逆境は「変革の好機」 ~ 将来の成長エンジンを、いまこそ見極める ~

インナービューティという新たな価値を提案することで、エステティック業界に新潮流を起こし、急成長を遂げているプロラボホールディングス。そのマーケティング力やブランディング展開は、国内外で高い評価を獲得している。しかしそんな同社も、設立当初から順風満帆に事業を展開してきたわけではない。数々の逆境のなかで試行錯誤し、変化することで発展の道を切り開いてきた。今回はプロラボホールディングスを力強く牽引する代表取締役会長 兼 CEO・佐々木広行氏を招き、アチーブメント株式会社・青木仁志が対談を行なった。

株式会社プロラボホールディングス 代表取締役会長 兼 CEO 佐々木 広行 
早稲田大学教育学部卒業。セコム株式会社を経て1998年にフリーペーパー発行会社(株)ウィズダム教育通信社を設立。2002年にエステティックサロン事業を創業。2007年に事業転換し、ハーブティーや発酵飲料等の高品質インナービューティ製品『Esthe Pro Labo(エステプロ・ラボ)』ブランドを開発してメーカー事業をスタート。現在、国内約15,200店以上の美容・健康施設に商品を供給し、世界10カ国に進出している。2017年「東久邇宮国際文化褒賞」を受賞。

寝食を忘れて働くも、事業が行き詰る

青木
近年の御社の成長はまさに飛ぶ鳥を落とすような勢いで、その動向は業界の枠を超えて注目されています。そのような成長を支えてきた佐々木会長から、事業への思いや、逆境の乗り越え方のヒントなどを伺いたいと思っています。
佐々木
ありがとうございます。当社は2007年に『Esthe Pro Labo(エステプロラボ)』ブランドを開発してからこれまでに、国内約15,200店以上の美容・健康施設に商品を供給するようになり、現在、世界10カ国でブランドを展開しています。パリ・コレクションでは8年連続オフィシャルパートナーとしてファッションモデルをサポートしており、当社のブランドは世界的に認知度が高まりました。ですが、ブランドを立ち上げた前後の時期は事業に行き詰まり、かなり苦しい状況に直面していました。
青木
御社がどのような苦境に立たされ、いかにしてそれを克服してきたのかお聞かせください。
佐々木
私は1998年に大手企業を退社し、フリーペーパーを発行する会社を起業しました。企業に営業をかけてフリーペーパーに広告を掲載いただき、広告を制作する仕事です。寝食を忘れるほど事業に打ち込み、開業当初はそれなりに上手くいっていました。しかし経営について深く考えたことがなかったこともあり、5年ほどで事業が行き詰まってしまいます。銀行への返済ができなくなり会社が傾き、信頼していた社員が次々に辞めていく。そんな状態が3~4年続いて本当に厳しい状況に陥りました。

意識変革と事業転換で成長の波に乗る

青木
起業から5年間はハングリースピリットで猛烈に頑張ったのですね。しかし徒手空拳で戦うなか苦境に陥った。当時のご自身と自社のビジネスがどのような状況だったのか、少し詳しくお話しください。
佐々木
当時は自社に泊まり込んで昼夜なく働き、暴飲暴食を繰り返していたこともあり、35歳の頃に糖尿病と診断されました。その頃は健康と美容に関わる企業の通信販売をサポートする機会が多かったのですが、自分自身の身体はボロボロだったんです。しかしそうしたダイレクトマーケティングの広告制作や商品企画では、結果を出していました。お手伝いをしていた企業のうちの数社が年商100億円以上に成長し、マーケティングやブランディング、プロデュース力においては高い評価を得たんです。そんななか、2007年に事業を大きくシフトさせてメーカー業をビジネスの柱にしました。広告制作の過程で、健康に関する知見や情報にふれるうちに、これからはセルフメディケーション(予防医療)の時代が来るということを予見し、関連商品を世に出したいと考えるようになったのです。
青木
それが、その後の「内面美容製品」に結びついていくわけですね。苦境のなかにあっても自身の強みを見極め、その分野で実績を出し続けたことが、後の飛躍に発展していったのですね。
佐々木
当時のエステティック業界は化粧品や美容器、施術などの外面美容=アウタービューティの商品やサービスが基本でしたが、私はそれに限界を感じていました。肌の上から塗る化粧品や痩身、美容機器などで外面からの施術を行なっても、なかなか結果が出ないことがあるからです。また自分が不摂生から体調を崩していたこともあり、内臓や心の健康に働きかける内面美容=インナービューティに着目しました。
青木
素晴らしい。あらゆる逆境には、必ずそれと同等かそれ以上の成功の種が隠されているものです。ご自身の苦しい体験からも成長のヒントを見い出し、果敢にチャレンジする姿勢に感服します。

