クオリティカンパニー。それは人軸経営を実践し、働く人を中心に縁ある人の幸せを目指す高収益企業のことです。そんな理想をどの様に実現していくと良いのか、いかにして社員とともに組織を変革させていくと良いのか。本コーナーでは様々な角度からその成功事例をご紹介します。今回は老舗旅館・塚越屋の新卒採用に注目しました。地方であり、採用では苦戦がしいられる業界でありながら、初年度でインターンシップは満席、エントリー数も100を超え、4名入社という結果を作り出しています。ここまでの変遷を、代表の塚越左知子さんに伺いました。
試練の期間が長かった新卒採用までの道のり
新卒採用に興味を持ったのは、思えば10年前でした。『頂点への道』講座を受講して、理念経営を志すと本気で決めてからです。中途採用ももちろん素晴らしいのですが、価値観が合わずに離れる人もしばしば。もともと転職が多い業界で、思うように組織づくりが進まなかったのです。そこで、純粋で素直な新卒社員を迎え入れられたら、より理念浸透が進んでいくと思ったのです。
しかし、新卒採用をする前に必要なのは、新卒社員が育つ組織の文化だと学びました。茨の道とわかってはいましたが、意を決して踏み出していきました。確かに簡単ではなかったのですが、今振り返ればこの期間のおかげで今の納得感のある組織づくりができていると思います。
一番得られたのは組織の一体感
私は代表就任したときに、30億円の負債を背負い、その返済地獄からスタートした経営でした。常に生きるか死ぬかの闘いでしたが、社員をみると危機感も向上心もなく、温度差に葛藤する毎日。堪えきれずに、つい厳しい態度で接しては退職届を出される始末。それが新卒採用を決意してからの10年で一体感のある組織に変化していったのです。
理想を掲げてチャレンジしてきましたが、大切にしたのはどこまで行っても理念です。大切な人と大切な時間を過ごしたいときに選んでもらえる宿でありたい。日本一幸せな宿づくりをしたい。その理想から逆算した意思決定を徹底してきました。物事を判断するときにみるのは、上司や代表の顔ではなく、いつでも理念。あらゆる場面で理念から一貫した判断とは何かを語り、ゼロから社員とともに考え、その判断基準の浸透に力を注ぎ続けてきました。時間はかかりましたが、少しずつ、自ら求め、理想に向けて一致団結して追求をしていく文化が醸成されていったのです。
これまで描けなかった未来と仲間とともに
10年かけて組織の土台を整えた上で、改めて採用プロセスをアチーブメント社のリクルーティングカレッジで学び、ゼロから設計し、それを社員とともに実行していきました。旅館業は、低賃金・長時間労働と揶揄されることが多く、ましてや群馬という地方でもあり、正直ハードルは高かったです。だからこそ、勝負すべきは理念への共感であると決め、包み隠すことなく等身大に欠点を開示し、そして私たちが考える宿づくりの意義と価値を本気で伝えました。試行錯誤をしつつも、社員と力を合わせて、真正面から勝負をし続けました。そして、その翌年の入社式では、4名の社員を迎えることができたのです。不完全な点は多々あるものの、理念から一貫した生き方を追求し続けている集団であることが伝わり、優秀な若者が集ってくれたのだと捉えています。
ともに働いて1年。これまでの私たちが持っていない新たな視点から、たくさんの改善や提案をもたらしてくれています。間違いなくここから更に飛躍していく組織に成長していけると確信しています。
新卒採用は、一筋縄ではいきませんが、組織を変革し、本当の意味で理念経営を推進していく大きな力を秘めていると感じます。大切な社員とともに、この先もお客様に喜ばれ、選ばれる塚越屋を追求し続けてまいります。
温泉宿塚越屋七兵衛、香雲館 女将
全国若女将会つぼみ 会長
一般財団法人日本プロスピーカー協会 認定ベーシックプロスピーカー
群馬県伊香保温泉の旅館に生まれ、中学から東京に進学。メディアやクリエイティブ企業の経験を経て、家業である旅館に戻り女将として従事。30億円の借金を抱え破綻寸前だったところから『頂点への道』講座の学びを活かして正常な経営まで回復。高い顧客満足度を誇っており、コロナ禍でも平均の1.5倍の集客を実現。今では自社だけでなく、業界・地域の発展にも力を注いでいる。
株式会社 塚越屋
創業 | 1863年 |
売上 | 4億円 |
代表者 | 塚越 左知子(つかごし さちこ) |
本社所在地 | 〒377-0102 群馬県渋川市伊香保町 伊香保175-1 |
従業員数 | 60名 |
事業内容 | 宿泊宿経営 |