弱さを乗り越える3つのテクニック〜与えられたものを、生涯、忘れない〜

アチーブメント株式会社 代表取締役社長 青木 仁志

人は弱い。

私は「人は弱い」存在だと思います。
なぜならば、ほかならぬ私自身が弱い人間だと思うからです。

かつて私も弱さがありました。
その弱さとは、「大切な人を守れない」という弱さです。

力なき愛は無力と言いますが、まさにその状態が、とくに創業からしばらくは続きました。
その大きな要因は、不良在庫の山を出してしまったこと。

創業して間もないころ、故・横綱千代の富士(九重親方)の現役引退を記念して製作した能力開発教材が、「横綱千代の富士『頂点への道』」。

当時は、話題性からメディアも殺到しましたが、実際ふたを開けてみると予想に大きく反してまったく売れませんでした。
抱えた不良在庫は、3000セットを超え、約1億5000万円分もの在庫の山が重くのしかかりました。

会社の売上が、毎月1000万円に満たない中、在庫によって生じた借金の波が、毎月300~400万円となって押し寄せる日々。
「万策尽きた」、そう思い、消費者金融の前まで足を運び、我に返って、引き返したこともありました。
数十万円の資金繰りに苦労して、倒産の危機にも直面したのです。

創業当時は、ゴミ捨て場に落ちている、机や椅子を拾ってオフィス用品として使う時代、穴の開いた自分の靴下を買うお金もなかったような時代でした。

そんなときに、手を差し伸べてくれた方々

そうした時代を経て、約30年の月日が経ち、2017年10月12日。
アチーブメントは創立30周年を迎えました。
困難な時代を乗り越え、今では実質、無借金経営を維持するまでになりました。

なぜ私が、大切な人を守れないという弱さを乗り越えられたかといえば、「もう一人の自分」、すなわち「自分のあるべき姿」「ありたい姿」が自分を励ましてくれたから。

ではなぜ励ましてくれたかといえば、私がその理想像を信じ続けたからだと思います。

さらにいえば、信じ続けられた理由の一つが、助けてくださった方々の「恩」に応えたかったからだと言えるでしょう。
創業して資金繰りに苦しんだ時代。
不良在庫を抱え、将来の見通しのなかったこの会社を、たくさんの方々が助けてくださいました。

選択理論の日本の権威、柿谷正期先生をはじめとした顧問の先生方が、ご自宅を担保にしてでも資金面を助けてくださいました。
顧問のある先生からは、「後ろ向きの仕事は私が代わってあげるから、青木さんはただ、前だけを向いて走りなさい」と言って無償でお仕事をしてくださったこともあります。

日中、忙しく家族との時間が取れないため、仕事後に妻と、生まれたばかりの娘を連れ、向かうのは深夜の公園。
そこで「必ず豊かになる」「家族に苦労をかけない」と決意したものです。

拙著、『一生続ける技術』には、そのときの決意をつづった、私の当時の誓約文を掲載しました。
今も、自分への戒めとして持ち続けています。あのときの自分の無力さを、私は生涯忘れません。
そして同時に、決意も生涯忘れません。

紙面では語りつくせないほど、”手を差し伸べてくれた”方々がいたのです。

希望に溢れた未来を信じられた理由

私には、自分がどれほど損をしても、お世話になった方々のことは忘れない、恩に報いたいという「報恩感謝」が、大切にしたい価値観として強くあります。
恩返しに生きることこそが私の美徳なのです。

特に、私のような幼少期に厳しい訓練を受けた生い立ちを持つ者にとって、与えていただくご恩ほど身にしみるものはありません。
何もない自分に与えてくださるものは、どんな小さなことでも有難かった。

中卒・学歴なし・人脈なし・自信なしで、溶接工見習いからキャリアをスタートした私が、できない言い訳を探せばいくらでもあったでしょう。
成功できない理由を数えたらいくらでもあったでしょう。

私にとって”悪魔のささやき”とは、「無理だ」「できない」といった、不可能思考だったに違いありません。

しかし、だからこそ、その声に負けないように持ち続けたのが、積極思考、未来への希望です。
自己暗示の繰り返しによる、「信じる力」です。
どれほど、自分の弱さを突きつけられても、無力さに涙しても、それを決して失わなかったからこそ、理想の自分が励ましてくれた。

そしてそれを持つことができたのは、恩を忘れずに、「このままでは終われない」「必ず恩に報いる」という決意があったからです。
恩返しの気持ちが、自分の未来を信じる力へと変わっていったのです。

ある方に「どうして私を助けてくださったのですか」と伺ったことがあります。
その方は答えました。「青木、それはお前が一度も約束を破ったことがないからだ」と。

かつてもっと若かりし頃は、家賃を滞納し、不誠実とののしられたこともありました。
しかし、そのときに抱いた「誠実に生きたい」「恩に報いたい」という思いや姿勢が、たとえそのときはすぐに恩が返せなくとも、その方にとっては、未来の私の成功に対する期待となっていたのではないかと思います。

成長とは価値観の肯定的変化。
では価値観の肯定的変化とは何かといえば、それは感謝です。
言い換えれば感謝の心が持てたときに成長したといえるのです。

人はまだ未熟な視点ですと、自分中心でしか物ごとを捉えません。
自分の欲求を満たすことがすべてです。

しかし、真に成長すると、自分は一人では生きていないことがわかります。
自分が生きていられるのは、さまざまな人が支えてくださったからだと、心底理解できたとき人は強くなれるのではないでしょうか。

苦しい時代、苦境の時代に、支えてくださった人々への恩が、「未来への希望」へと変わっていった。

人は弱い。しかし、必ず強くなれる

私は「人は弱い」存在だと思います。
なぜならば、ほかならぬ私自身が弱い人間だったからです。

しかし、一方で「人は強い」とも思います。
なぜならば、どんな小さなことでも「与えられているもの」、「いただいた恩」を見つめ、そこに気づいたときに、その恩を返そうとするからです。
それこそが自分が成功しなければならない理由であり、同時に弱さを乗り越える最大の武器になるのです。

それは誰にでも必ずあります。それに報いたいと思ったときに、皆さんも私と同じく、希望に溢れた自分の未来を”信じざるを得ない”はずです。

何もなかった私でも、今30年という会社経営の一つの節目であり、同時に新たなスタートを迎えることができました。
弱く、ちっぽけで、無力な私でも、自らの思考を具現化できました。

だからあなたもできます。断言します。
あなたもできる。
「人は誰でも、いつからでも、どこからでもよくなれる」のです。

自分の弱さを認め、向きあった先の、「理想のイメージ」を信じ続け、人々に恩を返し、そして恩を送る人生を、生涯歩んでいきましょう。