STEP3-2.ケースごとの関わり方 を学び、実践する

Q.外的コントロールを使ったり、
ルールを守らずにチームの和を乱したりする
トッププレイヤーにどう関わるとよいのか?

A.和を乱す本音の理由を聞き、
人格を磨き上げていくことの素晴らしさを伝えましょう。
実績紹介
営業所長・支社長として、全国トップの実績を達成
6~7名のマネジメントから始まり、現在は40名の育成を担う
協調性がなかったメンバーを管理職にまで育成

問題行動には必ず理由がある

周囲を傷つけたり、和を乱したりといった問題行動をとる人というのは、確かに頭を悩ます存在です。しかし、そのような人たちは力を持っていますし、チームに対して影響力があります。その力の正しい使い方を知らないがために、問題行動という形となってアウトプットされてしまうのです。正しい使い方に導いてあげることこそがマネジャーの役割なのではないかと思います。
数十人のマネジメントに携わり、いろいろな関わり方を試すなかでわかったことは、そうした問題行動をとる理由が必ずあるということです。特に何かのコンプレックスを持っていることが多いです。表面的に見るとプライドが高くて、強そうに見えたとしても、本当は自信がなかったり、常に誰かと自分を比較していたり、孤独だったりします。常に怯えていて不安だったりします。そのようなマイナスな感情をかき消すために、成果を出すことによって自分の立場を保とうとしているのです。他人に対して問題行動をとってしまうことも同じようなロジックです。具体的に掘り下げていくと、その理由は人それぞれ違うはずですので、私はまずはしっかりと話を聞いてあげることから取り組んでいます。「なんでそうしようと思ったの?」と。それだけでは解決はしないかも知れませんが、理由を知らずに根本解決はできないのです。

「成果」より「生き方」の願望を拡張する

その上で大切にしていること。それは、本人にとっての「理想の自分像」を拡張させてあげることです。言ってしまえば、「成果を出す自分」という近い未来しか見えていないために問題行動をとっても大丈夫と思っているのです。例えばですが、「5年後、10年後どうなりたいのか?」「尊敬される人になりたいのか?尊敬されるとはどういうことなのか?」といった具合に視座を上げてあげることです。その上で私はよく、人としての道義を伝えるようにしています。「優秀」とは、「指導者」とは、「トップセールス」とは一体何かを、語り続けるのです。そうして、「後輩やチームのためにならない、自分勝手な振る舞いはある意味で恥ずかしいことである」という価値観を醸成していきます。その価値観が本人のなかで腑に落ち始めると、徐々に自分の力で改善できるようになっていくのです。
しかし、腑に落としてもらうことがそもそも難しいように思えるでしょう。そのために必要なのは、語る口調や言葉よりも、マネジャー自身が言っているように生きているかだと思います。憧れられる存在かどうか、人を率いるに値する存在かどうか。常に自問自答して、最善・改善を重ねてきました。完璧は難しいですが、仲間を本気で思う心は必ず伝わります。その思いが伝わったときに、先述した「恐れ」や「不安」を持っている仲間が、初めて心を開いてくれるのだと思います。私も非常に頭を悩ませた仲間がいましたが、時間をかけて関わった結果、今では営業所長としてチームを率いて高い成果を上げてくれるようになったのです。人の可能性は無限大です。良さを引き出す関わり、それをマネジャーが身につけられれば、必ず問題行動は改善されると私は信じています。

ともに日本一をとった7名の営業所長と

ソニー生命保険株式会社 支社長
元田 賢治

2015年より営業所長として、採用と育成を担う。指示・強制のマネジメントに取り組んでいたところから、選択理論を学んだことで、内発的動機付けによる関わりを実践。2017年度はメンバーから7名が社長杯に入賞を果たす。メンバーから8名が『頂点への道』講座を受講し、結果としてMDRTを達成。営業所チャンピオンを獲得し、2020年に支社長に就任。同年度に支社長部門にて全国トップの実績を達成している。
エイローのワンポイントアドバイス!
「組織が存在する理由を考えましょう」
結果を出しているが素行が悪いメンバー、難しいテーマですね。そのような人を私もたくさん見てきましたが、マネジャーとして持つべきスタンスは、絶対に特別扱いしないということです。組織は、その人一人のために存在しているのではありません。全員の自己実現の舞台なのです。マネジャーがどう関わるか、他の人たちは全員見ています。特別扱いはせず、その人の行動が周囲にどう影響を及ぼしているのか、客観的な視点からフィードバックしてあげましょう。その人一人で頑張るよりも、周囲の協力をもらえて頑張るほうがきっと何倍もの成果を上げていけるようになります。そのようなより良い自分を想像してもらえるように関わっていきましょう。
そして、一致団結して全員で勝つためには、全員で勝つだけのデザインが必要です。どんな組織であればそれを実現できるのか、明確に描ききりましょう。どんな雰囲気で、どんな関わりで、何を目指して、どんな関係性なのか。これらを明確にして、「君にはこの組織のモデルになってほしい、君の力を借りたい」と、期待することを伝えましょう。掲げた理想・指針から一貫した判断基準を持ち、その実現に向けて忠実に日々やるべきことの実践に徹するという当たり前のことを続けた先に、全体達成が叶うのです。

アチーブメント株式会社 相談役/主席トレーナー
アチーブメントHRソリューションズ 株式会社 取締役社長 佐藤 英郎

年商40億の研修会社に育て上げ、プロ教育コンサルタントとして独立。その後アチーブメント株式会社に入社。コンサルタント・講師として35年以上活動しており、250社以上、延べ約23万名の研修実績をもつ。特にコーチングに強みがあり、世界最高タイトルである国際コーチ連盟「マスター認定コーチ」の一人。

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