生産性向上の鍵は「効率」ではなく「効果性」にあり

アチーブメント株式会社 代表取締役会長 兼 社長 青木仁志 

少ない時間で高いパフォーマンスを上げる人に共通するのは、目先の効率を追っているわけではないということ。では、真に生産性を高めるために、何を基準にしているのか。能力開発のスペシャリスト青木仁志が、生産性と成果を最大化する秘訣を語る。

〝効率化〟が叫ばれる時代

ここ最近、企業の働き方改革の重要性とともに、生産性を高めるための手法があちこちで叫ばれていますね。
生産性とは、一般的に「一定の資源からどれだけ多くの付加価値を生み出すか・一定の付加価値をどれだけ少ない資源から生みだせるか」という指標だと言われていますので、企業の例でわかりやすくいえば、「どうしたら残業時間を削減できるか」「効果的に働けるか」ということになるでしょう。

確かにこうした観点は非常に重要ですし、アチーブメントでも、社員一人ひとりの欲求に合わせた、多様な働き方に向けて、残業時間削減をはじめとした社内改革を行っています。

ただ、生産性といえば、多くの人が「効率」を考えてしまいますが、私はこれまでの経営で、「効率を高める」という観点で判断してきたことはありません。

どう判断してきたかといえば、「それが本当に顧客・社員の役に立つか」という基準で判断してきました。
すなわち、「〝効率的か〟ではなく〝効果的か〟」で判断してきたといえるでしょう。

生産性とは、効率の先にあるのではなく、効果性を追求した結果として、向上するものだと思っています。
再受講制度の土台にあった判断基準 「効果的か」という判断において、特に優先すべきは、商品・サービスのクオリティと顧客満足度です。

私は、アチーブメントのビジネススタイルを全て「顧客満足からの逆算」によって行っています。
例えば、『3年で6回の再受講』と『再受講割引制度』。同業他社からは、「そんなやり方は非効率だ」と言われたものです。
確かに、私が「セミナー」を売っているのであれば非効率かもしれません。
しかし、私が売っているのは「達成の技術」。
そして顧客が何を求めているかといえば、目標達成の技術の体得です。

だからこそ、技術体得を徹底フォローする再受講制度が「最も効果的である」と判断しました。
もし私が効率で判断していたら、再受講の割り引き制度どころか、再受講の制度自体を設けないかもしれません。
したがって、あくまで顧客の願望・ニーズから逆算して、本当に必要だ、効果的だと思うことを実行したに過ぎないのです。

結果、「アチーブメントは、顧客の実行力不全を解決しようと本気で考えている」と口コミが広がり、数多くのご紹介をいただけるようになりました。
まさに私のセールスの秘訣である、「満足したお客様が最大の協力者になる」という善循環システムによるビジネススタイルが確立しました。

社内の生産性を高める選択理論 また、「選択理論」、そしてそれをもとにしたリードマネジメントは、人を大切にする経営の実現という点で効果的なだけではなく、結果的に生産性向上にも繋がります。

外的コントロールを使えば、確かに短期的には成果が上がるかもしれません。
しかし、それが長期的には人間関係を破壊することになり、人材定着率は下がります。
売上も低下し、社内にも疲弊感が溢れることで、結果的に生産性は下がるのです。

一方、選択理論を土台としたリードマネジメントを導入しながら理念経営を行うことで、経営者自身が社員を勝たせようとします。
時間はかかっても、経営者が本気で行動を続ける限り、必ず社員はその経営者の期待に応えようとし、相互信頼・チームビルディングが生まれていきます。
結果的にそれが高いパフォーマンスに繋がっていくのです。

損得ばかり考えている経営者は、絶対にこの発想になりません。
生産性向上を妨げるのは「何事でも、他の人々からしてほしいと望む通りのことを、他の人々にもそのようにせよ」という黄金律に即していない目先の損得を追うことです。

生産性の向上とは、「理念からの判断」の先にあります。
やはり、大切なのは理念・目的なのです。
「生産性向上の秘訣は、理念経営・選択理論にあり」といっても過言ではないと思います。

時代がますます効率化に進む中で必要なもの

ぜひここで強調したいのが、これからの時代背景を踏まえても「顧客満足からの逆算」はますます求められるようになるということです。

実は、約30年後の2045年には、今人間が行っている9割の仕事が機械に取って代わる「シンギュラリティの時代」が来ると言われています。
その時代、人々は政府からの援助で食べていけるため、賃金を稼ぐために労働する必要がないと未来学者は予測しています。
「信じられない」と言う方もいらっしゃるかもしれませんが、現在、皆さんもスマートフォンを初めとしたAI・コンピューターの恩恵を受けているのではないでしょうか。

今、世界中の指導者がその時代を迎える上で、危機感を抱いています。
なぜならこれまでの人類は、食べていくために労働をしていた方がほとんどでした。
しかし食べていけるということは労働する必要がなくなります。
それによって逆に生きる意味を見失ってしまうのではないかと言われているのです。

では、そんな時代にどう生きるべきかといえば、それは賃金を稼ぐためではなく、また、楽に稼ぐといった効率主義でもなく、相手に喜んでもらうためなのです。
すなわち、いかに「相手の満足から逆算して、相手の喜びのために行動できるか」という利他の精神、黄金律からの行動が、自らの生きがいをさらに創っていく時代に突入します。

この点について、私は元文部科学大臣の下村博文氏と深く、何度も話し合いました。それがこれから出版される共著に詳しく書かれています。ぜひ楽しみにしていてください。
こうした時代背景を含め、結果的に生産性向上に繋がる「顧客満足からの逆算」は、特に指導者の方にはぜひ身に付けていただきたい観点です。