離職率75%から7%へと変革した 百年企業の逆転劇

「パワハラ」という言葉が昨今の流行となっているように、企業内で力を持つ社員と若手社員との円滑なコミュニケーションは簡単なことではありません。新入社員が育たずに、どんどん辞めていくといった状況をいったいどうしたら改善できるのか。
その変革劇を経て、離職率を実に1/10以下まで下げた岡村建設株式会社の岡村氏にお話を伺いました。

先輩社員からの圧力で、若手社員の離職が泥沼化

弊社は2021年で創業125年目を迎える建設会社です。高知から北海道北見にやってきた曽祖父が、この未開の地で自由と人情に溢れた理想的な社会を作っていく志を持ち、村づくりから建築の事業を発展させてきた企業を、2009年に4代目社長として引き継ぎました。十数人の小さな会社ではありますが、地域に根ざした誇りある仕事を代々大切にしてきました。しかし、段々と浮き彫りになってきた問題が、組織全体の高齢化です。キャリアのあるベテラン社員が文化を作り、基準を作ってきましたが、若手社員がなかなかそこについていけず、入社から数年で辞めていくというのが当たり前になっていました。建築業界は、指導が厳しいというのが一般的に知られていますが、まさに怒鳴る・罵る・罰を与えるといった文化が当たり前になっていたのだと思います。離職率は実に75%を記録し、社員の平均年齢は55歳を超えていたのです。この状況をどうにかしなければ、若手が育たずにこの会社は私の代で途絶えてしまう。そんな強烈な危機意識に頭を悩ませていたのです。そこで、知人の紹介で出会った『頂点への道』講座を受講したことが、組織変革のきっかけとなりました。

組織の指針を持ち、人に依存しない育成体系を構築

経営とは何か、組織とは何か、人はなぜ行動するのかといったことを講座で学んでいくなかで、私が得た一番の気づきは、組織の明確な指針を持っていなかったということでした。先代から大切にしてきたことはもちろんありましたが、私のなかでもどこかベテラン社員の方々に対して遠慮があり、思っていたことをしっかりと伝えられずにいたのです。お客様よりも、上司や先輩の顔色を伺う、そんな考えがはびこっていたことに気がついたのです。
これを変えるには、私自身がしっかりとリーダーシップを発揮していくと同時に、組織の体制を変える必要があると強く思いました。まず、「お客様を見て仕事をしよう」そう伝え続けることにしました。会議の場はもちろん、個別の打ち合わせや、相談をもらった場面でも、自分が誰よりもその考え方を大切にして、会社のために仲間たちのために、自分がまず変わっていこうと心に決め、行動をしていきました。そして、若手社員は営業と管理と工事という大きく3種類ある業務を、頻繁にジョブローテーションしてもらうように仕組みを変えたのです。誰か特定の上司一人から指導を受ける体制ではなく、さまざまな価値観の人に触れてもらうためと、自社がお客様に貢献していることをより全体像で知ってもらうためという2つの意図がありました。そのうえで、お互いの関係性を良好に保ちながら高いパフォーマンスをあげていく、選択理論心理学に基づいたマネジメントやコミュニケーションの基本をしっかりと社内で学ぶ機会を増やしていったのです。全体での研修を導入したり、個別での面談の頻度を増やしていったり、社員が自らの思いを発信する場を設けていったりと、さまざまな施策を行うなかで、徐々に若手社員たちが活性化していったのです。

組織が一新し、正しく評価される文化に

そうした組織の変化とともに、ベテラン社員の方々にも少しずつ意識の変容が生まれていきました。これまで怒鳴ることが当たり前だった指導が優しい口調に変わっていきました。もちろん、その変化に順応できずに引退される選択をしたベテラン社員の方もいらっしゃいました。会社をここまで支え、守り続けてくださった感謝を込めて、心からの敬意を払い、断腸の思いで送り出しました。しかし、組織全体で考えたときに、間違いなくこの判断はプラスに向かったといまでは思います。
おかげさまで、ほぼ全員が辞めていた若手社員の離職はピタっと止み、組織全体で見ても7%を下回る離職率にまで改善されました。何よりも、社員たちが当たり前のようにお客様の喜びを考えるようになり、顧客満足度への追求を主体的に行ってくれています。おかげさまでコロナ禍でも過去の売上基準を保ち続けることができています。そしてそれだけでなく、1年先2年先の案件と、これまでは取れなかった未来の受注までいただくことができています。これも社員たちの頑張りによって、お客様からの信頼を集められた一つの結果であると思います。未来も発展し続ける見通しを、全社員で創り続け、新たな歴史を紡ぎ続けてまいります。

岡村建設株式会社 代表取締役社長 岡村 金司
北海道北見市にて建設業を営む岡村建設株式会社の4代目代表。2009年に先代に変わり社長に就任以来、会社を守り続けることに注力してきた。歴史ある企業特有のベテラン社員とのコミュニケーションに悩み、若手が活躍せずに辞めていく組織文化の変革に着手し、離職率の大幅な改善はもちろん、10歳以上平均年齢を若返らせるなど、組織の色を一変させている。2016年11月 『頂点への道』講座受講。