レーシングドライバー SUPER GT 500・F3 最年少シリーズチャンピオン 平川 亮
13歳という決して早くはない年齢からカートデビューし、10年かかるといわれているF3へのデビューを5年で達成した平川選手。その後もGT500の最年少シリーズ優勝記録を更新し、レーシング業界の注目を集めている。その実績の裏側で、並々ならぬ努力で積み上げてきた実力を発揮し続けるために、何を大切にしているのでしょうか。
モチベーションは簡単に上げられる
ドライバーとして年間で50日ほど、レースに出場しています。
それ以外の時間は、イベントなどで全国を回ることもありますが、トレーニングは毎日行っています。
目指す理想に対して、体力・精神力・技術など必要なことはわかっているので、それを身に付けられるように、決めているトレーニグをこなしています。
ですが、決めたことを実行し続けるのは決して簡単ではなく、ときには嫌になることもあります。
そんなときに意識をしているのが、『自分のモチベーションが上がるような行動をとること』です。
毎回のレースは勝負事なので、必ず順位が出ます。
結果が出た直後は、悔しかったり達成感だったりとさまざまな感情があり、次に向けて頑張ろうという気持ちが非常に強いのですが、時間とともにどうしても薄れてしまうものです。
そこで、普段の生活では、こうした悔しさや向上心といった感情を呼び起こすために、よくレースの動画を観ています。
負けたときの動画を観るだけでも悔しかった感情が湧き上がってきますし、勝った試合の動画を観ればもっと上を目指したいと思えます。
また、ほかの選手の走りを観ることもあれば、本を読んだり、セミナーを受講したりすることもあります。
一つひとつは、決して特別なことではありませんが、そうした行動をとるだけでも、気持ちになんらかの変化が起こり、モチベーションが上がっていきます。
そうすると自然と頑張ろうと思えて、やるべきことを行動に移していけるのです。
気持ちの部分はなかなかコントロールしにくく、おざなりになりがちなのですが、実は人やモノの力を活用して、ちょっとした取り組みをしてみることで、想像以上に簡単に変化を起こせるものです。
チームがいるからこそ戦える
もっと根底にある、頑張る原動力を考えると、それはやはりチームの仲間や、応援していただいているファンの方々の存在が私にとっては大きいです。
たくさん支えていただいて、今の私がいます。
おそらく一人では諦めていただろうという場面もたくさんありました。
特にチームの仲間には常々支えられています。
レースになると、ドライバー一人がコースを走っているように見えますが、ピットと無線で常にやり取りをしています。
マシンの状況や他チームの動きなどを監督やメカニックの方が逐一確認しており、ピットの裏側で綿密な分析をしています。
その上で、長いと数時間以上にも及ぶレースをどのように戦っていくのか、いつどのタイミングで仕掛けていくのか、タイヤ交換や給油などのピットインはいつ行うのかなどを決めています。
それだけではなく、レースに出るまでに自分のスタイルと合うようなマシンをセッティングしていくのも、もちろん私一人ではできません。
何度も何度も調整をして、ベストといえる状態まで仕上げてレースに臨むのです。
最高の技術力を持った方々が集まって、その一人ひとりが全身全霊でドライバーとともに戦っているのです。
そう思うと、それだけでも諦めない理由、頑張る理由になります。
チームのために、応援してくださるたくさんの方のために、今できることを尽くしきろうといつも思うのです。
勝ち続けることこそが実力の証明である
チームもファンの方々も、いうまでもなく、応援するからには、勝つことを望んでいます。
それも、たまたま勝つのではなく、勝ち続けることです。
どうしたらそうなれるのか。
それには18歳のときに受講をした『頂点への道』講座で得られた学びが役立っています。
一言でいえば、明確なゴールからの逆算です。
具体的にどのようなレースで、どのように勝ち続けたいのかを明確にし、そのために必要なことを洗い出し、行動まで落とし込んでいくことです。
私が目指している理想像は、隙のない完璧なドライバーです。
正真正銘の実力を持っているということですが、その実力は、突然高まるものではありません。
当たり前のことですが、徹底的なトレーニングなしには手に入りません。
体力をつけることはもちろん、身体能力・筋力のトレーニングや、運転技術、車のセッティング・扱い方のトレーニングなど、やるべきことは多々あります。
一つひとつを細かく見ると、地道かもしれませんが、理想から逆算された内容を着実にこなしていくことが、勝つためには必要不可欠なことなのです。
本当に超一流の世界を目指していく上で、「目標達成の技術」は、アスリートには絶対に必要なことだと思います。チームの仲間、そして多くのお客様に喜んでもらえるよう、もっともっと上を目指して、徹底的に逆算をして、技術・体力・精神力を鍛え、これからも目標達成していきたいと思います。
1994年、広島県呉市生まれ。13歳でレーシングカートを始め、1年後の2008年、全日本ジュニアカート選手権参戦デビューWIN、年間シリーズチャンピオンを獲得。カートを始めて1年10か月という史上最短記録を打ち立てる。その後、あらゆるレースで史上最年少記録を樹立。2015年4月に行われたSUPER GT開幕戦では見事優勝を果たし、2017年にはSUPER GT500クラスで、史上最年少での年間チャンピオンを獲得。