「最高の笑顔をあなたに」を理念に、福祉業界の働き方改革に挑む。離職率20%から選択理論をマネジメントに取り入れ、6%未満(業界平均13%)に改善、過去最高業績も更新。その変遷の裏側を伺いました。
意見の行き違いが多かった過去
福祉業界は利用者様に対して「外的コントロール」を使うことはもちろんありません。しかし、かつては職員の間で批判し合ったり、価値観を否定し合ったりすることは少なくありませんでした。まさにカリスマだった創業者の父から福祉法人を継いだ私は、そうした文化もあって伸び悩む組織を見ては、どうしたものかと頭を抱えていました。そんなときに友人から紹介をもらい、『頂点への道』講座を受講して、選択理論心理学と出会ったのです。これはまさに私たちの業界と親和性があり、導入したいと思い、施策を打っていったのです。
「共通言語」が浸透を後押しし、組織文化に変化を
特に役立ったのは「ビジネス選択理論能力検定」の導入でした。約400名の職員がいるので、まずは知識を得てもらうためにスタート。幸い、福祉業界は資格取得に慣れている方が多く、大きな障壁はありませんでした。理論を学び、試験で実力を測る。人事制度とも連携し、資格取得者の待遇を変えました。明確な目標ができ、学習意欲が高まり、今では3級取得者が約200名、2級は80名に達しています。これが現場のコミュニケーションにも大きな変化をもたらしました。「その言葉、外的コントロールじゃない?」といった選択理論を基にした指摘が飛び交うようになったのです。普通なら受け手はイラッとしかねませんが、お互いが共通の知識・価値観として持っているので、指摘の真意を理解し、行動を振り返って改善するスピードが圧倒的に早まりました。結果、職員が安心して話せる文化が生まれ、過去最高業績の更新を実現しました。
相手の知覚を理解する意識がマネジメントの葛藤を解決する
選択理論心理学を学んで思うのは、相手の「知覚」を理解しているかどうかが、マネジメントする側の精神衛生を保つということです。上司の立場だけで物事を考えれば、問題を起こした部下にイライラしますし、怒りも湧き上がります。しかし部下の立場に立ち、その人がどのように目の前の出来事を捉えているのか、その人の上質世界には何があるのかを知り、理解する努力をすることで、なぜその判断をしたのかという問いに答えが出せます。人それぞれ違う捉え方だからこそ、その理解に徹することが円滑なコミュニケーションの土台になるのだと思います。組織として、さらに深く学び実践していけるように、これからも力を尽くしていきます。