アチーブメント株式会社 代表取締役社長 青木 仁志
アチーブメントグループ代表
私たちの前進を邪魔する心のブレーキ。その外し方は、自らの思考をコントロールすることにあります。何を考え、どう行動することで、「ふっ切る力」を高める思考が身につくのか。その真髄を、能力開発の観点から青木が解説いたします。
誰もが抱く葛藤は、決して悪いものではない
私自身もこれまでの人生で、たくさんの葛藤を経験してきました。
かつては、うまくそれらを処理することができずに苦しんできた時期もありました。
特に若い頃は、「誠実」な生き方がしたいと願っていましたが、約束が守れずに結果として不誠実な行動を取っていたのです。
仕事の進め方も優先順位の付け方もよく分からなかった20代前半、ちょうど独立してビジネスを始めた頃です。
「稼ぎたい」という一心で手当たり次第に仕事を受けては、気合でそれらをこなそうと頑張ろうとしていました。
しかし案の定、当時の私の能力には限界があり、期限までに終えられなかったことも、関係者に迷惑をかけたことも、そのしわ寄せでプライベートにまで影響が及んだこともたくさんありました。
まさに、自分が言ったことを守れない状態が続いたのです。それにはとても葛藤したことを覚えています。
しかしそれでも、良くなろうと行動し続けました。
常に持ち歩いていた手帳に、自分の理想像を書いては何度も何度も声に出して読み、自分を鼓舞し続けました。
そうして、諦めそうになる気持ちと必死に闘ってきたのです。私の人生の半分以上はそんな苦悩に占められていたと言っても過言ではありません。
皆さんは現在どんな葛藤をお持ちですか。
また、どのようにしてその葛藤と闘っているのでしょうか。
葛藤とは誰しもが抱く感情であり、葛藤が存在すること自体は決して悪いことではありません。
むしろ葛藤があるということは、逆境に対してめげずに向き合っている証拠です。
逆境へとチャレンジすることで、私たちは成長を手にし、強くなっていきます。
心のブレーキを外していく上で大切なのは、葛藤に焦点を当てるのではなく、葛藤に対する捉え方に焦点を当てることなのです。
葛藤を処理し、心のブレーキを外していく3つの方法をご紹介しましょう。
短期的な損得で物ごとを捉えない
問題が出現したとき、私たちはつい、「時間やお金を失うのではないか」や「自分の仕事が増えてしまうのではないか」といった、短期的な損失に意識が行きがちです。
そうすると、目の前の問題があたかも巨大な存在のように感じてしまいます。
しかし、一見すると損のようなことでも、長い目でみると、捉え方が変わることがあります。
「人に尽くすこと」が良い例としてあげられるでしょう。
例えば、感謝や賞賛を得られなくても、時間をかけて部下の支援をし続けること、朝早くオフィスに行って掃除や整理整頓をすることが挙げられます。
それは、短期的な損得で見たら、自分の時間や労力を費やすので、自分の目標だけを追う人からするとマイナスに思えるかもしれません。
しかし、長い目で見たときに他人からの信頼を集めることにつながっていくことも考えられるでしょう。
なぜなら、「自分から与える行動」を取り続ける人、言い換えれば他人の欲求を満たせる人に、私たちは好感を抱き、お返しをしようという気持ちが生まれるからです。
結果として「人の力を借りられる人格」を築き上げられるのです。
今葛藤をしている事があるとしたら、短期的な損得ではなく長い目で見直してみましょう。捉え方が変わるきっかけが見つかるかもしれません。
自分の求めるものを明確にする
そもそも私たちが抱える悩みの8割は、願望が不明確なために起こるといっても過言ではありません。願望が不明確だと、周囲の情報に流されて思考が分散します。
「チャレンジしたいが、恐れが生まれて動けない」という葛藤がいい例です。
それは、「チャレンジして何を得たいのか?」という願望が不明確なのです。
そうすると、チャレンジすることよりも、失敗に対する恐れのほうが気になってしまい、「安全に過ごすこと」にエネルギーが分散してしまうのです。
目標に焦点を合わせ、矢のようにブレることなく前に進み続けるには、強いモチベーションが必要です。
それを作り出すのが明確な願望なのです。
「自分は一体どうなっていきたいのか?」
「チャレンジをした先に何を得るのか?」
これらの質問に、明確な答えを出せたとき、きっと葛藤に打ち勝って前進することができるでしょう。
喜んでくれる他者の視点で物ごとを見る
第三者の視点に立つと言い換えられます。
喜んでくれる相手の姿をイメージして、「与える喜び」を原動力に変えていくということです。
つまり、自己中心的な生き方から脱して、利他的な生き方をしていくことです。
「自分のためには頑張れなくても、誰かのためになら頑張れる」というように、モチベーションの源が、利他的なものに置き換えられると、頑張る理由が強くなっていきます。
その結果、葛藤を乗り越えるエネルギーが強くなり、うまく処理をすることができるようになっていきます。
しかし利他的な生き方とは、理屈で分かってもすぐに実践できることではありません。
そこで育むべきは「報恩感謝の心」です。
それは、「自分は誰かに支えられていて、誰かのお陰で生きていられるのだ」という恩を噛みしめることです。
産んで育ててくれた両親がいること、迷惑を掛けても世話をし続けてくれる上司や恩人がいること、無償の支援をしてくれる仲間がいること。このどれをとっても、決してあたり前のことではありません。
自分がどれほど周りから「与えられている存在なのか」を健全に知ることで、恩返しすべき存在や頑張るべき理由が無数に見つかるはずです。
その相手の為になら頑張れると割り切れれば、きっと多くの葛藤は問題ではなくなっていくのではないでしょうか。
完璧を求めず、出来る最善を尽くす
葛藤をいかに処理するかということをお伝えしてきましたが、実際に私は今でも思うようにいかないことは少なからず存在します。
望む人生を生きられるようになったと感じられる今でも、完璧には程遠いのです。
しかし、不完全で多少はコントロールできないことがあったとしても、それで良いと思っています。
時には、健全に割り切ることも大切です。
私たちの心にブレーキを掛けている存在があるとすれば、それは私たちの思考そのものです。
目には見えませんが、私たちが生きる人生は、私たちの思考の投影と言っても良いかもしれません。
私たちの思考は、決して誰か他人に支配されるものではなく、自分によってのみコントロールが可能です。
コントロールするために成すべきことを実践していくことで、確実に「ふっ切る力」は高まっていきます。
つまり思考の質を上げることで、人生の質そのものが上がっていくのです。
自らの人生の舵取りを自らの手で行い、望む通りの人生を実現していきましょう。
そして、成長の幅が広がった分だけ、貢献の幅も広がります。
指導的立場にいらっしゃる方は、メンバーが持つ葛藤の処理を手伝いながら、組織として前進する広い視野を持って取り組むと、更に大きな結果に結びつきます。
あなたのチャレンジが周囲の力になっていきます。
まとめ
その1 損得ではなく、長い目で物事を捉える!
一見損しているようで葛藤することでも、長期的に見れば納得ができる。
その2 求めるものを明確化して、そこに力を注ぐ!
得たいものが絞られれば、周囲の情報や恐れなどに左右されずに集中できる。
その3 喜んでくれる他者の視点で物事を見る!
周囲からの恩を知り、自分が頑張ることでどれだけの人が喜ぶのかを想像すると、葛藤を乗り越える力が湧いてくる。