お碗物の愉しみ方編

香りから季節を楽しむ

懐石料理の献立の中にどの季節でも必ずお椀物が組み込まれています。
一般的には先付けや前菜物とお造り(向付け)の間にお出しすることが多い一品です。

実はこのお椀物、日本料理人にとっては一番気を遣う、まさに「メインディッシュ」といっても過言ではない一品なのです。

お椀物の主な役割は、蓋を開けたときに、お客様に旬を感じていただくことにあります。

椀種といって旬の食材を使ったしんじょうや野菜、魚などを盛り、その脇から静かに一番出汁を注ぎこみます。
蓋を開けた瞬間に香りで季節を感じられるよう、柚子や木の芽を入れることも多いです。

注ぎこまれた出汁は単なるお汁としての役割だけではなく、椀種を最大限に引き立てるための小宇宙のような存在でもあるのです。

お連れ様とともに

日本料理四四A2でも、もちろんお椀物をお召しあがりいただいております。
目の前にお椀物が運ばれましたら、お連れの方とともになるべく早く蓋を開けて香りを感じてみてください。

そして、その中に詰め込まれた季節に触れていただけましたら、一層お椀物をお楽しみいただけると同時に、私も一人の料理人として幸いでございます。