オリジナル生徒手帳を活用した「目的教育」を、高校教育の現場で本格導入

学校法人花巻学院理事長/花巻東高等学校校長 小田島 順造
アチーブメント株式会社 代表取締役会長 兼 社長 青木 仁志 

大谷翔平選手や菊池雄星選手らを輩出した岩手県の花巻東高等学校が、アチーブメント株式会社と連携して、人生を戦略的に生きるための特別カリキュラムを導入。『立志 夢実現』という同校の指針を体現するために、社会人人生まで見据えた目的教育をスタートさせた。教育界で注目されるこの取り組みに対する思いや、これからの人材教育などをテーマに、同校校長・小田島順造氏とアチーブメント株式会社青木仁志が対談を行った。

確かな人間教育をベースに文武両道の教育を実施

青木

御校の特別カリキュラムを始動するにあたって、当社にお声掛けいただき、誠にありがとうございました。今回の取り組みは、戦略的目標達成プログラムの高校教育の場での応用です。当社としても初の試みとなり、とても素晴らしい機会をいただいたと思っています。

御校がこうした取り組みを導入するにあたって、どのような思いがあったのかということを、まずはお聞かせください。

 

小田島

高校教育においては、自身の「志」や将来の「夢」を生徒に意識させることが重要であると考え、当校では19年前から『立志 夢実現』という指針を掲げてきました。高校卒業後の将来を見据えて夢をもってほしい。そして人生で何を成すべきかという志を見つけられるような高校生活を営んでほしいという思いが背景にあります。

そうした本校の教育方針を具現化するために、アチーブメント社の教育プログラムが極めて有効だと感じたことから導入を決めました。

 

青木
ありがとうございます。プログラム導入の背景には、そのような強い思いがあったのですね。
『立志 夢実現』というのは素晴らしい指針だと思います。夢は個人的な自己実現であり、明日に向かって歩む力の源泉になるものです。それに対して志は、人や社会のためという精神を含んでいます。「個」と「公」双方の思いを内包した素晴らしいキーワードですね。志はアチーブメントピラミッドの土台となる人生理念の部分、つまり「人生の目的」と同義語であるといえるでしょう。そこには「自分以外の誰かのため」という「愛」「利他」の要素が入ります。
私はこれまで2000人以上の経営者を見てきた結論として、長期的に繁栄する企業ほど、「愛」「利他」を含んだ理念経営を実践していると確信しています。御校の教育理念についてお話しいただけますか。

 

小田島

建学の精神である「感謝・報恩・奉仕・勤勉・進取」を重視した教育を行うことで、心豊かな情操をもち、礼儀を重んじる品格ある人材の育成を目指す。それが当校の教育理念です。

先に述べた建学の精神は、二宮尊徳の報徳思想にある「勤労・分度・推譲」を礎にしています。

 

青木
なるほど、二宮尊徳翁の報徳思想が、教育理念のベースになっているのですね。その「勤労・分度・推譲」について、ご説明いただけますか。

 

小田島
はい。大きな目標に向かって行動を起こす場合でも、小さなことを怠らずつつましく勤め、励まなければならないという教えが「勤労」です。
「分度」とは、適量・適度のこと。家計でも仕事でも、現状の自分がどう生き、どう行動すべきかを知るということが大切だとする教えです。
「推譲」とは、肉親・知己・郷土・国のため、あらゆる方向において譲る心を持つべきであるという考えです。分度をわきまえ、他者に譲る気持ちをもてば、周囲も自分も豊かになると二宮尊徳は説いています。この報徳思想を礎にした人間教育こそが、『立志 夢実現』の土台になります。

 

青木
御校が人間教育に対していかに力を注いでいるかということがよくわかりました。文武両道で際立った実績を挙げている花巻東高校の、教育の要諦ともいえるものですね。

 

小田島
ともすれば親御様は、「良い大学に進学し、安定的な企業に就職してほしい」という思いが先行しがちです。そうした気持ちは理解できますし、学力向上は高校教育の場において最重要項目の一つであることは間違いありません。
ですがその根幹には、確かな人間教育があるべきでしょう。堅固な土台なしにいくら立派な上物を建てても、脆弱な家にならざるを得ません。その土台にあたるものが人間教育であると、私たちは固く信じています。

 

青木
まったく同感です。以前、私は恩師からこういわれたことがあります。
「豊かな人生を目指すより、豊かな人間になりなさい。なぜなら豊かな人間こそが、豊かな人生を築き上げることができる」と。花巻東高等学校の生徒さんが社会に出て仕事に就き、就業体験を経るごとに、小田島先生がおっしゃっていることの意味を、ひしひしと理解できるようになるのではないでしょうか。

共同開発したオリジナル手帳を活用

理想の社会人生活から逆算をする様々なアプローチをもりこまれたプランナー

 

青木
「オリジナル生徒手帳を使った夢実現教育」をどのように進めているか、具体的にお話しいただけますか。
小田島

今年の4月に教員向けの研修を行い、その後、全校生徒700名に向けて講演を行って、今回の取り組みの意義やプログラム内容になどについて説明しました。

そのうえで学年ごとに手帳の使い方をレクチャー。4月下旬から毎朝10分間のプランニングタイムを設けて、人生の目的や、それを実現するための中長期的な目標の立案、日々の行動計画の立案などを行うというプログラムを始動させています。

