経営者が打つべき未来への3つの布石

組織に流れる文化を変える一番のキーパーソンになる人こそが経営者です。中小企業は経営者の決断によって繁栄も衰退も決まってしまいますが、繁栄し続けるために経営者自身は何を大切にすべきなのでしょうか。数多くの経営者教育に従事してきた青木が、そのポイントを未来に対して打つべき布石という観点で解説いたします。

問題を引き起こしている「思考」を知る

経営をしていれば、線路の枕木のごとく問題が起こります。何かにチャレンジすれば必ず壁にぶつかるので、これは致し方ないことですが、大切なのはそれらの問題の本質的な原因を追求しているかどうかです。私が思うに、起こっている問題の8割は、本来防げたものです。つまりは、自分自身の詰めの甘さや予測ができていなかったこと、事前対応不足によって発生しています。良くも悪くもこれを招いているのはトップである経営者の「思考」です。物事の優先順位の判断を誤っていたり、任せるべき人を間違えたり、そうした一つひとつの物事の判断の源泉にある「思考」に焦点を当てて、よりよく改善していくことが求められるのではないでしょうか。その改善へのこだわりはどこから生まれるのかと言うと、事業目的へのこだわりです。絶対に成し遂げたいと思う事業の目的があれば、人は必ずその達成から真剣に逆算をします。そして綿密なプランを立て、徹底的な実行管理をしていくことでしょう。経営者の「思考」のなかで、明確な事業の目的があるかどうか、その実現までの道筋が描けているかどうか。そして、それを社員に見せているかどうか。ここですべてが決まると言っても過言ではないと私は思います。

「人」に投資し、「高い基準」を求める

その次に大切にすべきことは、常に蓄えを持った余裕のある経営をしていくことです。それは「お金」を始め、「情報」や「人脈」や「商品」といったものはもちろんですが、何より大切なのは「人」です。つまりは、いざとなったときに一致団結して、なんとしても組織を存続させようという心構えを持ち、そして実力のある人材を育てていくことです。コロナ禍で多くの上場企業が社員をリストラしたというニュースを見ますが、これは社員をコストだと思っているゆえの判断であると思います。社員はコストではなく、会社にとっての財産です。財産はその価値を最大化してこそ意味がありますが、生かすも殺すも経営者の腕次第と言ってもよいでしょう。社員のなかに眠っている可能力を引き出してあげること、そんな組織文化を創ることです。ではどうしたらそんな文化を醸成できるのか? 第一歩は求めることです。基準を示し、要求することです。シンプルですが、「さすがにこれは無理だろう」と社員の可能性に勝手に蓋をして、中途半端な働きしかさせていない経営者が多いと私は思います。本気で信じて、本気で期待するからこそ、高い基準を示し、成長を要求することが愛情なのではないでしょうか。間違った博愛主義は組織を衰退させてしまうのです。妥協せずに求めてください。そして、会社は社員にとっての自己実現の舞台なのです。要求に対して努力して応えてくれた社員には、必ず正当な経済的な報酬と精神的な報酬を支払いましょう。頑張った分だけ報われる、そんな実力主義の文化が組織の発展の追い風となります。

常に勝ちパターンを刷新する

松下幸之助翁は、「素直さ」を何よりも大切にしてきました。素直とは、ただ何にでも従順であることではなく、何ものにもとらわれず、物事の真実、何が正しいかを見極めてこれに従う心の姿勢であるとおっしゃっています。私もまさにそのとおりであると思います。
これまでに爆発的な成果を出した経験がある人であればあるほど、かつての勝ちパターンにこだわってしまうことがあります。しかし、時代の流れは常に変化していくものです。その流れに目を向けて、表面的な変化ではなく、深いレベルでの顧客のニーズを探求し、そのニーズを満たすための商品やサービスの開発にいち早く着手していきましょう。ビジネスとは価値と価値の交換ですので、お客様が求める価値をしっかりと届けることができれば、いつの時代でも必ず繁栄し続けられます。
苦しい状況であればあるほど、大きな変革が求められていると言ってもよいのかもしれません。そしてその変革に本気で取り組んだときに、時代のニーズに合った、顧客に求められる企業へと躍進していくチャンスをつかめるものだと私は思うのです。
常に変化することを忘れずに、常にお客様の声に耳を傾け、チャレンジし続けることに経営者が率先垂範で取り組んでいくこと。ここに心を決めて、発展の道筋を示していきましょう。

アチーブメント株式会社
代表取締役会長 兼 社長 代表取締役社長 青木 仁志

北海道函館市生まれ。若くしてプロセールスの世界で腕を磨き、トップセールス、トップマネージャーとして数々の賞を受賞。その後に能力開発トレーニング会社を経て、1987年にアチーブメント株式会社を設立。会社設立以来、43万人以上人財育成、5000名を超える中小企業経営者教育に従事。自ら講師を務める公開講座『頂点への道』講座スタンダードコースは28年間で700回毎月連続開催達成、国内屈指の公開研修へと成長。現在では、現在では、グループ4社となるアチーブメントグループ最高経営責任者・CEOとして経営を担うとともに、 一般財団法人・社団法人など3つの関連団体を運営している。