意見の対立を恐れ遠慮がちな組織から 幹部との共同学習で心理的安全性が高まり 業績・従業員満足度が向上

タジマグループ
設立:1944年 代表:兒島 成俊
従業員数:388名(タジマ工業・TISMの合算 2023年8月時点)
本社所在地:愛知県春日井市牛山町1800番地
事業内容:刺繍事業・縫製事業・先端事業

タジマ工業株式会社 代表取締役社長
株式会社TISM 代表取締役
一般財団法人日本プロスピーカー協会 認定ベーシックプロスピーカー

兒島 成俊

大学卒業後、大手証券会社に入社。新人賞・社長賞を獲得する。曽祖父が創業し、愛知県で工業用刺繍機・多機能ミシンの企画・開発・製造・販売を行うタジマグループへ2020年に入社。2021年4月代表取締役に就任し、赤字続きだった会社の再生に着手。グループ売上・営業利益ともにV字回復を果たす。

Before●意見の対立を恐れ、発言しづらい組織
●部門間の連携が不十分で実行力に課題
●リーマンショック以降の累積赤字
コロナ禍での
業績悪化
After心理的安全性が高まり、
 社員からの提案・発言が増加
部門間の連携が増え、
チームワークによる実行力が向上
売上高約2.6倍、連続赤字から
大幅な収益性改善で黒字化

会社を立て直したい
改革も成果見られず焦燥

「おじいちゃんみたいな経営者になりたい」。厳しくも愛のある祖父に憧れ、私は小学生のころから経営者を目指してきました。大手証券会社で経験を積み、新人賞・社長賞を受賞した後、タジマグループに入社。
しかし当時のタジマグループはリーマンショック以降の累積営業赤字が数十億円。さらに2020年からのコロナ禍で業績が大幅に悪化。「私が何とかしなければ」と会社を立て直したい一心で、自ら代表取締役に就任しました。
その後も様々な改革を推し進めるも、期待していたような成果が上がらず、役員をはじめ幹部一同行き詰っていました。そんなときに出会ったのが『頂点への道』講座で、選択理論心理学を学びはじめました。

どんな経営者でありたいか?を追求

選択理論心理学を学ぶ前の私は、年長者や社歴の長い社員に遠慮があり、そうした社員との関わり方に悩んでいました。また、グループ再起のためには、犠牲も厭わぬ姿勢こそ真の経営者であると考え、自ら矢面に立ってでも改革を推し進めるべきと考えていました。そのような決意のもとに改革を進める一方で、思うような成果が見えず、「今のやり方でよいのか」という疑問すら抱くようになりました。
このような状況で学びはじめた選択理論心理学を通じ、「何の制限もないとしたらどんな経営者でありたいか?」と自問し続けました。そして、「本当は祖父のような成果と人間関係を両立する人になりたい」という気持ちがあったことに気づきました。
「社員とともに幸せになりたいと思う自分は、愛情がある人間なのかもしれない」。肯定的な自身の在り方を発見してからは、社員や役員に対しても自ずと「感謝」の気持ちが沸き上がってくるようになりました。それから成果と人間関係の両立を目指し、マネジメントスタイルをリードマネジメントへと変革していきました。

身につけたい7つの習慣を実践し
社員150名と1on1を実施

「身につけたい7つの習慣」を目につく場所に掲示

まず取り組んだのは、一方的なコミュニケーションスタイルを手放すことです。傾聴する・支援する・励ます・尊敬する…と「身につけたい7つの習慣」をすぐ目につく場所に貼り選択理論心理学に基づいた人との関わりを意識しました。
さらに社員一人ひとりの〝願望〟を知るため、幹部をはじめ社員150名と1on1を実施し、ここでも傾聴・承認・質問を心がけました。経営者として、仕事を指示することがありますが、その際も「社員への感謝」を土台に持てるようになってから、伝え方・伝わり方が変わってきたように思います。これらのプロセスを経て少しずつですが、会議の中で意見や提案が挙げられるようになってきました。

幹部と共にリードマネジメントを実践し組織の水質が変化

徐々に変化が表れてきた一方で、私一人の力だけでは限界があることにも気づきました。タジマグループは世界各国に拠点を構え、グループ会社6社、国内だけでも社員は350名を超えています。そこで、現場で直接社員と関わる幹部とともにリードマネジメントを学びはじめました。

ともにリードマネジメントを学んだ幹部が取り組んだこととは?

