橋本 小池市長、本日は貴重なお時間をいただき、誠にありがとうございます。2024年の市長選での見事なご当選、心より敬意を表します。いま、地方自治体は人口減少や財政難など、かつてない厳しい局面を迎えています。そのなかで、あえて火中の栗を拾うように市政のトップに立つ決断をされたことは、並大抵の覚悟ではなかったと推察いたします。そもそも、小池市長が政治家を志し、まちづくりに身を投じる原動力となったものは何だったのでしょうか。
小池 ありがとうございます。私が政治の世界を志した原点は、私自身が働きながら子育てをしていた14年前の経験に遡ります。当時はまだ子育て環境が十分に整っておらず、「子どもを一人育てるには3000万円かかる」とすら言われていました。このままでは、若い世代が将来に夢や希望を描けなくなってしまう。このまちの未来が先細りしてしまう。その強烈な危機感が、私の出発点です。しかし、市議会議員になる前の私は、どこか「誰かがこの市を良くしてくれるだろう」「政治がなんとかしてくれるはずだ」と、環境や他人に依存している部分がありました。
橋本 多くの人が陥りがちな、自分と社会の課題を切り離してしまう感覚ですね。そこから、どのようにして市長という重責を自ら担うほどの「強烈な当事者意識」を持つに至ったのでしょうか。
小池 決定的な転機となったのは、市議会議員時代にアチーブメントの『頂点への道』講座を受講したことです。そこで「選択理論心理学」を学び、「自分の人生のハンドルは、他でもない自分自身が握っているのだ」という考え方に、雷に打たれたような衝撃を受けました。そして、「縁ある人を幸せにする」という概念に触れたとき、私のなかで眠っていた当事者意識に火がついたのです。
橋本 学びを通して、ご自身の理想が鮮明になり、リーダーとしての存在意義が明確になったのですね。
小池 はい。「子どもたちが夢や希望を描ける社会をつくる」。これが私の絶対に譲れない願望であり、人生の目的です。そのためには、私たち大人が、どんな困難な状況にあっても自ら考え、行動し、希望を持って生き抜く姿を見せなければなりません。いま碧南市が抱える厳しい課題から逃げず、私自身が先頭に立ってこのまちの未来をつくる。「碧南市から日本を変える」という覚悟が決まったからこそ、市長という大役に挑戦することができました。
橋本 市長に就任されてから直面したのが、市の深刻な財政危機でした。2025年9月には「財政非常事態宣言」を発出されるという、市民や職員にとっても痛みを伴う重い決断をされました。
小池 ええ。碧南市はこれまで、企業立地による豊かな財政力を背景に、市民負担を極力抑えた質の高いサービスを提供してきました。しかし、長年かけて建設した多くの公共施設の維持管理費が多額にのぼり、そこに近年の物価高騰や人件費上昇が重なりました。このまま何も手を打たなければ、2028年度には市の貯金である財政調整基金が底をつくという、危機的な予測が出たのです。
橋本 企業経営で言えば、まさに倒産の危機に瀕している状態ですね。この局面を乗り切るためには、市役所という巨大な組織の徹底的な経費削減と、500名近い職員の抜本的な意識改革が不可欠になります。通常のマネジメントであれば、トップダウンで「あれを削れ、この事業はやめろ」と強烈な指示命令を下しがちですが、小池市長は全く異なるアプローチを取られました。
小池 おっしゃる通り、市長の権限を使えば、トップダウンの「外的コントロール」で強制的に経費削減を命じることもできました。しかし、それでは人は絶対に心からは動きません。「上から言われたから嫌々削る」という指示待ちの組織になり、結果的に言い訳や責任転嫁が蔓延し、組織の活力が死んでしまいます。私が選んだのは、職員に対し「私の弱さを全て開示し、助けを求めること」でした。
橋本 弱さの開示、ですか。具体的にはどのようにされたのでしょうか。
橋本 素晴らしいですね。「やり方」を強制するのではなく、現状の事実を共有し、リーダーが自ら「助けてほしい」と頭を下げる。自分のプライドや権力を捨て、職員を「ともにまちを経営するパートナー」として捉え、関わっていかれたのですね。
橋本 しかし、行政という立場上、痛みを伴う改革には必ず厳しい反対意見が伴います。サービスの低下や予算削減に対して、議会や市民からご不満の声を上げる方もいらっしゃったはずです。激しい批判や対立の構造が生まれかねないなかで、小池市長はどのように向き合われたのでしょうか。
小池 改革を進めるうえで、私が最もエネルギーを注いだのが、この「反対意見を持つ方々との対話」です。以前の私であれば、自分を否定されたと感じて感情的に反発し、論破しようとしたり、関係を壊してしまっていたかもしれません。しかし、選択理論を学んだいまは、「相手の意見と私の意見が違うだけであり、相手の人間性を否定するものではない」と、事象と感情を切り離して考えられるようになりました。
