[Case3]成功の出発点 思考を現実化させる源にあった言葉

現在青木は能力開発のスペシャリスト、経営者として従業員数251名、売上56億円、経常利益18億円の組織をつくりあげ、東京商工会議所や教育立国推進協議会など、経済団体や社会貢献団体でも役割を担っている。しかしそのキャリアは履歴書もいらない溶接工見習いからのスタート。青木がどのような言葉で道を切りひらき、幾多の困難を乗り越えてきたのかに迫った。

不条理・不合理な幼少期から青年期

私の幼少期から青年期は、「青春」からは程遠い日々でした。3歳の時に両親が離婚し、父親は再婚。父の会社の倒産により、借金取りが家に押しかける毎日。パン屋から食パンの耳を分けてもらうほど貧乏で、家計の足しになればと小学生のころ新聞配達をはじめました。函館の凍てつくような寒い冬でも目の荒い軍手しかつけられず、朝夕と新聞を配達する毎日。「なぜ自分ばかりこんな目に合うのか」。周囲を見て悲しい気持ち、悔しい気持ち、葛藤が心を支配していました。
そんな日々に限界を感じ、17歳の時に高校を中退、函館から上京。履歴書もいらない溶接工見習いからスタートしたのです。もし当時の私を映像として見ることができたら、そうなっても仕方がないと言う方は少なくはないでしょう。自分には価値があるというような考え方も、人生の目的・目標も全くありませんでした。偶然の法則に身を任せてさまざまな職を経験し、21歳の時に独立。同世代が新社会人としてデビューするなか、私は資金繰りに行き詰まり、会社を整理。手にしたのは3000万円の負債。学歴もなく多額の借金を抱えた当時の私は、コンプレックスの塊でした。

一冊の本との出会い

青木が実際に手にした
『成功哲学』(産能大学出版部)

そのころに出会ったのがナポレオン・ヒルの『成功哲学』でした。思考は現実化する、人間は自分がなりたい人間になれる、何が何でも得たいと思うものを誰でも手にすることができる。何者でもない人が「思考の力」で幾多の失敗を重ねてもチャレンジをし続け、成功し続けるまで諦めない。そんなエピソードを読むにつれ、自分にも成功のチャンスがある。「もっとよくなりたい、もっともっとよくなりたい」。内なる叫びが湧いてきました。
チャンスが訪れたのは、プロのセールスの世界に入ったとき。学歴・性別・国籍など一切関係のない、自由競争のなかで、何が何でも成し遂げたい明確な燃えるような願望を手にしたのです。「トップセールスになって成功する」。ノートや手帳、名刺ケースなどありとあらゆるところに自分に暗示をかける言葉で身の回りを固め、ベッドに寝ころんだときにも見えるようにと天井にも貼りました。そして毎日「青木仁志、お前は必ずできる。お前は成功者だ。青木仁志、お前は子どものころ、人が経験しないようなさまざまな経験を積み上げてきた。だからお前は必ず幸せになる。お前には神様がついている。幸せになる権利を有している。お前は必ず幸せになる。お前は必ず成功者になる。成功者としての人生を全うする」と声に出してアファメーションをし、一日の始まりと終わりに6回ずつ鏡に向かって「お前はセールスの天才だ」と声高らかに言い続けました。

当時のノートには自分を鼓舞する言葉や
自分を律する言葉で埋め尽くされていた

「自分には無理かもしれない」と時折鏡に現れる弱い自分と闘いながら、「誠実たれ」「ちっぽけな自分から脱出!」「ライバルは自分だ!」とノートに自分を鼓舞する言葉を綴りながら、トップセールスになった自分をイメージし続けました。
次第にその暗示から自らへの捉え方が変わり、目に見える成果に表れ自信がつき、今までは踏み入れなかったアッパーマーケットを開拓。トップセールスへと駆け上がり、最年少でマネジャーに抜擢されるまでになったのです。

自己を高める言葉

学歴もない、お金もない、家柄もない、自信もない私は自己開発するしかありませんでした。何千冊もの本を読み、学びたい人のセミナーには海外でも足を運び、何千万円も能力開発に自己投資をし能力を高めてきました。その土台にあったものは他ならぬ「もっとよくなりたい、もっともっとよくなりたい」という言葉です。自己開発をしていくなかで「トップセールスになる」と自分を奮い立たせ、トップセールス、トップマネジャーとなり、自身の生い立ちから「不満足な人間関係に起因するあらゆる不幸をなくしたい」とアチーブメントを設立。現在では「教育の力で世界を変える」というコーポレートスローガンを掲げ、世界最高峰の人材教育コンサルティング会社を目指し、多くの人々の力になりたいと今もなお能力開発を続けています。
サミュエル・スマイルズの『自助論』の一節「天は自ら助くるものを助く」のとおり、人生は自分の手でしか切りひらけず、内なる言葉が出発点です。そして、人は自ら変化することによって道はひらけるのです。ぜひ再受講やプログラムでの学習を通して、自己を高め、道を切りひらく言葉に磨きをかけてください。

「もっとよくなりたい、
もっともっとよくなりたい」

SATOSHI AOKI
北海道函館市生まれ。若くしてプロセールスの世界で腕を磨き、トップセールス、トップマネジャーとして数々の賞を受賞。1987年にアチーブメント株式会社を設立以来、延べ49万名以上の人財育成と、8,000名を超える中小企業経営者教育に従事。自ら講師を務めた公開講座『頂点への道』講座スタンダードコースは28年間で毎月連続700回開催達成。2023年1月より東京商工会議所における教育・人材育成委員会の副委員長、中小企業委員会の委員、イノベーション・スタートアップ委員会の委員を務め、同年10月よりSBC東京医療大学(旧了德寺大学)教養部客員教授、ハリウッド大学院大学ビューティービジネス研究科 客員教授、12月より事業創造大学院大学 客員教授としても活動。著書は、40万部のベストセラーとなった「一生折れない自信のつくり方」シリーズ、『経営者は人生理念づくりからはじめなさい』など累計67冊。