環境の変化に順応して、経営戦略を策定し、新たな道を切り拓いていく。
言葉にすれば簡単なことのように聞こえるが、
一歩間違えればこれまでの努力を水の泡にしてしまう可能性もゼロではありません。
経営者として、何を判断基準に、何を重視して変化に対応すべきなのか。
アチーブメント代表青木がその本質を解説いたします。
チャンスはいつもピンチの顔をしてやってくる
2020年の年初からここまでの約1年半、多くの業界で、多くの企業が変革のときを過ごしてこられたと思います。我々の生活は一変し、社会の常識も、ニーズも、人々の考え方も変わってきました。その変化に応じてビジネスモデルも転換が求められてきました。何かを変えることは決して簡単ではなく、大きなエネルギーが必要です。しかし、それは、千載一遇のチャンスでもあると私は思います。
実際にこの間、弊社でもオンラインでの講座の開講や、リモートワークなどを創業以来初めて取り組みました。私としても、多くの社員としても、最初は違和感の連続であったのですが、結果として今では軌道に乗っており、健全なビジネスモデルとして機能するようになりました。アチーブメントの34年間の歴史においても、社史に刻まれる出来事でしたし、新卒から育ったマネジャーを中心にこの事業形態の転換を作り出してくれたことは、私としては未来への大きな見通しとなりました。コロナ禍は、単なるピンチではなく、ピンチの顔をしてやってきた、未来の発展を作り出す大きなチャンスだったのです。
経営の軸とは企業理念に他ならない
では、チャンスを掴むために、経営者としてどう物事を判断すべきか。その答えはシンプルです。自社は、誰のためになんのためになぜ存在しているのか。この答えが企業理念に他なりません。「わが社は選択理論を基にした、高品質の人材教育を通して、顧客の成果の創造に貢献し、全社員の物心両面の幸福の追求と、社会の平和と繁栄に寄与することを目的とします」、これが弊社の企業理念です。全ての判断軸はこの理念に則っているかどうか、です。実際に新型コロナウイルスの蔓延により、長らくセミナー開催ができない時期がありました。セミナービジネスをメイン商品としている私たちにとっては大きな打撃です。この時に私が立ち返ったのは、理念にある「顧客の成果の創造」でした。コンサルティングを提供する私たちの役割とは、顧客の問題解決をすることです。社会情勢が変わり、これまでのやり方ではうまくいかなくなったいま、困っているのは私たちだけではない。いまこそ、達成の技術を伝え、この逆境をみんなで力を合わせて乗り越えていくタイミングだ。そう社員にメッセージをしました。そこからさまざまな事業の転換が加速し、お客様への価値提供をオンラインという形で果たす体制が整ったのです。
「売り上げが下がっているから、どうにかしなければ」という発想ではありません。「今だからこそ、お客様に提供できる価値とは何か?」「お客様は何を求めているのだろうか?」という視点から生まれたアイデアなのです。常に理念に立ち返り、理念を果たす判断をすることが大切です。戦略・戦術・戦法はいくら変えても問題ありません。しかし理念とは、そう簡単に変わるものではありません。苦しいときほど、理念に立ち返りましょう。自社の果たすべき役割を見つめ、縁ある人に価値を提供し、貢献をし続ける限り、決して衰退することはありません。
目的を信じ、揺るぎない信念を持ち続けよ
経営者とは、その組織のなかで最も組織の存在理由を体現し、最も会社の未来を考えている存在であるはずです。企業理念を体現することの意味を理解し、今何をすべきかという答えを持っているはずです。その答えが、三方良しの理念に基づいているものであるとすれば、何も迷う必要はありません。縁ある人に対して、社会に対して、本気で真心を持って経営をしている限り、何も遠慮をする必要はありません。自分の考えを信じてください。
私も、これまで28年間続けてきた『頂点への道』講座 スタンダードコースを、2日間の開催から3日間の開催へと変更したとき、社員を含めて周囲からたくさんの反対意見をもらいました。しかし、それが最もお客様のためになると信じて貫き通してきました。結果、今のお客様の満足と、弊社の発展があります。このような事例は枚挙に暇がありません。経営者が気にすべきは、他人の目や評価などではありません。気にすべきは、その判断が三方良しであるかどうか、企業理念に則っているかどうかという本質です。本質を見続け、環境の変化からチャンスを掴み、発展を作り出していきましょう。
北海道函館市生まれ。若くしてプロセールスの世界で腕を磨き、トップセールス、トップマネジャーとして数々の賞を受賞。その後に能力開発トレーニング会社を経て、1987年にアチーブメント株式会社を設立。会社設立以来、43万名以上の人材育成、5,000名を超える中小企業経営者教育に従事。自ら講師を務める公開講座『頂点への道』講座スタンダードコースは28年間で700回毎月連続開催達成し、新規受講生3万6,574名が参加した、国内屈指の公開研修へと成長。また、累計61冊の著書を執筆する著者でもある。