[マネジメント編]離職続きから、息子も「継ぎたい」会社へ 「部下の願望と会社の理想の双方を満たす」

若手の離職や家族関係の悪化。富山で100年以上の歴史を誇る品川グループの4代目代表を襲った苦境。選択理論の学びを機にマネジメントスタイルを変革し、息子も「継ぎたい」と語る組織へ。その軌跡に迫ります。

頑張りとは裏腹に離職し続けていく社員

4代目として約20年前にトヨタ系列のディーラーを中心に経営する事業を継いだ当初、私は深い悩みの渦中にいました。売上が下がり、明確なノルマを課す「外的コントロール」の文化が蔓延。自身の経験から正しさを押し付け、離職が絶えず、会社は心を一つにできずにいました。私生活でも仕事に没頭するあまり家庭を顧みず、妻からは怒られ、子どもたちからは怯えられる毎日。誰も理解してくれない。何かが根本的に間違っている。そう思い悩んでいたとき、アチーブメントで学ぶ先輩経営者の紹介で、青木社長の講演会に参加する機会を得たのです。

経営の土台を築いた「理念」と「内発的動機づけ」

『頂点への道』講座で学んだのは、単に「外的コントロール」をやめることに加え、いかに社員の「内発的動機づけ」を促すかが大切だということです。社員の「上質世界」に会社のビジョンがなければ、彼らは自ら走り出しません。そこで私たちは、会社の目的や理念を発信し、進むべき方針を明確化しました。組織向け研修やコーポレートスタンダードの作成も、すべてはその一環です。会社の理想を明確に示し、社員が「この会社で自分の人生がどう良くなるか」という願望を描きやすくしました。会社の未来と自分の未来を重ね合わせるプロセスを通じて、組織に選択理論の価値観やマネジメントが浸透し、文化が変わっていきました。

学びを深める「ケーススタディ」と、取り戻した信頼

そして実践レベルを深めるため、特に力を入れているのがマネジメントプログラムを活用した社内勉強会です。様々なケースを通して、部下の上質世界を理解し、会社の理想を代弁する。そしてその双方を満たすアプローチを探していく。この取り組みで、マネジメント層の視点は「部下をどう動かすか」ではなく「部下の願望実現と会社の理想をどう両立させるか」へと変わりました。「相手を尊重すること」を、コミュニケーションの前提条件に据えることができるようになったのです。従業員満足度アンケートの数値は年々向上し、今では業界平均を大きく超えています。何より嬉しいのは、二人の息子が「お父さんの会社に入って継ぎたい」と言ってくれるようになったこと。会社・社員・家庭と、すべてが好転し始めた今、この学びの価値を確信しています。