理念経営をメンバーと共有して躍進

佐々木
2007年にメーカー業への事業転換をしましたが、業績がすぐに好転したわけではありません。苦しい状況は続いていました。当時は人よりも圧倒的に努力していると思っていましたし、誰よりもたくさん働いているという自負もありました。「なのになぜ上手くいかないのだろう…」。そのように自問自答を繰り返す日々でした。そんなときに仕事で実績をあげている知人からアチーブメント社の研修を勧められ、自分を変えたい一心で受講を決断。それが大きな転機になりました。
青木
初めて受講されたのは、確か2009年でしたね。受講することでどのような変化が起こりましたか?
佐々木
メーカー事業を展開し始めた頃は、自分が得意としていたマーケティングのテクニカルな側面にばかり注力していましたが、受講して理念の重要性に気づき、事業に取り組む姿勢が変わりました。当時は青木社長のCDを毎日車のなかで聴き、社内で理念に関する勉強会を定期的に開いて社員と情報を共有しました。その結果、自身や周囲のメンバーの意識が次第に変わっていきました。その頃のエステティック業界は内面美容製品があったものの、原価に比べて販売価格が極端に高いものや、添加物がやたらと多いもの、エビデンスがないような商品が少なくない状況でした。私たちはそうした状況の「美容業界を変える」という強い使命感をもつようになりました。商品開発にあたっては、地道に医師を訪ねてネットワークをつくり、財団を立ち上げ、最先端の知見を得て商品開発に活かしました。また自分たちが得た情報をエステティック業界に広めるため、定期的に講習会を行なう仕組みもつくりました。そのような活動が少しずつ認められ、とてもまじめに商品開発をしている企業として、当社が認知されるようになったのです。近年の成長の土台は、この頃に構築できたと思っています。
青木
本物志向を徹底的に追求し、お客様や社会が求めるものを深掘りしながら事業展開することで、経営状況が好転していく──。まさに理念経営ですね。利益は目的ではなく結果だということの好例です。
佐々木
エステティック業界は、大きな可能性に満ちた業界です。日本にはおもてなしの心と、世界トップクラスの技術があります。過去には課題も多い業界でしたが、意識の高い経営者や、しっかりとした考えをもつ企業も増えてきました。そうした人材や企業が今後も成長できるよう、私は業界に知識や情報をもっともっと還元していきたいと思っています。今回ご縁をいただき、近々アチーブメント出版さんから書籍を発行させていただくことになりましたが、そうした活動も業界に貢献したいという気持ちから生まれたものです。
また、当社の理念の根底には、「美容という切り口から日本の健康を支えていきたい」という社会貢献への強い思いがあります。日本は長寿国でありながら、晩年は病気を抱えて薬に頼りきりとなっている人も多いのが現状。私たちは「美容」を入り口にしたセルフメディケーションを、さらに広げていきたいと考えています。
青木
素晴らしい理念ですね。佐々木会長という優れたリーダーに支えられ、プロラボホールディングス社さんはこれからさらに成長していくことでしょう。佐々木会長に続く人材を育て、高い志をもって、業界をより良くしていただきたいと願っています。本日はありがとうございました。