クオリティカンパニー実現のために、大切にすべきこととはなにか、そこに至るプロセスとはなにか。青木が解説いたします。
よい環境だけでは社員は育たない
よい会社を創りたい。これはきっと多くの企業経営者の願いであると思います。私も経営者になってから35年が経ちますが、「組織とはトップの考え方で決まる」という言葉の重みを年々感じるようになりました。よい会社づくりの第一歩は、会社としての理想のデザインを経営者が描くことから始まると私は考えます。そのモデルとして参考にしていただきたいのが、『クオリティカンパニー』です。これを目指すことがよい会社づくりには効果的であると、経営者の方向けに開催しているアチーブメントテクノロジコース特別講座や、アチーブメント経営実践塾などでお伝えし続けてきました。
多くの経営者の方に触れて思うことですが、社員を育てようと社内の仕組み整備に力を入れている方は少なくありません。しかし、環境を整えたからといって、必ずしも人が育ち、よい会社になっていくかというと、そうではないのです。なぜならば、環境がよくても、社員自らが成長したい、よくなりたい、この会社を発展させていきたいという「願望」がない限りは主体性は生まれないからです。特に高いパフォーマンスをあげていくためには、絶対に欠かすことはできません。だからこそ、『クオリティカンパニー』では、報酬や待遇などの環境面のみならず、社員が仕事の意義と価値に共感し、この会社のミッションを本気で追求することが自分の人生の自己実現につながっていくこと、熱狂して働けることも条件の一つにあげているのです。
豊かな心が願望の原点となる
社員が、お互いに興味を示し、貢献し、支え合い、お互いの願望実現に対して全力を尽くせる組織ほど、社員の願望がより利他的に拡張し、仲間のために一肌脱ごうと本気を出せるのです。そしてその姿勢がお客様と関わるなかでも現れるために、お客様の願望実現にこだわりをもち、よりベストな提案や商品の提供に全力投球できるのです。
そうした文化が組織に浸透しているかどうかを見る指標として、わかりやすいところで言えば、「ありがとう」という言葉がどれくらい交わされているか、ミスをしたときに素直に「ごめんなさい」と言えるかどうかが参考になります。こうした文化を創り出せるかどうかが、経営者の腕の見せ所と言ってもいいでしょう。
組織変革の出発点は経営者から
こうした組織の文化を変えるためには、3つのフェーズがあります。1つ目は、経営者の自己変革です。私は人材教育という仕事に長らく取り組んできましたが、「うちの社員をどうにかしてほしい」という経営者をたくさん見てきました。実はそうした思いをもつ経営者ほど、組織変革はうまくいきません。社員は、上司やトップの言動を常に見ています。身近だからこそ、何を言っているのか以上に、何をやっているのかがよくわかります。言葉と行動がズレている人は、他人からの信頼を集められません。組織変革の第一歩は、例外なく、トップである経営者の自己変革です。幹部を始めとした社員に尊敬される存在になってこそ、発言に影響力が生まれ、組織全体の実行のスピードが早まっていくのです。
2つ目に幹部社員が経営者と同じレベルでミッションを語り、スタッフの幸せを心から願える状態に変革をしていくことです。そうして3つ目に、スタッフの成長があるのです。
今回の特集では、3社のモデル企業がこの3つのフェーズにどのように取り組んできたのかをご紹介していきます。ぜひ参考に御覧ください。
アチーブメントグル―プ 最高経営責任者(CEO)
青木 仁志
北海道函館市生まれ。若くしてプロセールスの世界で腕を磨き、数々の賞を受賞。1987年のアチーブメント株式会社設立以来、44万名以上の人材育成と、5,000名を超える経営者教育に従事し、理念経営を志す企業を数多く輩出。講師を務める『頂点への道』講座スタンダードコースは、28年間で700回毎月連続開催を達成したロングラン公開講座であり、新規受講生は3万6,574名にのぼる。現在は経営者を対象としたアチーブメントテクノロジーコース特別講座の講師を務める。30万部を超える『一生折れない自信のつくり方』シリーズを始め、累計61冊の著書を執筆。