混迷の時代に求められる「感化するリーダーシップ」

逆境のなかで、いかに組織を牽引すればよいのか。多くの経営者が悩むこのテーマに対して、青木は、逆境に対する社員の捉え方が肯定的に変わり、強力な推進力を組織に与える、「感化するリーダーシップ」が必要だと言います。その本質とは何か、青木が解説します。

青木 仁志(あおき さとし)
北海道函館市生まれ。若くしてプロセールスの世界で腕を磨き、トップセールス、トップマネージャーとして数々の賞を受賞。その後に能力開発トレーニング会社を経て、1987年にアチーブメント株式会社を設立。会社設立以来、43万人以上人財育成、5000名を超える中小企業経営者教育に従事。自ら講師を務める公開講座『頂点への道』講座スタンダードコースは28年間で700回毎月連続開催達成、国内屈指の公開研修へと成長。現在では、現在では、グループ4社となるアチーブメントグループ最高経営責任者・CEOとして経営を担うとともに、 一般財団法人・社団法人など3つの関連団体を運営している。

盤石な礎を築き上げる最も大切な能力

世界経済が近年稀に見る危機に見舞われ、各業界の指導者の方々は非常に苦労をされていることと思います。アチーブメントも例外ではなく、講座の開催自粛を決定し、大きな打撃を受けました。しかし、この状況をどう捉えるかが重要だと私は考えます。「問題が問題ではない。問題に対する捉え方が問題である」。と講座でお伝えしてきましたが、捉え方を変えればこれはチャンスでもあるのです。

実際に弊社は、活動の幅が制限されましたが、組織としてはむしろ活性化したと感じています。この逆境を乗り越えようと、全社員が一致団結して、新たなサービスの開発や、コスト面での見直しができたのです。こうして逆境のなかでも一歩踏み出せたのは、潤沢なキャッシュがあったからです。事業活動をするための健全な体力とも言えます。私は、どんなことがあっても絶対に会社を潰さないために、2年間売上がなくても社員に給料を払い続けられるだけの内部留保を作り上げてきました。またコロナの兆候が見え始めた1月ごろに、銀行に打診し合計で10億円の当座貸越枠を確保してもらいました。まず大前提として、この礎があったからこそ、事後対応の資金繰りに力を削がれず、攻めの一手を講じられたのです。

その攻めの一手を組織で繰り出すうえで最も重要なのが、組織が同じゴールに向かって動機づけされ、一致団結していることです。これを創り出すものこそ、経営者の肯定的影響力であり、「感化するリーダーシップ」だと私は思います。社員を感化できるからこそ、経営者が下した決断を正解にしようと動いてくれるのです。もし経営者がこの力に長けておらず、組織を同じゴールに向かわせられなかったとしたら、経営難に陥ったときに、多くの社員が離れ、組織が崩壊してしまうことでしょう。それほど、メッセージによって「社員を感化するリーダーシップ」は大切なのです。

「感化」の前提は、「信頼」を集める5つの資質

「感化する力」をいかに磨けばよいのか。そのためには、大前提として経営者自身が社員から尊敬を集めている人物かどうかが問われます。言うまでもなく、尊敬していない人から何を言われても、人はなかなか聞き入れられません。

では尊敬される経営者とはどんな存在なのか。
少し古いですが、2007年に経済同友会が発表した『経営者のあるべき姿とは』という文献の、現代の経営者に求められる資質という説明が分かりやすいのでご紹介をしたいと思います。

1つ目に、「高い倫理観と価値観」です。世の中にとって何が正しいのか。それを命に変えてでも追求していく強いこだわりのことです。
2つ目に、「優れた判断力」。理念から一貫して、的確にタイムリーに物事を判断する力です。
3つ目に、「勇気ある決断力」。決断とは、選んだ道以外を断ち切ることです。決めたことは、責任と覚悟を持って最後までやり遂げる力です。
4つ目に、「構想力・先見性・感性」。これは経験とともに培われていきます。多くの情報を駆使して、勝つシナリオを描く力です。
5つ目は、「適応力」です。いま試されているのはこの力だと思います。状況を的確に把握し、社会のニーズに応じて、繊細かつ大胆に変化・適応していく力です。
一般的に「資質」とは先天的なものですが、これらは後天的に強化できる「能力」と捉えてもよいと思います。

目的実現への純粋な動機が社員に与える影響力の源

これらの能力を高めるうえで、最も重要なのは、「この組織は、誰のために、何のために、なぜ存在するのか」という、事業目的を持っているかどうかです。能力とは、「物事を成し遂げる力」と定義できますが、何かを成し遂げようとするうえで、普遍かつ最大のモチベーションとなるのが、「目的」です。優秀な社員ほど、世の中の役に立てる価値のある仕事がしたいと思っています。
だからこそ、事業目的が経営者の利己的な自己実現ではなく、社員・顧客・社会と、貢献の幅が広ければ広いほど、事業活動そのものの魅力が高まり、求心力が強くなります。

そんな組織を創るには、まずは経営者が、明確な目的から一貫した判断と行動をすること。そして、社員にその意義と価値を伝えることが重要です。目的実現への純粋な動機が、肯定的影響力の原点であり、「感化するリーダーシップ」の源なのです。迷ったとき、苦しいときは、目的に立ち返ってください。どんなに困難な状況にいたとしても、打破して前に向かっていく力が湧いてきます。
そして、全社員が事業目的の実現に内発的に動機づけられている状態を作り出していきましょう。それが、混迷の時代にでも繁栄し続けられる企業の条件です。

指導者こそ学び続けてほしい

私は、アチーブメントを創業した32年前から、「目的」を持って生きることの重要性を伝え続けてきました。ライフワークである『頂点への道』講座はまさに、目的から一貫した行動ができる人と組織を輩出するために開催してきました。その先にお客様の成果の創造があり、社会の平和と繁栄があります。そして結果的に、弊社の繁栄、すなわち全社員の物心両面の幸福がもたらされるのです。

この事業目的の実現のために、最もお客様の成長に貢献できる研修を追求してきました。いまこそ、日本の指導者の皆様の力になりたいと心から思っています。目的に生きる指導者が増えれば、社会は必ず良くなります。だからこそ、指導者の方こそ、アチーブメントの学びに触れ、学び続けていただきたいと切に願っています。

この夏、私が生きてきた能力開発の人生の集大成と言えるプログラムを発表します。自粛が求められ、研修会場に足を運びづらかったとしても、指導者の皆さんに目的教育をお届けし続けていくためです。そして、指導者の方向けのオンライン講座も、これまで以上に開催を増やしていきます。日本の未来を背負う指導者の皆さん、いまこそ立ち上がるときです。ぜひ学び続け、ともにこの逆境を成功の機会に変えていきましょう。