徹底的なTTPが成果を加速させる 他者の知識と経験を活用

湘南美容グループ 代表取締役 相川 佳之

日本一の美容グループとして名高い「湘南美容クリニック」。総院数は約80、平均1日来院者数は5000名を超え、80%超がリピーター。この輝かしい実績を1代で築き上げたのが、相川佳之 氏。他組織を圧倒する、経営戦略を生み出してきたのは「徹底的にパクる」、略して「TTP」。その奥義とは?

基礎固めの間、誰に習うのかを考える

「第二象限」や「戦略」という言葉を聞くと、多くの方は考える時間を取り、何か新しいものを生み出そうとされます。
しかし、時間を取ればいいアイデアが生まれるというわけではありません。
何故ならば、知識と経験という考える材料がなくては何も出てこないからです。
新たなアイデアを自分で生もうとするよりも、何を考えるか、どう考えるかを知った上で物事に取り組むことの方が重要だと私は思うのです。

私たちのクリニックの新入職スタッフには「入職して3~5年位は、徹底的に目の前の仕事に集中すること」をお伝えしています。
初めてこの業界に勤められる方には、特にお伝えしたい点で、質の高いアイデアを出すには経験と知識が必要不可欠です。

3~5年位は、基礎固めをすることに徹し、先ずは経験を積むことに集中する方が、長期的に見ると必ず伸びていく傾向があります。
私自身が、クリニックを立ち上げた当初、そう仕事をしていました。

また、重要なことは「TTP」です。
「誰の真似をするのか」ということです。
新人の期間は自身で考えるよりも、成果を出している人の考えを真似る方が絶対に良いです。
誰をモデルとすべきか、どのようにその人の技術や考え方を習うか、ということを徹底的に考えるのです。

これを「徹底的にパクる、略してTTP」と呼んでいます。
徹底的に真似て行動し、行動した後に振り返り、次に活かすノウハウとして、自分の血肉にしていく、ここに着目することです。
これこそが最も効果的な成長方法だと、実体験しています。

基礎が出来たらどう“ワープ”をするかを考える

ある程度経験と知識を積み重ねたら、考え方が段々と確立されていきます。
そこで考える時間を取ると大きな価値がもたらされるようになります。
意識すべきは、「成功者の考えや力をいかに活用するのか」ということです。
私はこれを「ワープ」と呼んでいます。

そのポイントは2つあります。

1つ目は、先人やその分野の専門家の考えに触れることです。
医療を例に上げれば、自分よりもキャリアがずっと長い先生の書籍を読んだり、日本よりも進んでいるヨーロッパ諸国の医療制度や施術を学んだりすることです。
常に、そこから何を真似出来るかという視点を持ち、良いアイデアがあれば、徹底的にパクることです。
書籍に加えて、私は新聞を5紙継読しており、隙間時間を作り必ず目を通すようにしています。
そこには、記者の方が沢山の労力をかけて集めてこられた情報が掲載されており、時代の流れを掴むことが出来ます。

例を上げれば、30代の女性の人口は、2015年からの10年間で20%減ると言われています。対して50代の人口は増えていくことがデータ化されています。
そこからビジネスに置き換えて考えると、もし30代の女性をターゲットにしているサービスがあれば、おのずと競争倍率は上がり厳しい状況になっていきますが、50代の女性をターゲットにしていれば、ビジネスチャンスは増える可能性があります。
こうした時代の流れをしっかり掴み、事前に的確に手を打っていく為に、専門性の高い人の考えに触れることは必要不可欠であり、長期的な成功を成し遂げる上では重要なことなのです。

2つ目は、周囲の協力を得ることです。
湘南美容グループが今の実績を築いてこられたのは、決して私一人の功績のみではなく、多くの方々の協力を得てこられたからです。
医療の仕組みを変えることや、新しいサービスを開発することは、私たちの努力と人脈の力によって成し遂げることが出来ました。
高い目標でも、周囲の協力を得ることが出来たら、達成する手段は必ず存在します。

「ワープすること」は、「楽をする」という意味では、決してありません。
努力を正しくすることが重要です。
又、ただ努力するよりも、「努力をいかに、最大の成果に繋げられるか」を常に考え続けることが重要なのです。
それを「ワープする発想」と呼んでいるのです。

成果を明確に測る指標を持ち具体的に振り返る

考えて生み出したアイデアを実行するに当たり、欠かせないことは、効果性を客観的な数値で測ることです。
そこで得た、主観ではなく客観的な数値を根拠にして、取り組みが本当に正しかったのかを振り返るのです。
これを「孤高の時間」を取って行います。

個人的な取り組みの一つとしては、アチーブメントプランナーの、黄金の習慣チェックリストを10年間使い続けています。
習慣化したいことを明確にして取り組んでいるのですが、大事なのは結果をチェックすることです。

特にバツ(未達成項目)のチェックをすることこそ意味があると思います。
習慣化しようと取り組むと、うまくいかないときに、途中でやめてしまう方が多いのですが、そんなときこそがチャンスです。

1か月記録し続けたリストを振り返ると、このひと月はどんな月だったのかが数値ベースで把握が出来ます。
そこから、なぜその数値になったのかを行動レベルで振り返るのです。
今日でも、掲げた習慣を完璧に終えられたという日はなかなかありませんが、数値ベースで自分自身の現在地を把握出来ることで、次に活かす具体的な改善策を立てられるのです。

組織で言えば、満足度を数値で測ることです。
私たちは三方良しを理念に掲げています。社員・顧客・社会が満足してくれるサービスを提供するということです。
これを思いだけではなく具体的な数値に落とし込んで管理をしています。

その数値化の例として、ネットプロモータースコアという顧客の満足度をチェックする指標を取り入れています。
サービスを知人に勧めたいか?というアンケートを取り、それをスコア化しています。ホテル業界でのおもてなしの代名詞とされる、ザ・リッツ・カールトンのスコアが12.2ポイントで、業界トップのスコアです。

これに対して、現在の私たちのスコアは10ポイント強です。そこで、三方良しを土台に世界一を目指すのであれば、先ずはザ・リッツ・カールトンの数値を超えるという目標を設定しました。
その為に、より具体的な改善を行うべく、覆面調査員を派遣して更に細かい項目で200点満点でチェックしています。
現在170点ですが、先ずは175点を目指して、店舗ごとに課題と施策を考えてもらい、実行し、次の調査でまたその取り組みの成果をスコアで測るのです。

周囲の協力を得て、客観的な数値でその取り組みの成果を振り返り、次への改善を考え、実践していく。
これこそが「孤高の時間」ですべきことであり、私自身が実践してきたことです。

長年愛用し続けているアチーブメントプランナー、黄金の習慣チェックリスト

 

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