恩返しボランティアが社員の職業観を高め、業界のトップ企業に成長

株式会社ミヤケン 代表取締役 宮嶋祐介

塗装業界にて異例の年商13億を記録し、群馬県内施工数で一位の実績を持つ株式会社ミヤケン。ボランティア塗装団体「塗魂ペインターズ」の中心としても活躍し、業界から注目を集めている。逆説的だが、ボランティア活動を行うことで実績が伸びたと語る代表の宮嶋氏。一体それはなぜなのか、お話を伺いました。

高単価を手放して気がついた塗装の本当の価値

株式会社ミヤケンを立ち上げたのは22歳のときでした。
自営業を営む両親の背中を見て育ったこともあり、夢を持って創業しましたが、初めは会社を維持するのに必死でした。
社会にどう貢献するのかなど考える余裕はなく、少しでも単価の大きい案件を取ろうと、ゼネコンからの二次下請けで、1件500万円前後のマンションやビルの塗装を中心に行っていました。

当時よく仕事をもらっていた元請けの会社があり、私としては、若くて経験も浅い私たちに仕事を発注してくれる恩人のような存在だと思って尽くしていました。
しかし、蓋を開けてみたら、当初受注した金額の半分の代金を支払ってくれません。下請けであるのをいいことに、それを身代金のようにして、言い値で仕事を依頼してきたのです。

こちらとしては、社員に払う給料がかかっているので、仕事を断るわけにもいかず、借金だけが増えていきました。
職人たちに誇りを持って働いてほしいのに、現場は疲弊する社員たち。
理想とは遠くかけ離れていました。そのような状況が続き堪えきれずに意見したところ、捨てられるように縁を切られたのです。

その後、必死に仕事を探し回りました。そんななか、知り合いから一軒家の住宅塗装の仕事を勧められました。
1件数十万円の安い仕事か、と嫌々ながら受けたことが、私の職業人生を大きく変えました。
ゼネコンの二次下請けは、直接住宅に住まれるお客様と接することがありませんでしたが、住宅塗装は直接家主に納品することが多く、お客様から生の喜びの声を数多く聞くことができました。

「いい仕事をしてくれてありがとう」「思い出の家がきれいになってうれしいよ」と。
時には涙をしながら感謝していただくこともあり、そんな体験を通して、自分たちの仕事はお客様の役に立っているんだという確信が生まれていきました。

「早く安くやれ」と言われていたところから、感謝されるように変わり、この仕事にはこんなにも価値があるのかと、大きな自信を与えてくれました。

そんな仕事を繰り返すうちに段々と社内に根付いていったのは、「私たちは地域のお客様に支えられている」という考えでした。

私たちは「幸せ大家族」という考えを大切にしています。
社員は家族だ、そう思っていましたが、喜びの声を聞けば聞くほど、地域の皆さんもその家族の一員だと思えていったのです。
この地で生まれ育った社員も多く、恩返ししたいという思いが湧き上がっていったのです。

実は、私は幼少期を「愛されてこなかった」という劣等感を抱え、常に寂しさを感じながら育ってきました。
塗装業界にはそんな複雑な生い立ちの人がたくさんいます。
人一倍その辛さが分かる分、彼らにとっての心の拠りどころと言える第二の家族でありたいと思って経営をしてきました。
地域ともそんな温かい関係を築ければ理想に近づくと確信したのです。

ボランティア活動が社員の成長と職業観を育む

最初に取り組んだのは、私が卒業をした保育園の遊具の塗装でした。
子どもたちを交えて一緒に塗装をするというボランティアをやりました。そこで喜ぶ子どもたちや先生たちの姿をみて、「この仕事は人に恩返しができるんだ」と確信したのです。
以降、地元の公民館や施設に出向いてボランティアをすることから徐々に取り組みが広がっていきました。

ボランティアに取り組めるのは、経済的な余裕があるからと言われることがありますが、私はむしろ逆だと思っています。
ボランティアを通して、社員たちは仕事への確信を深め、「何のために頑張るのか?」という仕事への意味付け意義付けが毎回磨かれます。
それが何より、働くモチベーションを高めてくれるのです。

いまは、自分たちの技術を通して困っている人を助け、感動を届けたいという企業が175社集まった「塗魂ペインターズ」というボランティア団体の会長も務めております。
志高い仲間で切磋琢磨しあえることはもちろんですが、規模が大きければ、世の中に与えられるインパクトも大きくなります。

これまで100以上のボランティア活動を行ってきましたが、その一つひとつにストーリーがあり、感動をして喜んでくれる方がいます。
そこに触れる度に、もっともっと頑張ろう、もっともっと社会に貢献できる自分たちに成長しようというモチベーションが湧いてくるのです。

地域ボランティアに一貫して取り組み続けてきた
地域ボランティアに一貫して取り組み続けてきた

「与える心」を育む訓練こそ一番の社員教育である

他人とのコミュニケーションのなかで、人はつい、「何をしてもらえるのか?」ということを考えがちです。

しかし、ボランティア活動はまったく逆です。「自分は何を差し出すのか?」という、与えることを考えるのが大前提です。
そして、心から納得して「与える」という行動をとった人が、結果として言葉に表せないほどの精神的な喜びを手に入れられるのです。

アチーブメント社の『頂点への道』講座を受けて改めて実感をしたことですが、成功者は例外なくみな「与える心」を持っています。
他人の喜びを作り出せる人こそが、周りから応援され支援を貰える人格特性を持つからです。

逆に言えば、「与える心」を育むことができたら、自然と成功に近づいていくとも言えます。
ボランティア活動は、社員にこの「与える心」を訓練する最高の機会であると私は思います。
相手の立場に立って、どうしたら喜んでもらえるのかを考える習慣が身につけば、営業活動でも、施工現場でもきっとお客様に好かれるでしょう。

おかげさまで、ミヤケンは業界では異例とされる年間売上10億円企業の大台を超えました。ボランティア活動に取り組む前は年商わずか数千万円だったところから、昨期は13億円まで来ました。

これからも「幸せ大家族」を実現する一つの指標として、売上30億円を社員とともに目指し、更に研鑽を積んでまいります。

 

取り組み
地域の幼稚園や学校、施設などに出向き、ボランティアで塗装施工を行った。
成果
直接的に感謝の言葉をもらう機会が増え、社員の職業観が上がっていった。
■「与える心」のトレーニングができた。
■業界では異例の年間売上13億円を達成。30億円企業を目指して今期は15億円を達成。