利益を追うのではなく、企業理念を追求し「理念経営」を実践している企業は世界に数多くあります。例えば、「コーヒーを売るのではなく、自宅や職場でもないサードプレイスという体験を提供する」ことを大切にしているスターバックスコーヒージャパン。全国に2,000店舗以上が展開され、多くのファンに愛されています。スターバックスでは従業員を「パートナー」と呼び、アルバイトを含む全員に研修や福利厚生を充実させています。社員が大切にされるからこそ、顧客に対しても「質の高い接客=理念の体現」を実現している企業として有名です。
このように、理念経営をし、高いパフォーマンスを上げている企業は多くあります。また、2020年に発表されたギャラップ社の「Q12メタ分析」第10版レポート(※)では、「職場で自分が何を期待されているか知っている」「会社の使命や目的が、自分の仕事は重要だと思わせてくれる」などの12の質問をとおして、単なる「社員の満足度」ではなく「エンゲージメント(没頭度・愛着心)がいかに企業の財務指標を動かすか」が科学的に証明されています。
※Gallup「Q12 Meta-Analysis」第10版レポート参照
「上位25%」と「下位25%」の圧倒的な格差
従業員のエンゲージメント上位25%の企業と下位25%の企業は同じ業界であっても「組織の質(水質)」によって以下の差が出るということが明らかになりました。
| 指標 | 従業員のエンゲージメント上位25%の企業 |
| 収益性 | 23%向上 |
| 生産性 | 18%向上 |
| 離職率 | 18~43%低下 |
| 顧客評価 | 10%向上 |
| 事故・欠勤 | 60~80%削減 |
「人の成長」と「企業の利益」は完全に一致する
Q12の質問には、「自分の成長を気にかけてくれる人がいるか」「仕事を通じて学ぶ機会があるか」といった項目があります。分析結果では、社員が「自分は大切にされている」「成長できている」と実感することと、収益性(23%増)が直結していることを示しています。「従業員を大切にすること」はコストではなく、企業の成長を加速させる最大の原動力と言えます。
エンゲージメントは「景気」に左右されない競争優位性
また、好景気のときはどの企業も売上が伸びますが、不況になると一気に業績が崩れる企業が続出します。しかし、エンゲージメントの高い組織は、顧客との絆(顧客エンゲージメント)も強いため、売上の落ち込みが緩やかで、回復が早いことがデータで示されています。
ギャラップ社の分析結果から、企業理念と企業の存在意義を明確にし社員に浸透させることは、社員の働きがい、やりがいに繋がり、結果成果が上がり組織が繁栄することと言えるのではないでしょうか。
ここからは、理念を組織に浸透させる取り組みについて、従来のやり方から理念経営にシフトした2社の変革の軌跡をご紹介します。具体的な理念浸透への取り組みや変化について、経営者と幹部の方より伺いました。