開発・SCM部門責任者
株式会社 TISM
常務取締役

吉川 勝治
「視点を変える質問」で
部門間の連携強化・メンバーに変化
以前のTISMは、言わば自分たちがつくれるものをつくれる時期につくり、販売部門をはじめ他部門との折り合いもよくありませんでした。
選択理論心理学で人は内発的に動機づけられて行動していると知り、「ついていきたい」と思ってもらえる上司であろうと努めました。誠実さ・真摯さを大切にし「最後は私が責任を持つから安心してほしい」と言葉で伝えることを心がけています。
そして部下との面談時間を取り、会社方針を咀嚼し、期待とともに伝えていきました。特に重視したのは「視点を変える質問」です。「これって三方良しという企業理念からみたらどう?」「何年か先の〝理想の自分〟が〝今の自分〟にアドバイスするとしたら何と言う?」など、質問をとおして目的に立ち返ったり客観的に考えてもらったりするようにしました。すると少しずつではありますが、会社全体のことを考えて仕事をしてくれる部下が増え、部門間の連携が強まり、生産性が向上しました。
また、以前は「この仕事は自分のスキルアップにつながらない」と自身のスキル向上にしか目を向けられていない管理職もおりました。しかし、選択理論心理学の学びを活かして彼と関わり続けていくなかで、当該社員の考え方が大きく変わっていきました。いまでは、彼の願望にグループやチームの成長をとおした自己実現が入り、お客様のため、チームのパフォーマンス最大化にチャレンジする管理職へと変わりました。

営業部門責任者
タジマ工業株式会社
営業部部長

浅井 信雅
選択理論的な関わりで、
部下とのコミュニケーションを改善
組織の実行力が向上
以前の営業部門は、何か新しいことを進めると批判が先に出てくるような保守的な組織でした。また、恥ずかしい限りですが、私自身の部下との関わり方にも問題がありました。父の厳しいしつけや学生時代の体育会系のスパルタ指導、入社後の上司や先輩からの熱心な指導もあり、部下には厳しく指導するものと思い込んでいたのです。私の指導方法が適切ではないという指摘もあり、このままではいけないと自分を変えていきました。
リードマネジメントを学び心がけたのは、選択理論心理学的な言葉かけです。同じ言葉でもどんな表情で伝えるかで伝わり方が変わるとの教えを実践しました。ですが、初めは上手く表情をつくれているのかわからず、トイレで笑顔の練習をしてから会議に臨んでいました。すぐに効果が表れたわけではありませんが、少しずつ組織の人間関係が良好になり、心理的に安心安全な部署になっていきました。
そんな2023年の年度末、米国向けの品質規格変更の対応による製造減で単月赤字が続く予想でした。会社全体に「今年度の達成は難しいだろう」という空気が漂っていましたが、私は最後まであきらめたくない、皆でがんばろうと部下に伝え続け、結果的に大きな成果をつくり、計画を達成するだけでなく、グループ全体の成長に大きく貢献することができました。さらに今年は目標を上回るペースで達成を重ね、一人ひとりの主体性・実行力が高まっているのを感じています。

彼らをはじめ、今では組織の中で100名以上が選択理論心理学を学び実践してくれています。また、グループ会社の社長とも、「タジマグループをもっと良くしていきたい」という想いを共有でき、より強固なパートナーシップを築くことができています。
従業員へのアンケート調査では、受講前に比べ会社への満足度が5.6%増加、不満は2.2%減少しました。業績は受講前と比べ売上高は約2.6倍、さらに連続赤字から大幅に収益性を改善し黒字化に成功しました。
これは幹部と共に継続学習・共同学習を続け、組織の水質が良くなったからに他なりません。仕組みだけでは人は変わりません。まだまだ道半ばですが、これからもリードマネジメントを実践し、良好な人間関係と好業績を両立する企業を目指してまいります。

Checklist
1.リーダーシップの技術
□どんな経営者でありたいかを明確にする
□身につけたい7つの習慣を実践する
2.個人の成長支援の技術
□1on1を実施する
□メンバーに期待を伝え、質問をとおして成長を促す
3.水質管理の技術
□幹部と共にリードマネジメントを学ぶ
アチーブメント株式会社 取締役営業本部長 橋本拓也