橋本 自分を正当化したい、相手を打ち負かしたいという人間なら誰しもが持つ自己防衛の考えを手放されたのですね。
小池 はい。わざわざ時間を割いて、反対意見を言いに来てくださる方は、それだけ「このまちを良くしたい」「自分の生活をより良くしたい」という強い情熱を持っている方です。ただ、頭のなかに描いている理想のまちの絵が、私の描く絵と少し違うだけなのです。ですから、私は決して反論せず、「なぜそのように考えられるのか」「何に一番お困りなのか」を、とにかく深く聴かせていただくようにしました。
橋本 説得ではなく、まずは相手の願望を理解しようと「傾聴」に徹する。リーダーとして本当に素晴らしい取り組みですね。
小池 一つひとつの声に真摯に耳を傾け、相手の背景にある思いを知ろうと努力する。そうやって誠実に向き合い続けると、ある瞬間に相手の態度がフッと柔らかくなるのを感じます。「ああ、この市長は逃げずに自分の話を聴いてくれるんだ」と伝わった瞬間です。そして、「そこまで真剣にこのまちのことを考えてくれているなら、文句ばかり言っていては駄目だ。市長、一緒にやろう」と、一番の反対派だった方が、最も強力な協力者へと変わってくださったのです。
橋本 市長が自ら矢面に立ち、対話を重ねるその背中を見て、現場の職員の皆様にはどのような変化が起きましたか?
小池 それは本当に驚くべき、そして私の立場からすると、大変頼もしい変化でした。「予算が削られるから何もできない」と下を向くのではなく、職員たちが市民の皆様と現場で必死に対話を重ねてくれたのです。たとえば、補助金カットを伝える窓口での関わりです。職員が丁寧な説明を尽くした結果、市民団体の方から「行政に甘えず、自分たちで財源を生み出す提案をさせてほしい」という声が上がりました。市民の皆様の意識をも変え、ともにまちを救おうと自走し始めた瞬間でした。
橋本 素晴らしいですね。そうして職員の皆さんが自ら動くきっかけが、一つずつできていったのですね。
小池 他にも、維持費が重荷になっていた既存の公共施設について、「民間企業との共創で、収益を生み出しながら市民が集える施設に生まれ変わらせられないか」といった新たな視点での事業計画が、職員のなかから提案されるようになりました。これまで上からの指示で動く「やらされ仕事」になりがちだった業務が、「自分たちの知恵と工夫で、このまちを経営し、救うんだ」という、彼ら自身の強烈な「当事者意識」へと変わった瞬間でした。
小池 はい、職員たちの血のにじむような努力と、対話を重ねた市民の皆様のご理解のおかげで、一歩ずつではありますが変革が進んできています。いまは確かに苦しいタイミングですが、市民の皆様も徐々に理解され、ともにこの難局を乗り越えていこうとしてくださっています。これは私一人の力では絶対に不可能です。自ら考え、動き出してくれた職員全員の力に他なりません。
橋本 本日は、小池市長のお話を伺い、組織を牽引し、人を自ら動かす本質は「高度なテクニック」などではなく、リーダー自身の「あり方」や「生き様」なのだと強く確信しました。自ら給与を下げて退路を断ち、弱さを隠さずに助けを求め、いかなる対立構造からも逃げずに徹底的に「聴く」ことを諦めない。その覚悟と愛を行動で示し続けるからこそ、約500名の職員が自ら動き出し、市民の心に希望が宿っていくのですね。
果敢なチャレンジをしている
小池 ありがとうございます。市長という立場を与えていただいていますが、私一人でできることは本当にちっぽけです。だからこそ、私を支えてくれる職員の皆さん、そして厳しい決断にご理解をいただいた市民の皆さん一人ひとりとの対話を決して諦めず、常に感謝の気持ちを持って接し続けること。その地道な積み重ねこそが、未来の碧南市を、そして子どもたちが夢を描ける社会をつくっていくと信じています。まだまだ改革は道半ばですが、これからも愛と責任を持って、愚直に歩みを進めてまいります。
小池 こちらこそ、ありがとうございました。
橋本 これからの小池市長のさらなるご活躍と、碧南市の発展を、心より応援しております。本日は本当にありがとうございました。
小池 私も学び続け、さらなる成長を遂げていけるように挑戦してまいります。これからもよろしくお願いいたします。
寄付を実施し、感謝状を拝受いたしました
アチーブメント株式会社は愛知県碧南市へ企業版ふるさと納税を通じた寄付を実施し、2026年4月7日に小池市長より感謝状を拝受いたしました。今回の寄付は、碧南海浜水族館における「人と自然をつなぐ学びの拠点事業」に活用されます。