記念対談 普遍の成功原則 「成功哲学」が 人生を拓く

アチーブメント株式会社は、2024年5月3日にナポレオン・ヒル財団との日本における独占パートナー契約を締結した。ナポレオン・ヒル博士が1937年に発刊した著書『Think And Grow Rich』は、世界で累計1億部以上販売され、あらゆる自己啓発の源流とも言われる名著だ。そこに記された成功哲学から多大な影響を受けてきたワタミグループの渡邉会長と、アチーブメント社の青木代表に、改めて成功哲学の価値について語り合っていただいた。

渡邉美樹 Miki Watanabe
1959年生まれ。小学校5年生で会社を清算する父の姿を見て、「将来社長になる」と決意。1984年ワタミを創業。2000年東証一部上場。「地球上で一番たくさんのありがとうを集めるグループになろう」という理念のもと、外食・介護・宅食・農業・環境など、人が差別化となる独自の「6次産業モデル」を構築。「学校法人郁文館夢学園」理事長、「公益財団法人School Aid Japan」代表理事として途上国の学校建設等にも従事している。

成功のためのエッセンスがすべて記された名著

青木 当社は人材教育コンサルティング企業として、これまで日本国内で49万名以上の方にサービス提供をしてきました。そうしたサービスの根本にある理論体系は、私が23歳のときに出合った書籍『Think And Grow Rich』に、多大な影響を受けています。ナポレオン・ヒル博士について造詣が深い渡邉会長と、本日は成功哲学についてじっくりお話ししたいと思っています。

渡邉 よろしくお願いします。ナポレオン・ヒル博士の書籍と出合ったのは、私の場合高校2年生の頃でした。たまたま書店で書籍を見つけて読み、「思いは実現する。願望はとても大事だ」ということを知りました。でもそれ以降ナポレオン・ヒル博士にのめり込むことはなく、正直いって長いこと忘れていたんです。その後、事業が成長して当社への注目が高まり、様々なインタビューや講演で話をした折に、「ナポレオン・ヒルについて学びましたか?」という指摘を度々受けるようになりました。私が夢を実現させるために知恵を絞り、信念に従って実践してきたことが、結果としてナポレオン・ヒル博士の成功哲学に則っていたようなのです。その後、彼の書籍のほとんどを改めて読み、私が事業を行なううえで大切にしてきたことが、そこにすべて書かれていることに気づいて驚きました。

青木 経営者としての資質を豊かに有し、目標達成のための推進力も並外れて強い渡邉会長は、自身の実体験や人生観に照らし合わせて、成功哲学を自ら確立していたのだと思います。後になってナポレオン・ヒル博士の書籍を改めて読み直した際に、ご自身のビジネス手法の正しさを、裏付けできたという気持ちになったのではないでしょうか。

渡邉 裏付けを得たという感覚は、まさにその通りだったように思います。17歳の頃に初めて読んだ書籍から、自身の成功哲学を構築する〝種〟を得て、それを無意識のうちに育んでいたのかもしれません。その後、縁あってナポレオン・ヒル博士の著書を2冊監訳しましたが、彼の考え方には心から共鳴・共感しています。

青木 私が『Think And Grow Rich』を読んだのは、若くして独立した後につまずき、借金を抱えてどん底にいた時期でした。しかしその読書体験が、人生のターニングポイントになりました。以降、同書にすがるようにして毎日読み、内容を血肉にしながら働き、目標達成の技術を体得しました。そこで得た自分なりの気づきや知見がなければ、今日のアチーブメントはなかったかもしれません。それから45年を経たいま、ナポレオン・ヒル財団と独占パートナー契約を締結し、様々なプログラムや著作を活用できるようになりました。長年の大願が叶ったという思いです。

渡邉 まさに「思考は現実化する」ですね。成功哲学に対する青木社長の燃えるような思いがあったからこそ、成し得たことだと思います。

願望を黄金律に則って実現それが成功哲学の要諦

青木 多岐にわたる事業を展開されている渡邉会長は、これまで多くのフランチャイズオーナーや、外食業界経営者の方と交流されてきたと思います。そうしたご経験から、成功する人と成功しない人の違いは何だと思われますか。

