「幸せな結婚さん」の3人がいると考えます。輪のなかにいる限り、自分の意見を貫き通すことよりも「幸せな結婚さん」にとって大切なことを優先すると、二人で合意します。その上で、幸せな結婚さんにとって良いことを二人で取り組むという考え方です。例えば、気の進まない相手を自分が行きたい旅行に連れていくのは、自分にとって良くても「幸せな結婚さん」にとっては良くないとわかります。もしその答えが出たら、旅行の計画は棚上げにする。これが「幸せな結婚さん」を優先するということです。
④パートナーのためにできる「小さなこと」は何ですか?
人は、自分に近しい存在であるほど、相手をコントロールしようとします。そして「これをしてほしい、あれをしてほしい」と要求します。しかし、良い関係性を維持するには、「相手が何をしてくれるか」ではなく「自分が相手のために何ができるか」が重要なのです。難しく考えることはありません。最低一日一回、「相手が喜ぶこと」を実践すればよいだけです。例えば、率先してゴミ出しをする、食器を洗うのを引き受けるなど。私の場合は、よく妻の腰をもんでいます。邪魔をしない、悩ませないというのも、相手のためにできることです。妻が大好きな映画を見ているときは、決して邪魔しない。妻に「今夜、何食べたい?」と聞かれたら、何でもいいではなく、具体的に食べたいものを伝える。献立で頭を悩ませることは、妻にとって負担だからです。
いまさらそんなことはできない、と思うときは、次のことを自問自答してみてください。「その相手を選んだのは、いったい誰なのか」もともと好きで一緒になった二人です。これからも夫婦でいることを望むなら、自分の欲求だけでなく、相手の欲求を満たし、二人の関係性を最優先して、できることからやってみてはいかがでしょうか。