[解説]社員の自己実現の舞台を追求した先に働きがいのある組織は生まれる

ここまで3社の事例をもとに、働きがいのある組織づくりについて紐解いてきました。ここからは、多様性の時代にどのように向き合うのか、自社の強みを活かした組織づくりのポイントについて、アチーブメント代表取締役会長 兼 社長青木仁志より解説いたします。

アチーブメント株式会社 代表取締役会長 兼 社長
アチーブメントグループ CEO
青木 仁志

北海道函館市生まれ。若くしてプロセールスの世界で腕を磨き、トップセールス、トップマネジャーとして数々の賞を受賞。1987年にアチーブメント株式会社を設立以来、延べ48万名以上の人財育成と、7,000名を超える中小企業経営者教育に従事。自ら講師を務めた公開講座『頂点への道』講座スタンダードコースは28年間で毎月連続700回開催達成。2023年1月より東京商工会議所における教育・人材育成委員会の副委員長、中小企業委員会の委員、イノベーション・スタートアップ委員会の委員を務め、同年10月より了德寺大学教養部客員教授、ハリウッド大学院大学ビューティービジネス研究科 客員教授、12月より事業創造大学院大学 客員教授としても活動。著書は、40万部のベストセラーとなった「一生折れない自信のつくり方」シリーズをはじめ『経営者は人生理念づくりからはじめなさい』など累計67冊。

1 多様性の時代でも変わらない「人が求めるもの」とは?

人々の働くことに対する価値観は時代の変化とともに移り変わってきました。私が社会に出た頃は、朝から晩まで働く長時間労働が当たり前でした。より成果を出したいと思えば、他人が休んでいる時間にも働き、時間の長さで勝つんだと考えていました。しかし、今はより短い時間の中で生産性高く成果をあげられるかを重視する人が増えています。価値観は時代ごとに変化していきますし、人によって千差万別の考えがあります。どこにも正解はないのです。しかし、このような多様性の時代でも、一つだけ変わらないものがあります。それは、「人はいつの時代も自己実現を求めている」ということです。ここでの自己実現は言葉の通り、自分自身の求めるもの、物心共に自分が理想とするイメージを手に入れるという意味です。自己実現のために仕事をしたり趣味・教養を磨いたりします。私は、36年間経営者として会社を発展させ、社員を守ろうとするなかで、社員一人ひとりが、自身の求める人生を実現する支援をすることを第一に考え経営をしてきました。社員の自己実現の舞台づくりこそが経営者の務めなのです。

2 「未来への期待」が若者を惹きつける

しかし、社員はそれぞれ異なる価値観をもっているので、自己実現は十人十色です。自己実現の支援をするというのは、その一人ひとりが求めるものを安直に与えることではありません。自己実現の舞台をつくる上で重要なのは、未来の目指す方向性を明確に提示することです。今、目の前の条件や仕組みなどを一人ひとりに合わせることも大切ではありますが、それ以上に、自社の未来が重要です。目指すのはどこか、どのような成長をしていくのかをしっかりと指し示すこと。その未来への期待や共感、そしてここからともに創り出す喜びを味わいながら歩んでいこうと心に決めてもらえることが何よりのカギになるのです。そこに集まる若者こそが、主体性をもって働き、そして自己実現を果たせるのです。この未来像を明確に語るためには、当然、自社の存在理由、企業理念が重要です。どのような価値を社会に提供する会社なのか、ビジョンは何なのか。その企業理念から一貫して設計された自己実現の舞台を提示し、その実現を本気で目指すことで若者から選ばれる組織づくりができます。

3 理念から一貫した経営のデザインが働きがいのある組織を創り出す

ここまでお伝えしてきた若者に選ばれる働きがいのある組織づくりのポイントをまとめると、4つのステップに整理することができます。

[1] 経営のデザインを明確にする
[2] 自社の強みや働きがいとは何かを明確にする
[3] 組織づくりや仕組みの整備をする
[4] (1)~(3)を若者市場に打ち出す

アチーブメントも37期目を迎え、毎年増収増益の企業体へと成長してきましたが、創業当初は、社員は中途採用のみでした。しかし、2004年に新卒採用を開始。当時は営業教育の会社だったので、「成長できる環境!」という打ち出しでした。今のように「教育の力で世界を変える」というようなコーポレートスローガンを打ち出せませんでした。その後も、採用戦略を試行錯誤し、新卒採用社員が育ち、社内の育成の仕組みや労働環境の改善を積み重ね、やっと100億円企業という次のステージが見えてきているのです。当時の社員たちは、きっと今の組織の姿は想像できていなかったでしょう。しかし、確実に私の思考の中に設計図はありました。逆算と試行錯誤を重ねて今があります。一朝一夕で組織は理想の状態にはなりません。しかし、デザインを描き、実行していくことで、社員がイキイキと働く働きがいのある組織をつくることができます。これからも社員の自己実現の舞台をつくり、縁ある人々へ貢献できる企業体に成長していきます。