 

青木
このオリジナル手帳はアチーブメントプランナーを基に、御校と当社が共同開発したものですね。
中長期の目標から逆算して、日々行うべきことを明確にし、思考と行動を習慣づけるためのツールです。帰納法的なアプローチによって、将来のビジョンや目標を描くための質問リストも付いています。人生の目的や夢について考える機会を早くもつということには、とても大きな意味があるといえるでしょう。早期から志や人生の目的を見つけて強く意識することで、日々の行動や判断基準が変わり、人生の質を高めることができます。そうしたことを高校時代から学ぶことは、生涯の財産になると思います。

 

小田島
学ぶ目的が見つかったときから、「本当の勉強」が始まる。私はそう考えています。
与えられる勉強ではなく、目的達成のために自らつかみ取ってゆく自発的な学習意欲を引き出すことが、教育者の本分であり、その実現に最大の喜びがあると感じます。

 

青木
おっしゃるとおりですね。
そのためにも、志や夢を明確化するために考え続けること。そして、目的達成のプロセスを見据えて行動し続ける習慣が大切になります。自分の目的を見つけ、そのために実力をつける必要があると理解できたとき、人は内的コントロールによって勉強や仕事に取り組むようになります。そうなったら、もはやその人の成長を止めることは誰にもできない。そういっても過言ではありません。
各クラスで担任の先生がカリキュラムの価値を伝えたホームルーム

 

小田島

現在、教育界は多様な課題を抱えています。視点の違いによって様々な考え方はあると思いますが、生徒に志や夢をもってもらう教育が、多くの課題を解決するうえで有効であろうと私たちは考えています。

19年前に『立志 夢実現』という指針を掲げた際、実は当校では独自のプログラムを企画・運営していました。全生徒が各教科の学期ごとの学習目標をシートに記入し、それに向けて日々アプローチしていくというものでしたが、私たちが思い描いた理想どおりにはいきませんでした。その際、教科指導の専門家である教員のみで、こうしたプログラムを進めることに限界を感じたというのが実状です。
そのような経験を踏まえて、今回は人材育成のプロフェッショナルのお力をお借りするという試みに踏み切りました。

 

青木
長年にわたる教育への思いを実現されるためにアチーブメント社を活用していただき、ありがたい限りです。
人生を切り拓いていく方程式は、「先天的特質×環境×本人の選択」であると、私は常々話しています。本人がもって生まれた資質と、生活している環境、そして本人の選択によって、歩む人生が決まってくるということです。そのうち環境については、高校生にしてみれば教師や親がもつ役割がとても大きい。本人の先天的な特質や志向などを鑑みたうえで、「将来どのような方向に進んでいきたいのか」ということを早めに考える機会を与え、サポートするための環境づくりが大切でしょう。

 

小田島
同感です。
そのためにも、日々生徒と接して指導していく教員の意識もさらに高める必要があると考えています。
幸いなことに、特に若い教員たちは今回のプログラムに対して、とても前向きに取り組んでいます。そうした気運をよりいっそう高めていきたいと考えています。
全校生徒向けの活用ガイダンス

次世代を担うリーダーの育成に期待

青木
2045年にはシンギュラリティの時代が訪れるといわれています。
シンギュラリティとは「特異点」のことです。詳細は割愛しますが、要は人工知能(AI)が人類の頭脳を上回る特異点が、2045年に到来するということです。
ある未来学者の予想では、「ホスピタリティ・マネジメント・クリエイティビティ」に属するもの以外の9割の職業が、人工知能に取って代わられるとされています。そして職を失った多くの人は、政府支給などによって最低限の生活が保障され、「賃金を目的とした、食べていくための労働」をしなくていい時代がくるというのです。そのような時代には、これまでとまったく異なる労働観が形成されることでしょう。今後到来する時代にはきっと、「貢献自体を目的とした、世のため人のために働く仕事」の重要性が増してくると、私は予測しています。
「勤労・分度・推譲」という報徳思想による人間教育をベースにして、社会や人のために貢献できる人材の育成に努めている御校の教育は、来るべき未来に向けてたいへん意義があるものだと思います。

 

小田島
技術の進歩は私たちの暮らしや仕事の在り方を、大きく変えることになるでしょう。
ですが、たとえどんな未来が訪れようと、人には大切にすべき不変の価値観があります。
たとえば、「思いやりをもって人と接しているか。倫理に則った生活をしているか。正義をもって生きているか。自身の義務を果たしているか」ということです。いかに時代が変わろうと、人としてのそうした基本を守って生きていく限り、必ず豊かな人格が形成されることでしょう。そのような教育を重視すべきだと私は考えます。人間教育を土台として、志や夢を抱けるような高校生活を過ごせるよう支援していくことが私たちの本懐です。

 

青木
大いに共感できるお話です。
今後、日本は少子高齢化がさらに進み、100年後には人口が4000万人台になるとも言われています。そのような難境の時代に必要なのは、優れたリーダーです。
御校の取り組みを通じて、次の世代を担うリーダーの育成を支援していきたいと、心から願っています。本日はありがとうございました。
対談では複数の教育関連メディアが取材に入った

カリキュラムの詳細やお問い合わせはこちらより受け付けております。
https://achievement.co.jp/news/press/hanamakihigashi/