5名の取り組みから見えてきた共通点は、「正しさ」を手放し、相手を理解しようとする姿勢でした。ここからは、「正しさ」を手放し、選択理論的コミュニケーション術を使うために大切な考え方について、アチーブメント主席トレーナーの佐藤英郎よりお伝えします。
〝正しさ〟を押し付ける相手と押し付けない相手がいる!?
これまでの事例を拝見し、皆さんの取り組みに深く感動しました。どのケースにも共通していたのは、「私が正しい」という考え方を手放し、相手を理解し受け入れる姿勢を身につけ、人間関係が改善したことです。私自身も、いくつかの会社で仕事をしてきましたが、かつての私は、何か問題が起きると「相手を変えよう」と考えていました。やる気のない部下を見て苛立ったり、成果が出るように「私の正しいやり方」を押し付けたりしてきました。そのときは成果が上がるのですが、長くは続かず、人間関係も決してよいとは言えない状態でした。
ところが不思議なことに、妻に対しては同じ発想を持ったことがありません。問題があっても「変わってほしい」とは考えず、相手を理解し尊重する姿勢を自然と取っていました。妻には無意識で選択理論を実践していたのです。
より良い人間関係のカギは思考の習慣にあり
「相手を変えよう」からシフトするための3つの問い
では、どうすれば相手を変えようとする思考習慣を手放すことができるのでしょうか。それは「外的コントロールを使わない! 相手を変えようとしない!」と〝覚悟〟を決めることです。変えられるのは「自分の思考と行為」だけ。問題が起きたとき、相手を変えることに意識を向けるのではなく、1「自分が変えられることは何か」と自分に問い続けるのです。
覚悟を決めたとしても考え方は習慣なので、どうしても以前の「私は正しい、相手は間違っている」という考え方から抜け出せないときもあるでしょう。そんなときは2「もしも相手が変わらなかったとしたら、私はこの関係をどうしたいと思うか」3「もしも私が相手を変え続ける行為をやめなかったことで、この関係が壊れたとしてもよいか」と問いかけをしてみてください。焦点を当てるべきは、相手ではなく自分自身です。どういう関係を築きたいのか、その関係をより良くするために自分自身が変えられることは何か。3つの問いを活用し続け、習慣になるまで落とし込みましょう。
一人ひとりが持つ上質世界から〝違い〟を理解し受け入れる
そしてもう一つ理解しておく必要があることがあります。それは一人ひとり違う上質世界を持っていることです。上質世界は生まれたときから形成がはじまり、様々な経験をとおしてイメージ写真を追加したり、貼り変えたりを繰り返しています。そして、人はあらゆる出来事をこの上質世界をとおして判別しています。一つの出来事に対して、快適感情を抱く人もいれば不快感情を抱く人もいる。違っていいのです。私は妻とは違う環境で育っているので、たとえ夫婦であっても違う価値観を持つ人であるという前提で関わっていました。ですから、何か問題が起きても、妻を変えようとしたり、違いを責めませんでした。
相手の意見や考えが自分と違ったら、「相手はどんな上質世界を持っているのだろう、5つの基本的欲求の何が強いのだろう」と〝相手を理解する材料〟として捉えてみてください。違いは違いであって、決して間違いではないのです。もちろん、すべての相手を完全に理解できるわけではありません。どうしても理解できないという相手は誰にでもいるもです。そんなときは、無理に理解しようとする必要はありません。「そういう人なんだ」と受け止めるだけで十分なのです。大切なのは、どんな相手にも「身につけたい7つの習慣」で関わり続けることです。
(『グラッサー博士の選択理論』より抜粋)」
グラッサー博士の言葉のとおり、選択理論の考え方と言葉を一致させて生きるのは、簡単ではありません。しかし日々意識し、実践を重ねれば、必ず身についていきます。正しさを手放し、自分に焦点を当て、より良い人間関係を築いていってください。