【WBC優勝記念インタビュー】14年ぶりの頂点へ導いた指導力の原点とは 侍ジャパンヘッドコーチ・白井一幸さん その2

【前回のまとめ】
前回の対談では、アチーブメント代表の青木仁志が感じた侍ジャパンの一体感の裏側にあった「同じ目的に向けた行動」、不調だった村上選手に対して白井さんがかけた言葉、指導者に必要な姿勢について語っていただきました。2回目の今回は、選手を一つの方向に導くマネジメント力、白井さんがチームに向けて発信した言葉を伺いました。

自らの感情はコントロールできないが、思考はコントロールできる


青木 今回は、大谷翔平選手やダルビッシュ有選手などのスター選手が一堂に会し臨まれた大会でした。トップ選手が集まるなか、個性を尊重しつつチームを一つにまとめるのは大変だったかと思います。何かマネジメントをするうえで意識したことはありますか。
白井 最初に私がチームに向けて発信したことがあります。それは、「この侍ジャパンで何がなんでも世界一になる」という目標。「野球を通して多くの人に元気や勇気や感動を与える」という目的。この目的・目標を侍ジャパンの全員が共有しようということです。
青木 それがどのようにチームの勝利に繋がっていったのですか。
白井 全員がレギュラーであり、誰一人欠かすことができない存在であることを理解して欲しかったです。野球というのはチームスポーツなので、全員が試合に出られる訳ではなく、ベンチで声援する側に回ることもあります。選手たちは各球団で活躍する人ばかりです。そのような人がベンチとなれば、「なぜ自分がレギュラーじゃないんだ」と自分の感情に焦点が向いてしまいます。しかし、目的・目標を明確にすることで、自分の感情ではなく、世界一になるという目標と、野球を通して元気や勇気や感動を与えるという目的に焦点をあてて行動できるようになるんです。

青木 自分の感情をコントロールすることはできないが、思考はコントロールできるという選択理論に基づいた考え方ですね。
白井 はい。選手たちには、「試合に出る人は思う存分能力を発揮しながら、目的・目標を達成するために役割・責任を果たしてください。試合に出られない人は目的・目標のために行動することがチームの後押しになる。バックアップの存在がチームの勝利の推進力になるんだ」ということを伝えました。
青木 なるほど。目的・目標を明確にしたからこそ、自分の感情に目を向けるのではなく、自らの役割・責任を果たすために行動できる訳ですね。チーム一丸となり戦っていると感じた背景には、白井さんが発信した目的・目標の設定と、選手たちを一つの方向に導くマネジメント力があったのですね。

【今回のポイント】
・目的と目標を侍ジャパンの全員が共有していた
・感情はコントロールできないが、思考はコントロールできる

▼白井一幸氏と青木仁志の特別対談講演はこちら

白井 一幸(しらい かずゆき)
元北海道日本ハムファイターズ 内野守備走塁コーチ兼作戦担当
一般財団法人日本プロスピーカー協会顧問 認定ベーシックプロスピーカー
駒澤大学を卒業後、1983年ドラフト1位で日本ハム入団。1987年ベストナイン、ゴールデングラブ賞受賞、1991年リーグ打率3位、最高出塁率を記録。現役引退後、日本ハムの二軍総合コーチ、二軍監督を経て、2003年から一軍ヘッドコーチを務め、リーグ優勝2回、日本一1回を獲得。指導者として「可能性を開く鍵は意識の持ち方と行動力」をモットーに選手の育成に従事している。

 

青木 仁志(あおき さとし)
アチーブメント株式会社 代表取締役会長 兼 社長
アチーブメントグループ CEO
北海道函館市生まれ。若くしてプロセールスの世界で腕を磨き、数々の賞を受賞。1987年のアチーブメント株式会社設立以来、46万名以上の人財育成と、5,000名を超える経営者教育に従事している。講師を務める『頂点への道』講座スタンダードコースは、28年間で毎月連続700回開催達成。40万部を超える『一生折れない自信のつくり方』シリーズを始め、累計65冊の著書を執筆。

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