大切なものを大切にできる 人を育てる。 それが良い経営の 原点である。

社員が主体性に富み、永続的に成長し続ける企業。
そんな企業の経営者が必ずといってよいほど持っている
価値観とは、「人を大切にする」ということである。
経営者教育に長年従事してきた青木はそう言う。
その真意を改めて語ってもらった。

アチーブメント株式会社  
代表取締役会長 兼 社長 アチーブメントグル―プ 最高経営責任者(CEO)
青木 仁志
北海道函館市生まれ。若くしてプロセールスの世界で腕を磨き、トップセールス、トップマネジャーとして数々の賞を受賞。その後に能力開発トレーニング会社を経て、1987年にアチーブメント株式会社を設立。会社設立以来、43万名以上の人材育成、5,000名を超える中小企業経営者教育に従事。自ら講師を務める公開講座『頂点への道』講座スタンダードコースは28年間で700回毎月連続開催達成し、新規受講生3万6,574名が参加した、国内屈指の公開研修へと成長。また、累計61冊の著書を執筆する著者でもある。

 

繁栄の土台とは「人」である

高度経済成長期を経て、日本は豊かになりました。
その世代を生きてこられた方であればわかるように、思う存分結果を求め、そして結果で評価されていたといってもよいのかもしれません。
それがいまの繁栄を作り出しているので、素晴らしいことですが、その反面、日本古来の「三方良し」という考え方や「日本的経営」といった思想が、少なからず薄れてしまった影響もあると思います。
ニュースで報道される企業の不祥事や、リストラといった問題も、こうした変化が影響しているのかもしれません。
確かに、お金を稼ぐことは大切です。
しかし、それだけでは長期的な繁栄は難しいと私は考えます。
実は世界には100年以上存続する企業が約8万社存在しています。そのうち4割以上である約33︐000社は日本企業なのです。「日本的経営」が、存続発展する上で非常によいモデルであることを歴史が教えてくれています。
そんな長寿企業が大切にしていることは何かというと、間違いなく挙げられるのが「人を大切にする」ということです。
それはつまり社員・顧客・取引先など、縁ある人たちを幸せにできる存在なのかどうかです。
いうまでもなく、組織を発展させる上で、何より欠かせないのが社員の存在です。
どれだけ将来性のある事業であっても、どれだけ指導力のある経営者でも、一緒に働いてくれる社員がいなければ何もできません。かの有名な松下幸之助翁は、「松下電器は人をつくるところです。 あわせて電気製品をつくっています」とおっしゃいました。
会社とは、お金を儲ける場ではなく、顧客や社会に貢献できる「人」を作る場である、そんな真意が込められているのでしょう。
「そんな甘いことをいっていては潰れてしまうのではないか」。私も若い頃にそのように罵られたことがありますが、実際は真逆です。
これでもかというくらいに社員を大切にするからこそ、社員のなかに経営者や会社への尊敬の念が生まれ、この組織で働く何よりの理由ができるからです。

経営者が社員を魅了し、社員が顧客を魅了する

そうして、経営者に組織に事業に社員が惚れ込むからこそ、仕事に全力投球できます。
好きな人と嫌いな人と、どちらと働くほうが思う存分力を発揮できるかと問われれば、答えは明快なように、すべての社員が前者でしょう。
「恩返ししたい」「必ずこの会社を勝たせたい」「この会社とともに成長していきたい」そういった、雇用関係や利害関係を超えた内発的な強いモチベーションが生まれたときに、報酬や待遇の改善では得られない社員との強い強い絆が生まれるのです。
このときに、経営者の発言に影響力が生まれます。
そして自分と同じように、仕事に情熱を注ぎ、「熱狂」と言えるほど本気で働く社員を育てられるようになるのです。
さらに、どこまでも事業の目的に素直で、利他の心を持つ実直な社員の数に比例して、顧客のロイヤルティも高まっていきます。
誰しもが、よい仕事を本気で追求する人からサービスを受けたいからです。経営者が社員を大切にした分、社員もお客様を大切にします。
そこには駆け引きも損得勘定もありません。相手のことを考えて、相手が望みを叶えることを自らの望みとする。
それが人を大切にする経営の鉄則といってよいでしょう。

新卒社員の初任給は必ず期待のメッセージとともに手渡しで支給している

社会性も収益も結果である

こうした身近な人から大切にする経営にこだわっていった先に、社会からの評価が高まり、収益が向上していきます。
売上を達成することや、メディアに取り上げられることや、様々なアワードを受賞することは結果です。それを目的にして、「人」を犠牲にしてしまっては本末転倒です。一時的には成果が上がるのかもしれませんが、長続きはしないでしょう。
なぜなら「人」が離れていくからです。「人」を大切にすることを愚直に貫いた先に、組織の繁栄が待っています。ぜひともに追求をしていきましょう。
私は、ここまでお伝えしてきた人を大切にする経営を貫く高収益企業を、クオリティカンパニーと名付けました。
日本からクオリティカンパニーを1社でも多く輩出していくことに力を入れ続けてきており、着実に増えてきている実感もあります。
今回はまさにクオリティカンパニーを目指して、大きな成果を作ってこられた3社に具体的な取組事例をお話しいただいておりますので、ぜひご覧いただけましたら幸いです。

仕事・プライベートともに時間を過ごす良好な関係性を築き上げている