Q.選択理論をマネジメントに使うと、甘えを生んでしまうのではないですか?
A.選択理論は甘えを生む考え方ではありません。
良い関係性を築き上げながら、高い基準を創り出せます。
信頼関係がなければチームは成り立たない
人を刺激によってコントロールしようとする、外的コントロールは短期的には確かに効果的に見えることがありますが、長期的な視点に立つと百害あって一利なしです。これを私はアチーブメントを創業して以来、ずっと伝え続けてきました。なぜそこまで言うのかと言うと、上司と部下の信頼関係を壊すだけでなく、企業の長期的な繁栄のために最も大切な「サービスの質」を落とすからです。
質の高い仕事を追求して、お客様に貢献していくことが企業のミッションであると言っても過言ではありませんが、外的コントロールを使ってしまうと、部下は上司に対して「恐れ」を抱きます。「この人は私の味方だ」という信頼の上に成り立っていた関係が崩れていき、いつの間にか「どうしたら怒られずに済むのだろうか」という考え方を持ってしまいます。つまり、顧客満足ではなく上司の顔色を見るようになり、仕事の質は二の次になってしまうのです。そうなってしまうと、上司と部下の間には常に、疑いや恐れ、不信不満といった感情がはびこり、お互いに協力しあっていこうという信頼関係が全くもって失われてしまうのです。組織に属する人たちがお互いにない強みを差し出し合って、お互いの弱みを無意味なものにできるという、チームの最大のメリットが失われてしまうのです。部下を大切にしないがために、部下の心を掴むことが出来ず、どんどん人が離れていくことでしょう。より良い環境が見つかる優秀な人ほど早く去っていき、結果的に組織として衰退していってしまうのです。
責任を本人が持つと「甘え」を排除できる
だからこそ、外的コントロールではなく、選択理論を元にしたマネジメントが、効果を発揮します。学んで間もない方にとってみると、外的コントロールをやめるというのは、部下を甘やかしてしまうというように感じることもあります。しかし、本来は真逆です。
「甘え」とは、人間関係が表面的な場合に起こるものです。お互いが何を求めているのか深く理解していないために、お互いが嫌われないようにと、当たり障りのないコミュニケーションを取ります。やるべきことをやってもらおうと深く踏み込むことに、遠慮が生まれているのです。関係性が表面的なのです。
選択理論は全くそうではありません。選択理論で言われていることは、人は自らの願望に動機づけられており、願望と現状を比較したときに発生するギャップを埋めようと行動をするということです。つまりマネジメントとは、部下の願望に焦点を当て、その願望を深く知ること・明確化する支援を行うことから始まります。そして、願望を叶えるために目の前の仕事はどのような意味を持つかをともに考え、果たすべき基準を示していきます。部下から見たときに、手にしたい願望と現状、そしてギャップと取るべき行動が明確にわかっている状態を創り出してあげることです。上司が明確な基準を示したり、指導したりすることは、明確な願望を持つ部下からすれば願望実現のサポートになります。これが主体的な組織文化の原点なのです。
「甘え」を許してしまう上司は、極端な話、部下の願望実現に対してこだわりがない人です。部下がどうしても手にしたいと思い描く願望を知れば知るほど、甘やかすことはなくなるはずなのです。
掲げる理想や基準を毎週の会議で伝え続けている
正しいフォームを学び、実践する
とは言っても、外的コントロールしか知らなかった人がいきなり選択理論を実践できるかと言うと、そう簡単ではありません。しかし、そうしたいと強く願い、トレーニングを積むことで、必ず実現できます。スポーツに例えれば、悪い癖が染み付いてしまっている状態から、正しいフォームを定着させるには、良いコーチのもとで正しい練習をし続けるのが最短ルートでしょう。マネジメントでも同じです。良いコーチにつき、正しい方法でトレーニングをしてください。
今回の特集では、選択理論を深く学ばれ、実績を作り続けている『頂点への道』講座のご受講生と、私のパートナーである佐藤英郎と、弊社を代表する二人のマネジャーが選択理論的マネジメントのノウハウ・ドゥハウをお伝えします。是非参考に御覧ください。
アチーブメントグル―プ 最高経営責任者(CEO) 青木 仁志
北海道函館市生まれ。若くしてプロセールスの世界に足を踏み入れ、当時142カ国に支社を持つ国内人財開発コンサルティング企業に入社。徹底して能力開発を行い、トップセールス、トップマネジャーを経験。29歳で能力開発コンサルティング会社にスカウトされ、3年間でマネジャーから取締役営業統括本部長に昇進。この間売り上げを3年間で約7倍にする実績を残す。1987年にアチーブメント株式会社を設立。これまでに延べ43万名の研修実績を持つ、人材育成トレーナーとして活動をする。
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