なぜ、今『ファン化戦略』が注目されるのか?

「推し活」「クラウドファンディング」「オンラインサロン」、ファンをつくり、ファンとともに繁栄しようとする活動は、タレントや個人事業主だけのものではなく企業にとっても身近なものになってきました。日常的な商品・サービスの普及率は9割超え。機能面で差がみられない商品・サービスが溢れるなかで、顧客が求めているのは、何なのでしょうか。Business to Fan戦略の源にあるものに迫ります。

『推し活』に読む Business to “Fan”戦略の力

2021年、「推し活」という言葉が流行語大賞にノミネートされ、自分の〝イチオシ〟の存在やものを力強く応援し、周囲に広めるという行為が、市民権をもちはじめました。推定6000億以上にものぼると言われる、日本の推し活市場。アイドルやアニメなどのサブカルチャーだけに適用されると思われていた消費行動は、今やその枠を超えて、食品やアパレルはもちろん、さまざまな商品・サービスへと広がっています。
例えば、「たべっ子どうぶつ」で有名なお菓子メーカーのギンビスは、2019年に3Dカプセルトイを開発。キャラクターが若者に愛され、キャラクターグッズの製造・販売やアプリゲームの開発まで手がけることに。結果、2020年から2022年にかけて売上180%増を創り出しました。
また、オンラインサロンやクラウドファンディングといった、顧客が「Customer(顧客)」の枠を超えて、応援したり、ともに商品・サービスを創り出したり、プロセスを消費したりする動きも、企業や地方自治体へ広まっています。
「企業のメッセージに共感したユーザーが、商品を買って企業活動を消費によって応援するようになった」。これは近代マーケティングの父フィリップ・コトラーが、著書「マーケティング3.0(2010)」の中で述べた言葉です。まさに、「応援してくれるファンをもつこと」は、事業活動において大きな価値をつくりだしているのです。

ファンは一日にして成らず

「ファン」とは、その商品やサービス・ブランドを愛し、機能だけではなく意味によってその商品・サービスを選び続け、その「良さ」を広めてくれる存在です。
ファンをつくるということについて、興味深い研究があります。名古屋大学研究員の三浦慎司氏と中部大学創発学術院客員教授の川合伸幸氏の研究です。大学生25名を対象にアニメ「あしたのジョー」を視聴させ、腕の動きの研究するために協力してほしいと伝え、画面に向かってペンライトを振らせました。「応援している」という自覚がないままに腕を振るという行為をした大学生たちでしたが、なんと、ペンライトを振っていたときに活躍していたキャラクターたちを魅力的だと感じるようになったそうです。この研究は身体的な行為に根ざしたものですが、受け身でいるのではなく、自ら対象に働きかけることによって、より相手を好きになる、そう言えるかもしれません。
応援したり、誰かに広めたり、といった自発的な行動が熱量を高め、高まった熱量がさらに応援や周りへの普及につながる。このループを創り出している商品やサービス・ブランドが、時間をかけて「熱狂する顧客」である「ファン」を生んでいく。ファンをつくるための必殺技があるのではなく、応援され続けるための小さなアクションを積み重ねた結果、ファンをつくることができるのかもしれません。

『熱狂』を『紹介』につなげ、繁栄するBtoF戦略とは

今回のクラブニュースでは、実際に商品やサービス、ブランドや企業の周りに「ファン」をつくり、ファンの熱狂を紹介につなげ、繁栄している企業を4社ご紹介します。4社の事例から、BtoBでもBtoCでもない、BtoF戦略を実行する企業に共通する原則を紐解いていきましょう。