【前回のまとめ】
前回の対談では、白井さんの指導・マネジメントの原点となっている選択理論、決勝戦の8回、9回の継投の舞台裏について語っていただきました。最終回の今回は、大谷選手が再会した白井さんにかけた言葉、今後のスポーツ教育に必要なことを伺いました。
願望を明確にし支援する姿勢が、選手の主体性を育てる
青木 白井さんは大谷選手とは日本ハムファイターズ時代からの師弟関係ですが、今回のWBCでの活躍はどう感じられましたか。
白井 今回の優勝は、大谷選手による影響が大きかったと思います。実は、始め大谷選手とどう接したらよいか分かりませんでした。大谷選手はメジャーでMVPを取られて、私にとっても雲の上の人のような存在になっていましたし、加えて5年間の期間が空いていました。しかし、大谷選手は私と再会したとき、「誰でしたっけ?」という言葉をかけてきてくれました。その一言で一気に5年の空白が埋まり、打ち解けることができたのです。
青木 それは大谷選手が白井さんを気遣っての言葉だったのでしょうか。
白井 そうだと思います。大谷選手は、自分の立場をわきまえたうえで、相手の立場を理解し、一緒に世界の頂点を取ろうと接してきてくれました。私だけでなく、チームメイトに対してもです。プレーで雄たけびをあげて仲間を鼓舞するのも、自分からチームを巻き込んで世界一という目的を果たすための行動です。これは急にできるものではなく、小さいころから世界一を目指してきた「原因」があったからこそできた「結果」です。
青木 そういう意味では、大谷選手が果たした役割は本当に大きかったのですね。決勝戦の円陣で発した「憧れてしまっては超えられないので。僕らは今日、超えるために、トップになるために来たので。今日だけは彼らへの憧れを捨てて、勝つことだけ考えていきましょう」という言葉は、自分の目的と役割を明確に理解しているからこそ、伝えられたメッセージだったのですね。WBCで世界一という素晴らしい功績を残されましたが、今後のスポーツ教育に求められるものは何だとお考えですか。
白井 選択理論に基づいた指導が必要だと思います。指導者にとって一番大事なのは、目の前の人がどうなりたいのかという願望を明確にし、全力で支援する態度です。そうすれば、選手に安心安全空間を担保することができます。選手はより主体的に行動するようになり、本番でも最高のパフォーマンスを発揮することができるのです。私も選択理論とアチーブメントテクノロジーに触れたときに、「これだ!」という確信を得ましたし、学び続けるなかでブレないものになり、自分の血となり肉となり、一点の曇りもないものとして、今は持つことができています。それは今回のWBC大会を経て、さらなる確信へと変わりました。
青木 白井さんの志を多くの人に触れていただくため、私たちも応援し続けます。改めてWBCでの優勝おめでとうございます。本日はありがとうございました。
・大谷選手の一言が5年の空白を一瞬で埋めてくれた
・幼いころから目指してきた「原因」がプレーのなかに「結果」を生む
・選択理論に基づいた指導がスポーツ教育に求められる
元北海道日本ハムファイターズ 内野守備走塁コーチ兼作戦担当
一般財団法人日本プロスピーカー協会顧問 認定ベーシックプロスピーカー
駒澤大学を卒業後、1983年ドラフト1位で日本ハム入団。1987年ベストナイン、ゴールデングラブ賞受賞、1991年リーグ打率3位、最高出塁率を記録。現役引退後、日本ハムの二軍総合コーチ、二軍監督を経て、2003年から一軍ヘッドコーチを務め、リーグ優勝2回、日本一1回を獲得。指導者として「可能性を開く鍵は意識の持ち方と行動力」をモットーに選手の育成に従事している。
アチーブメント株式会社 代表取締役会長 兼 社長
アチーブメントグループ CEO
北海道函館市生まれ。若くしてプロセールスの世界で腕を磨き、数々の賞を受賞。1987年のアチーブメント株式会社設立以来、46万名以上の人財育成と、5,000名を超える経営者教育に従事している。講師を務める『頂点への道』講座スタンダードコースは、28年間で毎月連続700回開催達成。40万部を超える『一生折れない自信のつくり方』シリーズを始め、累計65冊の著書を執筆。