渡邉 成功者は自分を俯瞰し、つねに客観視できる人物であるということ。なおかつ、自身の品性を高めることに価値を置いている人だと思います。書籍『成功哲学』のなかには、こんなエピソードがあります。ナポレオン・ヒル博士がある書店に行ったところ、店側の過失によってスーツの袖が破れてしまいました。それを店長に伝えると、保険会社を通じて弁償してくれることになり、40ドルを支払ってくれたんですね。後日スーツを仕立屋にもっていくと修繕費は2ドルで、38ドルが手元に残りました。彼は良心と相談した結果、修繕にとられた手間や後々に生じる不具合などを考慮して賠償額の半分のみ受け取ることにし、残りの20ドルを返金すると申し出たのです。普通ならもらっておけば……と思いますが、彼としてはそれでは納得できません。人は自分自身が考えることの影響から逃れられることはできない。些細なことが自らの品性を落とし、成功から遠ざけると考えたのです。

青木 自分の行動をつねに俯瞰する視点がありますね。そして目先の損得にとらわれず、品位を高めようという自身の価値観=原理原則に、適った意思決定をしています。

渡邉 はい。それこそが、成功する人と成功しない人の違いだと思います。私が思う成功者は、いわゆる「お金持ち」や「権力者」ではありません。いくら経済的に豊かになろうが、権力を得ようが、品性がない人は決して成功者とは呼べないと考えています。

青木 同感です。「成功は成長の果実」。富そのものではなく、まず人としての成長を目指すことが大切ですね。経済的な豊かさは、成長に応じた収穫として得られるものです。

渡邉 ナポレオン・ヒル博士が長年にわたって多くの人に支持され続けているのは、単に「こうすれば成功する」という方法論を述べるのではなく、人生の真理を説いているからだと思っています。

青木 はい。その要諦ともいえるものが黄金律ですね。「自分がしてほしいと思うことを、まず他人にする」。これが成功の大原則です。ナポレオン・ヒル博士は「思考は現実化する」といい、願望を明確化することの重要性を説きました。願望や欲を鮮明にイメージし、それを黄金律に則って実現していくことが、成功につながるということですね。

渡邉 はい。いくら美味しいものでも、自分だけ食べていたら心は満たされません。大切な人と分かち合って食べ、皆で笑顔になるから、幸せな気持ちがよりいっそう高まるのです。ワタミグループではどの事業でも、黄金律を根底に据えています。たとえば当社が介護事業に参入した際には、自分の父母が利用するならどんな施設が良いだろうと熟考し、「おむつは着けない」「車椅子には極力乗せない」「機械浴はしない」など、当時の介護業界では非常識といわれるケア方法を導入しました。詳しい説明は省きますが、どれも利用者様の健康と快適性を考えてのことです。例えば車椅子を使って介護をすると、職員の作業効率は各段と上がります。しかし安易に使用し過ぎると利用者の体力が落ちたり、健康状態が悪化したりということになりかねません。当時は「きれいごとを言っていたら儲からない」という非難も度々受けましたが、そういう問題じゃないと。自分の親にしてあげたい介護をやって潰れるのなら、それで仕方がないと考え、覚悟をもって事業を推し進めました。そうした当社の介護は人気が出て、その後、当社のモデルを導入する企業が続出しました。

青木 業界の新たなモデルをつくったということですね。素晴らしい。「成功して富を得るということは、価値を社会に創造していくことである」とナポレオン・ヒル博士は言っています。つまり多くの人が求める物やサービスを、創出する能力をもつ人が豊かになるということです。ヘンリー・フォードはT型フォードの生産によって大量生産技術を発展させ、世界の人々の望みを叶えることで、世界有数の富豪になりました。「多くの人の望みを叶える」ということは、成哲学の大切なポイントですね。

渡邉 はい。ナポレオン・ヒル博士は「人生における唯一の真の成功とは、人類にどれだけ貢献したかで判断される」とも言っていますね。そして、それを理解していない人が多いと嘆いています。私は6年ほど政界に身を置きましたが、政治家は法と税制で世の中を変革できるということを実感しました。それに対して経営者はどうやって世の中を良くできるのかというと、新たなビジネスモデルを創出することで、人々に貢献できるのだと思っています。多くの人から求められているけど、いまはまだない物やサービスを生み出すことで、私たちは社会を変革できます。

