リードマネジメントの5つの技術とは

リードマネジメントとは、アメリカの精神科医ウイリアム・グラッサー博士が提唱した選択理論心理学をベースにしたマネジメント手法です。
選択理論では「すべての行動は自らの選択である」と考えます。つまり、マネジャーは、メンバーの行動を直接変えることはできないと考えています。そのためマネジャーは、メンバーが内発的に「そうしたい」「この人についていきたい」と思ってもらえる「リーダーシップの技術」を手にすることが欠かせません。
さらに、リードマネジメントが目指すものは「メンバーの成長(個々人の目的・目標達成)をとおして組織のパフォーマンスを最大化すること」です。その鍵は、「個人の成長支援の技術」・「水質管理の技術」・「委任する技術」・「仕組み化する技術」を身につけることにあります。
ここから具体的に5つの技術をみていきましょう。

1

リーダーシップの技術

マネジャーがメンバーから「この人についていきたい」「この人のために一肌脱ぎたい」と思ってもらうための技術です。メンバーの上質世界と5つの基本的欲求のバランスを把握し、満たす関わりをしたり、誰のために、何のために、このチームが存在し、どこへ向かうのかを共有することが大切です。

3つの実践ポイント

□ 「誰のために」「何のために」「なぜ」という目的を語り、だからこの目標へ向かうという未来を示す
□ 「メンバーカルテ」をつくりメンバーの上質世界を知る
□ メンバーの「5つの基本的欲求」を満たす関わりをする

実践後のイメージ

メンバーとの強固な信頼関係が築かれる
メンバーが組織の未来にわくわくし、自分事として主体的に仕事に取り組む

2

個人の成長支援の技術

メンバー個々の目的・目標を明確にして、それを達成に導く技術です。マネジャーはメンバーの目的や目標を明確にする支援をし、目標達成に導きます。目的・目標から逆算した過程のなかで得られる成長のイメージを伝えたり、達成に至るまでに必要な課題に、メンバー自らが気づけるような関わりをすることがポイントです。

3つの実践ポイント

□ メンバーの「目的・目標」と「行動」を一致させる支援をする
□ 「期待」を伝える
□ フィードバックとは「目指す成長に対する現状の情報提供」と心得、メンバーの成長にフォーカスする

実践後のイメージ

メンバーの目的・目標が明確になる
メンバーの実行力が向上
メンバー自身が目指す成長に対して課題を認識し、解決に向けて自ら挑戦する

3

水質管理の技術

チームのなかに「人が育つ文化」を醸成するための技術で、1対マスのマネジメント手法です。「共通目的」「協働意欲」「コミュニケーション」をチームや組織に根付かせ、感謝や応援、挑戦などが行動で示される状態をつくります。そのためにはマネジャー自身が「この組織で大切にしたい価値観」を言語化し、率先して行動することで共感をつくることが大切です。

3つの実践ポイント

□ 自分の組織の「水質・文化」がどのようなものかを振り返る
□ 会社が大切にしている価値観を明文化し、マネジャー自ら行動で表す
□ 他者に興味・関心を寄せ、発信にレスポンスするなどの行動を大切にする

実践後のイメージ

組織内では感謝、応援、挑戦などの肯定的な発言や態度が溢れている
メンバーが前向きで協力的になりお互いに尊重しあったり感謝しあうのが当たり前になる

4

委任する技術

メンバーに仕事を任せ、マネジャーが本来すべき仕事をするための技術です。委任はメンバーを成長させ、マネジャーが本当にやるべき未来につながる仕事の時間を捻出します。委任する際には意味づけ意義づけ、あなたに委任する理由、途中経過で求める報連相などを伝えます。

3つの実践ポイント

□ 放任ではなく育成の意図をもって委任する
□ メンバーの成長の機会に繋がる目標勾配の仕事を委任する
□ 自分の仕事はできるだけメンバーとともに行い、同時に誰かの育成を兼ねている時間にする

実践後のイメージ

マネジャーが未来につながる仕事にあたれる
マネジャーがその場にいないのにまるで存在しているかのような現場になる

5

仕組み化する技術

人が育つ仕組みをつくるための技術です。組織は常に変化し続けます。そのため、特定の人に紐づきすぎた組織運営ではなく、人が育つ仕組みが大切です。例えば、表彰制度、人事制度、会議、面談などの仕組みがあることで、目指す指標や基準が明確化し、生きがいとやりがいを感じられ、人の成長が促進されます。

3つの実践ポイント

□ 組織の目的・目標を言語化し、共通言語にまとめる
□ メンバーが常に目的・目標に立ち返り、言葉にする場を設ける
□ マネジャーは「バリューマネジメント」で価値観を全体にメッセージする

実践後のイメージ

人材の入れ替わりがあっても再現性高く、好業績と良好な人間関係の両立を実現できる
メンバーが定期的に目的・目標に立ち返ることができる

ここからはリードマネジメントを実践し、現場での変化をつくられた事例をご紹介します。