「必ず育つと覚悟を決めなさい」~部下は育つという上司の確信が、踏み込む勇気を生み出す~

子育て 社員教育 経営者の自己研鑽

株式会社フロンティアホールディングス 代表取締役  中西 栄仁

部下は育つという上司の確信が、踏み込む勇気を生み出す

トップが明確な未来を指し示し、志を明言していたとしても、働くなかで迷いが生まれる社員もいるかもしれません。
「本当にこの組織で良いのだろうか」そんな思いを持つ社員が、持ちうる力を発揮できるようにするには、どのようにかかわるとよいのでしょうか。
センチュリー21グループの約1000の加盟店のなかで、常に売上トップ10に君臨し続け、低い離職率を実現しているフロンティアホールディングス代表 中西栄仁氏に、その秘訣を伺いました。

育てる側の信じる心があれば一歩踏み込める

社員を育てていく上で何が一番問われるかと言うと、事業に対して共感しているかどうかだと私は思います。同じ方向を目指していきたいと思ってくれていることが、人が育つ土台となります。なので、そのような人を採用できるかが、育成のクオリティを直接左右すると感じています。
ただ、事業目的・志に共感をしている人材であったとしても、迷うことや、仕事がうまく行かずに気持ちがめげてしまうこともあるでしょう。人ですから、それは仕方ないことです。そんなときに上司としてどのように関わっていくかが、部下の成長のレベルを決めていきます。私自身が部下とかかわる上でとにかくこだわってきたことは、部下のことを心の底から信じることです。部下のなかに目標を達成する力があること、それを発揮できること、この会社にとってなくてはならない存在であること。これを本気で思えているかどうかが問われるのだと思います。本気で思えていれば、きっとそれは部下にも伝わりますし、信頼し合える関係性が作られているはずです。良い関係性という土台があれば、伝えづらいことでもはっきりと言うことができます。私は性格上、少し乱暴に伝えてしまう癖があるのですが、何より部下のことを思っている自信がありますし、それが伝わっているので、しっかりと受け止めてくれることがほとんどです。

覚悟を決めて前に進む後押しをする

迷っているとき、苦しんでいるときというのは、一言で言えば覚悟が決まっていないことが多いように私は思います。作り出したい成果に対して、どんなに苦しくても、必ず成し遂げると心の底から決めていないときに、迷いが生まれるのです。そんなときほど、私はあえて、「お前は絶対できるから、必ず自分が育つと、成長すると覚悟を決めてついてこい」と伝え、背中を押してあげるようにしています。たいがいのことは、その覚悟が決まれば解決するのです。例えば、私たちが扱っているのは、不動産という高額商品ですので、接するお客様もそれなりの期待を持ってこられます。中途半端な気持ちで臨んで、お客様から厳しいフィードバックをもらうことは、どの営業マンも一度は経験することでしょう。ここに躓いてしまう社員が多くいます。そんな社員には、厳しいようですが「落ち込んでいるのは、成長を放棄しているということだ。それは自己中心的な選択だと思う。あなたの成長はあなただけのものではなくて、家族や仲間やお客様のためになることだ。苦しいときこそチャンスだから、這い上がってきてほしい。必ずできるよ」と声をかけます。これは、大前提として信頼関係が築けている部下にしか言いませんし、相手の状況に合わせて伝える必要があります。ただ、伝え方よりも、「そんなところで立ち止まらないでほしい、あなたが持っている力はそんなものではない」と本気で思えていることが、そんな部下を思う愛情にあふれているかどうかが、最も大切なことだと私は思います。

本当に理念共感している人材が最後は育っていく

おかげさまで、私たちの会社は140名ほどの社員が集まる組織に成長してきました。経営の転換点において、離職していった社員も少なからずいますし、幹部候補として考えていた人材が離れていったこともあります。ただ、確信を持って言えることは、本当に理念に共感していて、会社の発展を願う社員は、多少のことがあっても、ともに戦い、成長していきます。最後はそれを信じて、忍耐強く待つことが経営者の器だと私は思います。

中西 栄仁
不動産販売でトップセールスに上り詰めた経験を活かし、2007年に独立。「縁ある人への価値ある貢献に生きる」という理念に根ざした経営を徹底して実践し、社員数140名にまで成長。全国に約1000あるセンチュリー21系列の加盟店の中で、売上トップ10にランクインし続けている。理念から一貫した社員教育を大切にし、業界では異例の低い離職率を推移しており、社員ロイヤリティの高い組織を実現している。