ここまで、各業界で圧倒的な成果をつくり出した4名が、「YES」を引き出すうえで大切にされていることをみてきました。ここからは、アチーブメント株式会社 代表取締役会長 兼 社長の青木仁志が、選ばれ続ける人に共通する「YES」を引き出すポイントを解説します。
私は20代でセールスの世界で身を起こし、トップセールス・トップセールスマネジャーを経て32歳でアチーブメント株式会社を創業。お陰様で前期も過去最高業績を達成しました。
しかし私は最初から目の前の人から「YES」をいただけたわけではありません。17歳で北海道から単身上京。鉄工所の工員を経てセールスの世界に入ったころの私は、学歴も人脈も、お金もありませんでした。
自らのキャリアと今回の4名の事例を見て思うことは、「YES」を引き出し選ばれ続ける人には共通点があるということ。そしてそれは、誰でも身につけることができるということです。ここからは「YES」を引き出す5つのポイントをお伝えします。
[POINT1] お客様の問題解決のパートナーに徹する
まず、私が大切にしてきたこと。それは、誠実であること。そして「どうすればお客様に喜んでいただけるか?」を徹底的に考えることです。
昔のセールスの世界では、プレゼンテーションやクロージングに重きを置き、いかに「YES」をもぎ取るかが重視されていました。今でも、行き過ぎた営利至上主義の企業においては、そういった考えが見受けられることもゼロではないかもしれません。
しかしお客様から「YES」をいただく行為とは、うまいことを言って無理やり物を買わせることではありません。むしろセールスとは、お客様の抱えている問題を、商品・サービスをとおして解決する、かけがえのない仕事です。ですから選ばれ続ける人は皆、お客様の問題解決をするパートナーとして顧客に寄り添い、「どうすれば、お客様に喜ばれるのか?」を徹底的に考えているのです。
[POINT2] お客様を主語にセルフカウンセリングをする
このときにお勧めなのは、お客様を主語にセルフカウンセリングをし、お客様は何を求めているのか、何を解決したいと思っているのかに思いを馳せることです。
セールスとは、お客様の利益を、自らの人柄をとおして売る行為です。
私自身、どうすればお客様にお喜びいただけるかを考え、誠実に関わり続けたからこそ、「青木という人間は信頼できる」と、自分よりも力のある方から応援していただいたり、ご紹介いただいたりすることができたのだと思います。
セルフカウンセリングをする
お客様にとって一番大切なものは何か?
お客様が本当に求めているものは?
・その為に「今」何をしているのか?
・その行動はお客様の求めているものを
手に入れるのに効果的か?
もっと良い方法を考え出し、実行してみよう
[POINT3] 卓越した専門知識をもつ
そして、お客様の求めているものを叶えるために、最もよい商品・サービスを紹介するには、「卓越した専門知識」をもつことが欠かせません。よく、控えめでどちらかというと訥弁ではあるものの、確固たる専門知識をもとにお客様に寄り添い、数多くの「YES」を積み重ねているエンジニア出身の方をお見かけします。卓越した専門知識は「YES」手にするうえで強固な武器となるのです。
私も若いころは、自宅にいるときや移動中は常に読書をし、1日1冊は読破。前日に仕入れた知識は、次の日のアポイントで即活用する気概でした。そして今でも最新の情報に目を配らせています。
毎日、どのくらい知識を磨く時間をとっているか。今、自分の知識は業界で何番目か。健全に自己評価をし、日々プロとして専門分野の研鑽に励むことです。
[POINT4] 利点と特質を整理して伝える
さらに、自社の商品・サービスの価値を伝えるには、利点と特質を整理し、相手の求めにあわせて伝えることが欠かせません。特質とは「その商品が持っている特長・性能や機能」を指し、利点とは「お客様が最終的に手にする満足感やメリット」です。
利点と特質についてお伝えするときに、よく話すエピソードがあります。
あるとき、契約をもらえず困っているOA機器のセールスマンから相談を受けました。その方に、「あなたは何を売っているのですか?」と聞くと「コピー機です」と答えました。さらに重ねて「本当は何を売っているのですか?」と聞くと、少し怒ったように「コピー機です」と答えられました。
私はその方に「あなたは、本当に自分が売っているものを知らない」と伝えました。なぜなら、お客様はコピー機を買いたいわけではありません。たとえば私であれば、「生産性の向上」がコピー機の利点と考え「貴社の生産性を120%高めるためのアイディアをお持ちしました。ぜひ生産性向上のレポートをもとに、ご説明させてください」とお伝えするでしょう、と。
お客様にとってのメリット、利点は何か。これを言語化し、相手の求めに合わせて伝えてください。
[POINT5] 業界のトップから学び、徹底的に行動する
そして最後はうまくいっている人の考え方・知識・技術を研究し、徹底的に真似ること。実行することです。
私はトップセールスの基準を学ぶべく、書籍はもちろん、何度もアメリカに行き、圧倒的な成果をつくりだした人と交流。学んだことはノートにまとめ、隙間時間を見つけてはノートを見返し「あのトップセールスの〇〇さんだとしたらどうするか?」を考え続けてました。さらに尊敬するセールスマネジャーのトークを録音し、夜寝る前に聞いていたこともあります。傍から見ると気が狂っていると思われるかもしれないほど、徹底して業界のトップから学び、自分のものにしてきました。そして朝は、誰よりも早く出社し、行動をし続けた結果、お陰様で多くの方々から「YES」をいただけるようになったのです。
さらにセールスマネジャーや経営者となってからは、選ばれる組織をつくるために、選ばれ続ける人の考え方・知識・技術を言語化し、体系立ててトレーニングをしてきました。当社でも創業当初から営業マニュアルをつくり込み、徹底的にトレーニングした結果、レコードをぬりかえる成績優秀者を輩出し続けてきました。
[最後に] 全てのビジネスパーソンはセールスパーソンである
ここまで、セールスという切り口で「YES」を引き出すポイントをお伝えしましたが、採用や育成、企画の提案、取引先との交渉など、ビジネスでは様々な場面で目の前の人から「YES」を引き出すことが必要なシーンがあります。ですからビジネスにおいて、私は全ての人は皆、セールスパーソンであるとも考えています。
そして「YES」を引き出す技術は、何も特別なものではありません。当たり前のことを当たり前に、特別に熱心に、しかも徹底的に取り組んだ先に、誰でも身につけることができます。ぜひ、5つのポイントを参考にしていただき、「YES」を引き出す技術を磨いてください。