良質な情報と出合いと学びは、経営者の責任

青木 以前、渡邉会長の経営者としての器の大きさを、痛感したことがありました。新型コロナの感染拡大が激しく、飲食業をはじめ多くの業界が苦境にあえいでいた頃のことです。ゴルフをご一緒していたときに、「毎日、寝て起きたら5千万円のマイナスですよ」と言われていました。そうした逆境に直面しながらも、渡邉会長に悲壮感は微塵もなく、眼は前を向き、力強く輝いていたことが印象的でした。業界を牽引するリーダーは、やはり肚が座っているものだと感じ入りました。

渡邉 あの頃の外食産業はどうにも立ち行かない状況で、当社はほぼ3日に1店舗というペースで店をクローズしていました。2年半で約300店舗閉店し、国外の事業についても一部撤退しました。ですが、閉店した店舗はまた出せばいい。いや必ず出店できると信じていました。

青木 本当にたいへんな時期でしたが、そんななかでも渡邉会長は「すべての外食産業がなくなっても、当社は必ず残る」と、意気揚々と語られていましたね。ナポレオン・ヒル博士は、成功者に共通する主な資質は「自信」だと言っていますが、そのとおりだと思います。

渡邉 しかしその自信には、根拠がなくてはなりません。そしてそう在るためには、学ぶことが肝要です。先ほど成功者に必要なことは、自分を俯瞰して見られることと、品性を高めることだと言いましたが、それらの資質があったとしても、勉強しない人は失敗します。特に変化の激しい時代にあっては、必死に勉強し、貪欲に情報を得ようとしなければ、経営者として生き残ることは難しい。経営というのは〝変化対応業〟です。消費者のニーズや価値観の変化、テクノロジーの進展など、あらゆる社会環境の変化に合わせて様々な手を打たなければなりま
せん。仮に100の勉強をすれば、その時々の変化に合わせて100の戦い方を選べるようになります。何も学ばない人との差は歴然としています。

青木 同感です。学ぶことは誰にとっても重要ですが、人と組織を牽引する経営者こそ、特に学び続ける必要がありますね。そして良質の情報と出合うことが大事です。そうした出合いが人生を根本から変えることもあります。私は3冊の本によって人生が大きく変わりました。1冊は『Think And Grow Rich』、2冊目は聖書、そして3冊目は『選択理論』です。『Think And Grow Rich』と『選択理論』は、アチーブメント社のサービスの、土台となっています。

渡邉 聖書については同じですね。私は中学生の頃に聖書と出合い、人格形成に大きな影響を受けました。選択理論について私は詳しく知らないのですが、どのような理論なのでしょうか。

青木 世界的な精神科医であるウイリアム・グラッサー博士の理論なのですが、シンプルに言うと「過去と他人は変えられない、未来と自分は変えられる」ということを説いています。過去や環境に振り回されることなく、人生は自分の望む方向に進むよう選択できると、彼は論じているのです。

渡邉 それは驚きました。実は「過去と他人は変えられない、未来と自分は変えられる」というのは私の口癖です。日頃から社員や、私が会長兼校長を務める学校の生徒らに、ことあるごとに伝えています。どんな親だったかとか、どのような環境で育ったかということは、決して変えられない。それは前提だから前部受け入れなさいと。しかしこれからの未来は、すべて自分がコントロールしてつくるのだと、常々周囲の人に言っています。

青木 コップに半分の水が入っているときに、「半分しかない」と思うか、「半分もある」と思うのか。半分あるというのは事実ですが、「しかない」「もある」は解釈。〝事実は一つ、解釈は無数〟ですね。ものごとの捉え方を前向きにコントロールする技術も、選択理論で学びます。

渡邉 成功哲学と選択理論が土台になっているというのは、素晴らしい教育プログラムですね。アチーブメント社の講座が多くの人に選ばれ、リピーターが多い理由もよくわかります。

青木 当社のサービスを通して、この日本をもっと元気にする人材を、今後もさらに育成していきたいと思います。本日はありがとうございました。