創業からまもなく100年を迎える田島興産。
飛躍的な成長ではなく、地域密着で一歩ずつ堅実な成長を
遂げていく経営であったが、近年組織が飛躍的に活性化し、
過去最高業績を更新し続けているという。
その背景にあった経営陣の「思考の変化」について伺った。
3代目社長として1999年4月に代表取締役に就任。祖父・父から受け継いできた「誠実さ」をモットーに理念を再度明文化し、全社への浸透に力を入れている。過去にない勾配での成長を創り出している。明文化された理念でも「伝わっている」とは限らない
父から事業承継したのは20年以上前です。暮らしを豊かにすることを根幹に、地域に根ざし、発展する方針で経営をしてきました。
それは先代の働く姿、顧客第一主義の厳格さから学んできた価値観でした。社員にも伝えてきていて、伝わっていると思っていましたので、理念経営に取り組んでいる自負がありましたが、なかなか組織が伸び続けて行かないジレンマに葛藤した時期が長かったのです。
そこで、良いきっかけになると顧問税理士の方から紹介されて受講したのが、アチーブメント社の『頂点への道』講座でした。3日間で学ぶ成功の原理原則には、経営のエッセンスが多く、弊社が大切にしてきたことが言語化されているように感じました。
加えて、机上の空論ではなく経営を担う講師の実体験が体系化されたノウハウだったので、「ここで学び続ければよくなれる」と思ったのです。専務である妻と継続学習をするなかで導入を決めた、新卒採用へのチャレンジが弊社にとっては大きな転換点となったのです。
初年度は採用したもののすぐに退職され、正直うまくいきませんでした。
しかし、そのプロセスで、理念を具現化する理想の人材像を幹部と整理をしたことに何よりの価値がありました。
「社員を一番に考え、社員を豊かにしていきたい。それを果たすための手段として、誠実で堅実な経営を通して顧客に貢献していくことなんだ」と、当たり前と思っていた理念を改めて語りましたが、社員たちはその話を聞いて感動していたのです。
理念のほんとうの意味、その本質に初めて気づいてもらえたタイミングだったと思います。
理解してくれているとばかり思っていましたが、「伝えている」と「伝わっている」では天と地ほどの差がある。これを本当の意味で浸透させていき、魅力的な良い会社を作っていくと決心したのです。
限界を知ると感謝が生まれる
同時に深く感じたのは、働く社員と私を選んでともに会社を支えてきてくれた妻への深い感謝です。
おかげさまで長い間経営し続けられましたが、それは私一人の力とは到底思えません。
先代が盤石な経済基盤を築き上げ、社員がお客様に真剣に向き合い貢献する仕事を積み上げてくれたおかげです。舵取りはしてきましたが、社員がいなければ、私一人でできることなんてたかが知れています。
ともに苦労し、ときには涙を流し、たくさんの努力をしてくれた妻や社員がいてこその会社なのだと、強く強く思いました。
そして、そう考えるたびに「社長とは、代表とは、役割の一つに過ぎなくて、偉くもなんともない」と、思うのです。世の中の数多ある会社から、田島興産を選んでくれて、人生をかけて、時間という命を注ぎ込んで働いてくれていること、このこと自体に心からの感謝の気持ちを持っています。
それが、理念浸透に本格的に取り組んでからより一層強くなっていきました。
「誠実な動機」こそが求心力の源
何のために組織を発展させるのか？最後はやはりここに帰結するのではないかと思います。
弊社がこれまで100年の歴史を紡いで来た背景には、「地域密着で、地域に貢献する」という考えを大切にしてきたことがあると思います。
それを掲げる私自身が、本当に純度100％でそう思えているかどうか。ひたすら向き合いました。
少しでも私利私欲が混ざったときに、それが社員やお客様には伝わってしまいます。
毎日いろいろなトラブルが起きますし、思うようにうまく行かないことも多いです。
そんなときこそ、「どこまでも誠実な経営をしていきたい。それが社員やお客様への感謝を形にすることだ」と、原点に立ち返るようにしています。
おかげさまで、新卒採用も軌道に乗り、良い人材が集まってくるようになりました。
縁ある人を大切にし、豊かに導いていく、その先に必ず組織の繁栄がある。学んできたこの経営の原理原則をこれからも貫いていきたいと思います。
■所在地 〒840-0054佐賀市水ケ江6丁目4番11号
■事業内容 リフォーム・LPガス販売・相続など
■創業 1922年10月18日
■社員数 54名
■Webサイト https://tajimakosan.com/