選択理論を実生活の武器に!悩みふっ切りマニュアル

日本選択理論心理学会 会長 柿谷 正期
認定NPO法人 日本リアリティセラピー協会 理事長

アチーブメント株式会社 特別顧問
精神科医/医学博士  ウイリアム・グラッサー博士(1925~2013)

「彼を知り己を知れば百戦殆うからず」という言葉があるように、勝つためには、まず敵と自分を正しく理解することが必要です。悩みと闘うにも同様で、その正体や対処法を知ることで、ふっ切って前進できます。今回はそのポイントを選択理論心理学会会長の柿谷正期先生に伺いました。

あなたの悩みはどのタイプ?

私たちは、誰しもが頭の中に理想のイメージ像を持っており、それを手に入れようと日々行動をしています。
この「理想」と「現実」を常に比較する中で、ほとんどの場合、その間にギャップが生じます。
このギャップこそが悩みの元なのです。

ただ、ギャップ自体は決して悪いことではありません。
なぜなら、このギャップが私たちを行動に掻き立てるモチベーションだからです。

では、悩みとは何か?
それは、いくら行動をしてもギャップが埋まらない状態のことです。
その中でも相反する二つの欲求に挟まれる「葛藤」という状態が、私たちを度々苦しめているのです。

葛藤の2タイプ

グラッサー博士が提唱する葛藤には「見せかけの葛藤」と「真の葛藤」の2つがあります。

「見せかけの葛藤」とは、努力次第で解決できる葛藤です。
「食べたいけど太りたくない」というのは典型的な見せかけの葛藤と言えるでしょう。

対して「真の葛藤」とは、直接的な解決法がない葛藤です。
例えば「言い渡された転勤を選ぶか、家族との暮らしを選ぶか」といったものです。
片方を選べば必ず片方を諦めないといけない葛藤とも言えるでしょう。

まず大切なのは双方の葛藤の違いを理解し、自分の葛藤を正しく把握すること。
なぜならば、それぞれで対処法が違うからです。

「見せかけの葛藤」の場合、一見相反する二つの要素でも両方を手にする方法が必ずあります。
先程の太りたくないという例なら、「走ってカロリー消費すること」を選べます。
苦しいのは、手段がないからではなく、知らないためか、何かの阻害要因があるためかです。

対して「真の葛藤」の場合、最善の努力をしつつ、環境の変化を待つしか無いとグラッサー博士は言っています。
しかし、待てないときには、決断をしなくてはいけません。
納得のいく決断をするために重要なのは、個人の価値観なのです。

例えば、「何よりも家族を優先する」という、明確な生き方の基準を持っている人は、家族と仕事という二つの要素に葛藤することはないでしょう。
私たちを最も悩ませると言っても過言ではない「真の葛藤」を処理するためには、この基準や価値観を明確にすることが大切なのです。

「ふっ切る力」を手にするための名問集

どうしてもふっ切れない。
そんなクライアントにグラッサー博士が投げかける質問とは?
自分への問いかけとしても、毎日の生活でぜひご活用ください。

あなたはそのままでいいんだよね?

葛藤に苛まれると、私たちは「理想」を見失い、行動が止まってしまうことがあります。
グラッサー博士はそんな時に、強制感を与えずに「願望」をヒアリングするために、この投げかけをすることがあります。
「私は本当はどうしたかったのだろう?」と、自分の願望に素直に立ち返ることができるのかもしれません。

私が聞いているのは、あなたにできることですよ?

他人を批判したり、過去を悔やんだりすることに対して思っている以上にエネルギーを使っていることがありますが、それは何の問題解決にも繋がりません。
グラッサー博士はそんな時に、単刀直入にクライアントにこう投げかけます。
自分ができることに集中できれば、無駄に悩まずに済むかもしれません。

では、その方になってみてもらえますか?

どうしても考えが理解できない人と出会うと、私たちは変えられない「他人」に執着して、葛藤を選択することがあります。
そんな時グラッサー博士はクライアントに「その人を演じてみて」とお願いすることがあります。
理解できないのであれば、逆になりきってみましょう。きっとこれまでと見える世界が変わるはず。

各名問の解説

「真の葛藤」も「見せかけの葛藤」も、コントロールできる範囲内で処理をするためは、共通して3つの方法があると言われています。
グラッサー博士の問いかけは、クライアントの意識をこの3つに向けてもらうことで、問題解決にともに向かっているのです。
その3つの方法を詳しく見てみましょう。

求めているものを変える

私たちは無意識に、コントロール出来ない他人や過去を変えようとしたり、理想そのものが曖昧で、葛藤することがあります。
自分の願望と向き合い、求めるものを調整できれば、解決の兆しが見えるでしょう。

していることを変える

より良い欲求充足の方法を知るということです。
うまくいかない時、私たちは「うまくいかなかった理由」を探しがちです。ときには原因究明も大切ですが、起こった過去に焦点を当てすぎても葛藤が続くだけです。
「これからより良い未来を実現していくために何ができるのか?」を考えることで、新たな突破口が見えることもあるでしょう。

捉え方を変える

悩みや葛藤は、一見すると私たちにとって悪いもののように思えるかもしれません。
しかし、成長するのは、悩みや葛藤を乗り越えたときではないでしょうか。
目の前の悩みに意味を持たせることができれば、大変だったとしても、乗り越える力が湧いてくることでしょう。
そして、前向きになれれば、解決のアイデアがたくさん出てくることでしょう。

精神科医/医学博士  ウイリアム・グラッサー博士(1925~2013)
精神科医/医学博士  ウイリアム・グラッサー博士(1925~2013)