アチーブメント初のプロパー取締役を生み出したマネジメントの”技術”[後編]

新卒入社から19年。社員250人以上を抱えるアチーブメントで、初めてのプロパー取締役に就任した橋本拓也が、部下育成の秘訣を独自の視点で語ります。酸いも甘いも経験したマネジメント経験から得た知見を、前編と後編の2回に分けてお届けします。部下の成長を加速させたい、組織を活性化させたいとお考えの方必見です。

マネジメントのイロハは、まず「型を知る」こと

自分のマネジメントスタイルに課題を感じた私は、上司に積極的にアドバイスを求めるようになりました。いろいろな助言のなかでも、実際に部下に対するマネジメントの様子を間近で見せてもらう「同行」の機会は、私にマネジメントとは何たるかを気づかせてくれました。

アチーブメントでは、単に会議室で話し合うだけでなく、実際に現場で一緒に仕事をすることで人を育てる「同行」の文化が根付いています。上司はその文化を体現すべく、私の代わりに私の部下と面談し、その様子を間近で何度も見せてくれたのです。

上司の部下との関わり方は、私のそれとは全く異なり、まさに目から鱗でした。

以前の私は、「上司が部下に教えなければならない」という思い込みから、一方的にアドバイスをしていました。しかし目の前で繰り広げられた面談では、上司は部下の話を熱心に聞き、共感することに時間を割き、部下も自分の話を生き生きと語っていたのです。

もちろんこれまで私自身も、上司の面談を幾度となく受けてきました。しかし、面談する側として、自分がそうされたように部下とコミュニケーションできるかというと、話は別。同じようにやっていたつもりでも、自然と私なりのスタイルになっていたことに気がつきました。

私に対しては心を閉ざしていた部下が、上司との面談でみるみる笑顔になっていくのを見て、勝手に自分の中で「この部下はこうだから問題だ」といったフィルターを加えていたことにも気がつきました。「部下の性格に難あり」というのは自分の勝手な決めつけで、自分のコミュニケーションに問題があったのだと思い知ったのです。

同行を通じて、マネジメントの型を知った私は、少しずつ実践に移し、時間をかけて部下との関わり方を変えていきました。マネジメントは技術ですが、やり方を知っただけでは習得できません。何度も繰り返し訓練する地道な作業が、少しずつ私のマネジメントスタイルを矯正してくれました。

「部下は有能な存在である」というマインドセットの転換

同行を経て、私の上司がそうしていたように「部下は有能な存在である」という前提に立つようになりました。
目の当たりにした上司と部下とのやり取りの中で、部下はすでに多くの能力を備えており、そして自ら成長したいという意欲を持っていることに気づかされました。マネジャーの役割は、部下の力を信じて、彼ら彼女らが自ら成長できるようサポートすることだと、心から理解したのです。
そのことに気がついてからは、部下に答えを一方的に押し付けるのではなく、まずは部下の考えを聞き、ジャッジするのではなく耳を傾けるようになりました。そうすることで、部下は主体的に行動できるようになり、少しずつですが組織内にも変化が現れていきました。

組織の成長は部下の成長の先にある

暗黒時代の苦い経験は、私がマネジャーとして成長するために必要な時間だったのだと、今でも強く感じています。
アドバイスをするだけでは、部下は変わりません。何よりも大切なのは、上司が部下の理解者であると感じてもらえるような信頼関係を築くこと。そうすることで、部下は自ら「教えてほしい」「変わりたい」と求めるようになり、成長へと繋がっていくものです。
暗黒時代から5年が経った頃、初めてマネジメントの手応えを感じられたことをよく覚えています。単にチームとしての数字達成ではなく、メンバーの成長と成果を実感し、彼ら彼女らの達成を心から喜べるようになったのです。
組織の成長は、部下の成長の先にある。
そのことを肝に銘じて、今も日々、部下、そして仕事に向き合っています。