制度設計の全体像

人事制度の全体像

次に、実際に何をどのように設計をするとよいのかを見ていきます。人事制度設計と経営はどのように絡み合い、形作られているのかについて、こちらの図をご確認ください。人事制度とは、具体的には、「グレード制度(等級制度)」「評価制度」「賃金制度」の大きく3つの要素によって分けることができます。この3つがそれぞれ影響しあい、適正な形で機能していく形を目指して、設計をしていきます。

1.グレード制度(等級制度)

会社からの期待を具現化した指標
まずは、能力レベルや職務内容によって定められたグレード(等級)です。この設計が人事制度のベースとなります。会社が求める人物像や、能力とはどのようなものなのか、それをそれぞれのグレードに合わせて明示し、会社が社員に対して何を求めているのかを明文化していくという重要な役割があります。例えばアチーブメントで言うと、経営者教育を大切にしているので、一人ひとりの社員が、自分自身の行動に対して責任が取れて、実力ある人が上に上がっていける仕組みを作ることを大切にしてきました。8つのグレードに分け、それぞれのグレードに必要とされるテーマを明文化していきます。グレードを上げていくごとに、より一歩「経営者」としての実力が身についていくということでもあります。ここをしっかりと設計していくことによって、次の「評価制度」と「賃金制度」が設計しやすくなるというメリットもあります。自社が求める人材の要件を洗い出し、組み立てていきましょう。

2.評価制度

公平公正な評価と育成の促進
次に、一人ひとりの社員の評価を決める評価制度の設計です。ここも企業の文化や目指す理想によって「評価するポイント」が変わります。決して単一の正解はないのですが、社員がどのような努力をしたら報われるのかを定義すると言っても過言ではありません。いうまでもなく理想からの逆算が必要です。
まず前提として、性格や価値観は、評価の対象外です。ここを評価してしまうと、個性を否定することになるので、気をつけましょう。その上で下記の①〜④の要素を踏まえて、評価制度を組み立てています。①の成果とは、文字通り本人のパフォーマンスです。グレードごとに設けた基準に加えて、上司とともに半期ごとに成長テーマを明確にし、そこから立てた目標の達成率を評価していきます。②は、成果を出すためのプロセスです。①と②の割合はグレードによって違います。グレードが低いうちは、成果よりもプロセスに焦点を当て、上がっていくにつれて成果を評価する割合が上がっていきます。そして、③については会社それぞれが大切にしている文化を大切にしているかどうかをみていきます。7つのフィロソフィーに対する取り組みを半年間ごとに自己評価と上長評価で決めていきます。これもグレードによって評価基準が変わっていきます。最後の④は、資格取得や研修受講や学ぶ姿勢などをみていきます。グレードを上げるために必要な資格を明文化し、昇進昇格の条件とするのもよいでしょう。

3.報酬制度

評価を反映した報酬の決定
グレードに応じて、それぞれの報酬レンジを決定していきます。アチーブメントでは、それぞれのグレードに応じて、より細かいランクを設けており、それぞれのランクでの下限額と上限額を決定しています。仮にグレードやランクの変動がなかったとしても、業務への取り組みや目標の達成具合に合わせて、報酬が変動することがあります。会社の利益率などを踏まえて、どれくらい人件費に投資できるのかは慎重に決めていく必要がありますので、試行錯誤をしながら、適正なレベルを模索していきましょう。

試行錯誤への第一歩を踏み出す

全体像をご紹介してきました。当然のことながら、これらの概念だけで完璧な人事制度を設計することは難易度が高いです。幾度もの試行錯誤を繰り返しながら、現場へ落とし込んでいき一歩ずつ模索していく必要があります。参考にしていただけましたら幸いです。次のページでは、制度導入のタイミングや導入後に、どのように現場に伝え、浸透をさせていくといいのかをご紹介していきます。

髙橋 優也
アチーブメント株式会社 執行役員/経営管理部長/人事部マネジャー
新卒入社時から人事担当者として、経営の根幹である組織づくりを代表青木・本社役員のもとで行う。これまで、経営方針策定、人事評価制度構築・改定、中途・新卒採用プロジェクト、自社社員・内定者の教育プログラム企画・ 運営など、数々のプロジェクトに携わり、現在のアチーブメントの組織体制構築に尽力してきた。その功績が認められ、2021年10月執行役員に就任。「社員の自己実現の舞台」として、自社の成功モデルを他社にコンサルティングするアチーブメントの「理念経営」の真髄を代表・ 青木と共に追求し続けている。

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