子育て 社員教育 経営者の自己研鑽
株式会社よくする 代表取締役 鈴木 盛登
成功しなければならない理由がなによりの原動力となる
いかにして、社員のパフォーマンスを最大化していくのか。
経営者・管理職にとっての永遠のテーマですが、その本質とは成長に対して貪欲で、
主体性にあふれる人材を育てていくことに他なりません。
社員のやる気に火がつくポイントとはどこなのか。若手社員が数多く活躍し、
コロナ禍の5月~11月に、昨対比120%の成長を作り出した鈴木盛登氏がその秘訣を語ります。
発展の原点となったある社員の成長
一つの組織のトップに立ってから20年が経とうとしています。苦難や逆境がありました。今でこそ、社員たちが主体的に組織の成長を牽引してくれるようになりましたが、10年ほど前まではまるで違う姿でした。手塩にかけて育ててきたつもりの社員が一人また一人と退職することも日常茶飯事で、5年以上人が残らない組織でした。そんな状態から脱却した大きな要因が、今私の右腕として組織を引っ張ってくれている一人の幹部社員です。私が描いてきた組織が目指すものや、大切にしている価値観を代弁し、社員への理念浸透を始め、採用活動の最前線に立ってくれています。そんな彼が、ここまで本気で仕事と向き合ってくれるようになったのは、ある出来事がきっかけでした。
頑張る理由を誰もが必ず持っている
彼が入社して5年が経った頃です。ちょうど離職が続いてしまい、彼の先輩がほとんどいなくなったタイミングでした。突然リーダーの役職についた彼ですが、ある日私のもとに一本の連絡が来ました。「母の看病をしなくてはならないので、仕事を休ませてください」と言われたのです。細かく聞いていったところ、弟が障がいを持っていて、父親が仕事のリストラにあい、母親は心の病を患ってしまい入退院をくりかえしており、その看病に自分が行かなければいけないと。とっさに私がかけた言葉は、「それはあなたではなくて父親の役割ではないの? あなたが果たすべきは、今の仕事の役割を全うして部下を守っていくことではないの? あなたが成功して、家族の光になりなさい。そうしたら必ずみんな幸せになるから」でした。彼が母親のことを思っていることは痛いくらいに感じていましたが、このままでは彼のキャリアが潰れてしまうと思ったのです。母の面倒は父に任せて、自分自身がとことん成果を出して成功している姿を見せるのが、何よりの家族の希望になると信じてそのように伝えたのです。「人はいずれ歳をとる。本当に長い視点に立って面倒を見ていけるようになりたいのであれば、成功してお金を稼いで、両親と弟と全員を養えるだけの力をあなたがつけなさい」と。それが、彼が大きく変化したターニングポイントでした。
成功すれば周囲を幸せにできる
そんな彼の、そこからの成長は目覚ましいものでした。働く姿勢が変わり、部下への関わりが変わり、お客様の評価が変わり、担当する院の売上がどんどん伸びていきました。気がついたら、会社の中でトップの売上を出し続ける存在に成長したのです。結果として彼の先輩たちは皆辞めていってしまったのですが、それ以上に彼が組織を引っ張り、理念共感した仲間をたくさん採用してくれています。懸念していた彼の家族も、彼の活躍する姿に感化されたようで、弟は福祉施設での仕事を見つけ、父親も再就職を果たされました。心配していた母親も「私も頑張らなきゃ!」と、パートの仕事についているそうです。
これは一人の社員の物語ですが、誰しもに当てはまる話だと思います。成功を収めたときにどれだけの人を幸せにできるのか。自分にそれだけの力が内在しているということを本当の意味で理解できたときに、人は本来持っているパフォーマンスを発揮していくのだと私は思います。社員にとって、自分自身が成功するイメージをどこまで描かせてあげられるのか、それが上司の力量であり、育成力そのものではないでしょうか。強い言葉をかけて、刺激を与えようとするよりも、内側に眠る力を引き出し、本来の力を発揮させてあげられる場を作ることが大切だと信じています。
2002年に父から事業承継をし、現在は仙台市内に9つの店舗を展開する。施術のみならず、患者の生活習慣の改善や、スタッフによるカウンセリングを通した心のケアが高い評価を集めており、リピート率は90%を超える。また治療技術の高さから、JリーグやBリーグを始めとしたスポーツチームとの業務提携も実現。経営や人材育成に関する講演活動にも力を入れており、幅広い分野で活躍をしている。